【空家管理を簡単に受託してはいけない!】警視庁や税関も目を光らせる、後を絶たない不正利用について

不動産業者は所有者から空家の販売や賃貸の斡旋を依頼されます。

その際にはあまり深く考えず預り証を発行して「鍵」をあずかり、販売や斡旋を行うのが一般的です。

鍵をあずかる行為自体は、あまりにも一般的なのであまり深く考えることはないかも知れません。

ですが、建物内部の点検などをどうするかなども含めた業務を受託して「鍵」をあずかれば管理責任が生じます。

深く考えず、簡単にあずかってしまうのは得策ではありません。

管理責任はそれほど甘く考えて良いものではないからです。

建物点検業務などを特別依頼として受託する以外は、原則として空家の鍵をあずからないのが得策です。

これは万が一の場合、民法717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)の適用を負うことがないようにするためです。

とくに最近は、空家が犯罪に利用されるケースが多い。

令和5年1月6日には、警視庁刑事局組織犯罪対策部から国土交通省不動産・建設経済局の不動産業務課長あてに「特殊詐欺、不正薬物の密輸等に悪用される空家対策の啓発資料の配布依頼」が行われました。

管理を委託され鍵を預かっている空家が、このような犯罪行為に利用されれば、その責任もまた少なからず不動産業者に及ぶことでしょう。

ですが、所有者が遠方に居住しており鍵を預からなければ販売業務に支障をきたすことは多いものです。

そこで今回は、鍵を預かる場合にはその責任範囲を明確にしておく必要性とあわせ、最近、後を絶たず増加傾向にあるとされる特殊詐欺や不正薬物受け取りに、どのように空家が利用されているかについて解説したいと思います。

占有していないことを明確にする

まず「善管注意義務」「自己の財産におけるのと同一の注意義務」の違いについて解説しておきましょう。

「どちらも同じ意味では?」と思われた方は特に注意が必要です。

善良なる管理者の注意義務、所謂「善管注意義務」は取引上、一般的・客観的に要求される程度の注意義務とされています。これは民法第400条に由来しています。

具体的には「建物を含む特定物の引き渡しの義務を負うものは、その引き渡しが完了するまでその特定物を善良なる管理者の注意義務をもって保存しなければならない」との定めです。

善管注意義務は、それを満たしている限り特定物が破損しても売主はその責任を負わなくてもよいとされるほど厳格な管理が求められるのです。鍵をあずかって時折、物件を見回る程度で満たせるものではありません。

過失の程度によらずその責任を負う可能性があります。

これよりも軽い注意義務としては、無報酬で保管を引き受けた者(受寄者)にたいし、「自己の財産における同一の注意をなす義務(民法第659条)」や、親権者が子の財産を管理する場合における「自己のためにすると同一の注意をなす義務(民法第827条)」でしょうか。

これらについては重過失が存在する場合のみ損害賠償責任を負うとされていますから、通常、鍵を預かった場合には、「自己の財産における同一の注意をなす義務(民法第659条)」が求められると考えられます。

ですが考えてみてください。

自身が生活している訳でもない空家を、自己の財産と同一の注意をもって管理できるでしょうか?

おそらく難しいでしょう。

そこで鍵をあずかる際には、預り証に鍵の使用は「物件調査や内覧の立会」のみに限定することを記載し、かさねて管理責任は負わない旨を記載しておくことです。

管理責任を含め鍵を預かるのと、内覧業務などの利便性を目的として預かるのとは、その責任について大きな違いがあるからです。

話の流れから、致し方なく管理も含め預かることになった場合には、管理以外の目的に使用しないことを明確にしておくことです。

解説するまでもないことですが、保管方法も含め鍵の管理は厳重に行い、持ち出し記録などの履歴を残すことが必要です。

また同業者や外注業者などにたいし一時的に鍵を預けた場合には、それにより何らかのトラブルが発生した場合には管理事業者にその「責」が帰属することになります。

可能であれば貸出ではなく立会を、それが無理な場合には鍵の返却後、確認に出向く慎重さが必要です。

後を絶たない空家の不正利用

2021年6月、内覧中の女性に猥褻な行為をしたとして、某大手不動産会社の営業マンが「強制わいせつ罪」で逮捕されたのは記憶に新しいところですが、その後、件の会社は「内覧については当社社員の入室を控える」と発表をしていました。

問題を生じさせた社員を雇用していた会社としては、このような体制改善も致し方がないのでしょうが、これでは営業マンが同行する必要性がありません。

設備や近隣環境、部屋の状態や管理体制など顧客が内覧中にリアルタイムで質問したいことが聞けないのですから、契約実績にも影響を及ぼすでしょう。

もっとも、内覧中の顧客に女性の不動産営業マンが刺されてバッグを奪われた事件が2020年4月に発生していますから、一方的に業者側・顧客側の原因であると断罪することはできません。

そのような事件の影響ばかりが理由ではないでしょうが、最近では「無人内覧システム」を導入している会社が微増しています。

物件の鍵がスマホ対応のオートロックである必要があることから、普及には時間が必要かもしれませんが、今後、成長が期待されるシステムです。

ただし、そのようなシステムを導入した場合に懸念されるのが、物件にたいする毀損や汚損についての危険性です。

現在のところ、無人内覧システムを利用するには採用している不動産会社への登録が必要とされていますから、あからさまな毀損行為などは少ないものの、前述したように万が一のトラブルが生じた場合の責任は管理事業者にあります。

媒介物件の場合、内覧者によるそのような行為について、どこまで責任を負うのかといった問題もありますから、自社の所有物件以外での導入は難しいところもあるでしょう。

違法薬物や詐取金の受け取りに空家が利用されている

空家が不正薬物の送付先や、「オレオレ詐欺」に代表される特殊詐欺の詐取金受け取りに利用されている例が後を絶たないことから、冒頭で解説したように財務省管轄の税関や国土交通省・警察庁から不動産業者にたいして注意喚起や協力依頼が行われています。

空き家,不正薬物,受取り

協力要請や注意喚起は2015年頃から行われていましたが、減少には至らず2023年2月にも、国土交通省から不動産保証協会などに向け、さらなる注意を促すための啓発資料の配布依頼が発せられました。

空き家,不正薬物,送付先

実際に利用された不正薬物受取手口の例としては、輸入手続きの際、空家の住所を利用するという手口です。

具体的には空家に架空の表札を貼り付け、居住していないことから投函された不在連絡票を抜き取り、郵便局などに出向き戻された荷物を受け取る方法です。

知らぬ間に所有物件が犯罪に利用され、かつ捜査関係者からは痛くもない腹を探られる。

管理に問題がなかったかを糾弾されることもあるでしょう。

空き家,悪用

当然、物件の鍵をあずかり販売活動などを行っていた私達、不動産業者にも捜査の手が入り管理責任が問われることがあるかも知れません。

確認されている手口としては、防犯カメラの位置や人通り、近所の居住形態などをあらかじめ下見して目星をつけ、キーボックの設置もあわせて確認します。

その後、顧客を装い内見を希望して営業マンが打ち込む暗証番号を覗き見る。

中には廃業した不動産業者の名を騙り暗証番号を聞き出すケースも確認されています。

解除番号が知られてしまえば不正利用も容易ですから、漏洩には注意が必要です。

利便性を重視して、利用しているキーボックスの暗証番号を全て同じにするのは避けた方が良いでしょう。

手口は年を追うごとに巧妙になっていきますから私達はそれに備えなければなりません。

電話などで業者名を名乗られればつい信用してしまいがちですが、空家が犯罪行為に利用されているという実情を理解し、暗証番号を伝達する、もしくは鍵を貸し出す際には、担当者の身分証明を確認してからでなければ応じないなどの対策が必要です。

このような事態を防ぐには巡回の間隔を短くするなどの対策も有効ですが、玄関に「配送厳禁シール」などを貼り付けるのも有効でしょう。

配送厳禁シール

配送厳禁シールについては、都道府県警察本部でステッカーを作成し無料配布している地域もあるほか、デザインポップを一般公開しているところもあります。

ホームページにアクセスして一度、調べてみると良いでしょう。

まとめ

今回は賃貸の斡旋や販売依頼を受けた場合に鍵を預かった場合、管理の責任範囲について明確にしておかなけれ意図せずトラブルに巻き込まれる可能性について解説すると同時に、空家が犯罪に利用されるケースが増加傾向にあるという実態について紹介しました。

空家の不正利用についての注意喚起は、2015年頃からだと記憶しています。

それから8年を経過しても尚、新たに注意が促されているということは、空家が不正に利用されているという実態について、私達の認知がまだ及んでいないからなのでしょう。

さらに、犯罪の手口は年を追うごとに巧妙になっていきますから、そのような情報については広く入手を心かげ、巻き込まれないため備えておく必要があると言えるでしょう。

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