【不動産業者の約69%は後継者不在で悩んでいる!】事業承継を成功させるために必要な第一歩について

不動産会社の経営者が高齢化している現状については、皆さん理解されていることでしょう。

帝国データバンクが2018年に行った事業別の社長平均年齢調査において、不動産業は61.7歳と調査対象業種のうちで最高となっています。

調査から5年を経過し、平均年齢はさらに引き上げられています。

業種別,社長の年代構成比

会社経営とは言っても不動産業は従業者数1~4名がおよそ7割、10名以下が全体の9割にもなる業態です。

これは少数精鋭が浸透しているからとも言えますが、業態の特異性ではないでしょうか。

国民経済における不動産業の位置付け

実際に個人の売上は資質やスキルによって変化しますから、大所帯が必ずしもプラスに作用する訳ではありません。

商圏や取扱高などを勘案すれば、10人以下の方が目的にも沿っているのでしょう。

優秀な営業マンが2~3名在籍していれば、充分に商売が成り立つ業種です。

ですが優秀な社員は得てして癖があるものです。

手放しでは機能しない。

そこで経営者が陣頭指揮をとって動かなければならず、結局のところ気の休まる暇はありません。

約款などで具体的な定めをしない限り定年退職はありませんから、「まだまだ働ける」という意思と情熱さえあれば年齢を気にせず働けますが、それも程度問題でしょう。

やがて無理が生じるのは自然の摂理です。

自ら創業した会社であれば想いもひと塩ですから、可能であれば末永く存続して欲しい。

そこで改めて周りを見回し、頭を抱えるのが後継者問題でしょう。

社員はいても信頼してまかせられる人材がいない。

外部から招聘しようにも、規模の小さな会社を継いでくれるような人材は来てくれないだろうと諦め心地になる方も多いのではないでしょうか?

今回は後継者不在でお悩みの不動産経営者に向け、「何からはじめるべきか」を中心に解説したいと思います。

成功した事例では、戦略が明確にされている

事業承継に成功した事例を見ると、計画が正しく策定されている場合がほとんでです。

「誰か良い人いない」と、行き当たりばったりに候補者を探すような真似はしていません。

優秀な後継者候補がその辺に転がっているはずもなく、もし存在していたとしても簡単に応じてくれるはずもないでしょう。

何より、説得して引き受けてもらえるだけの情報が整理されているでしょうか?

そこでまず、保有資産の移転や経営指針の引き継ぎなどを明確にする必要があります。

その上で適切なトレーニングや教育の提供などを含め、候補者をどのように育ててゆけば良いのかまでを策定するのです。

つまり、綿密な計画の策定。それが事業承継の成功を左右する言えるのです。

中小企業における事業承継について現状や対策についての基本や俯瞰的知識を得るには中小機構から下記URLで公開されている冊子「中小企業経営者のための事業承継対策」を一読すると良いでしょう。

https://www.smrj.go.jp/ebook/2021_zigyosyokei/book.pdf

中小企業経営者のための事業継承対策

基本的な承継の進め方から始まり、各承継方法のメリット・デメリットや関連する法律・税務関係のほか金融支援策の紹介など、内容は多岐に渡りますがページ数は56Pです。

目を通すのにそれほど時間も必要ないでしょう。

基本的な知識はそちらに譲るとして、まずは承継計画です。

事業承継成功のポイントは、この計画次第であると言っても過言ではないでしょう。

余談になりますが、目標としているのは「承継」です。「継承」ではありません。

前者は事業理念や思想など、抽象的な無形財産までも含め引き継ぐことですが、後者は具体的な有形財産のみを引き継ぐことを意味しています。

起業にはヒト・モノ・カネが必要ですが、同様に企業理念の策定も大切だと言われています。

これは企業としての判断基準には、その全てにおいて一貫性が求められるからです。

そのため企業理念は、漠然としたイメージではなく明確に言語化されていることが必要だと言われています。

手塩に育てた思い入れのある会社なのですから、自らが掲げた理念や様々な想いも含め承継したいものです。

そのために必要なのが、承継計画だと言えるでしょう。

承継計画は何から始めるか

「中小企業経営者のための事業承継対策」に目を通すと、事業承継は早めの取り組みが大切だと書かれています。

もちろんこれによらず何事も早めの対応が大切なのは感覚的にも理解できるでしょうが、一体、何から始めれば良いのか定かではありません。

筆者は事業承継を専門にしている訳ではありませんが、不動産コンサルタントとして活動している関係上、継承問題についての相談を受けることが多々あります。

ですが早めに着手しなければならないとは分かっていても、日頃の業務に忙殺され手つかずにいる方がほとんどです。

ですから相談されても、その内容がひどく漠然としている。

相談内容が明確でなければ、答えようもありません(もっとも漠然としている問題意識を、ヒアリングを駆使して明確にしていく。いわば心療内科医のごときスキルが、コンサルタントには求められるのですが)

そこで、漠然としたモヤモヤを、視覚的・思想的な面も含め具体的にするのが承継計画策定の目的になるのです。

難しく考える必要はありません。

筆者が相談に応じる場合には、まず①後継者選定・育成計画②計画概要③事業承継計画表の各シートを提供し、それを活用(記載)しています。

自らの考えがまとまっていない場合。

以降で解説するシートを作成しながら、自分の考えを整理していけば良いでしょう。

シートの説明

まずは、後継者候補を選定する際に活用するシートです。

冒頭で解説したように、不動産会社の9割は社員10名以下の小規模事業者です。

不動産業は他業種と比較して少ない資本投入で設立可能であり、地域密着やフレキシビリティなどの特徴を最大限に発揮するには従業者数の多いことが、必ずしも有利に働かないこともあります。

地域や専門とする事業形態によって一概に言えるものではありませんが、個別の判断で妥当な人数を求めた結果なのでしょう。

このような事業規模ですから、後継者候補として思い浮かぶのは親族のほか、社内にいる社員の中に存在する潜在的後継者でしょう。

そのほかに外部候補から選択する方法などもありますが、まずは気心が知れた近場に候補者がいないか探すほうが近道です。

とはいえ、いきなり経営を承継できるものではありません。

それ以前に、後継者候補にその意志があるかどうかを確認する必要もありますし、相応の教育も実施しなければなりません。

そのような後継者の選定や育成に必要な情報を端的にまとめるのに有効なのが、下記に掲載したシートの利用です。

ちなみに掲載したシートは、農林水産省が作成し公開しているものを、筆者が実需対応に迫られ不動産事業者向けに加工修正したものですが、ネットを探せば似たようなシートが手に入りますので使い勝手に応じ探されてみてはいかがでしょうか。

後継者の選定・育成シート

記載方法について詳細な説明を必要とせずとも主観的に記入できる様式になっています。

また計画概要も同様で、何カ年計画で事業を承継していくのかを視覚的に捉えるのに役立ちます。

後継者の選定・育成シート

シートに記載する過程で、自らが後継者に求めているものや自社の強み・弱みが具体的になっていくことでしょう。

承継に必要な年数は?

中小企業の場合、かって事業承継は親族内が全体の9割を占めていました。

これは子などが親の家業を継ぐのは当然だという世襲制の意識が根強かったからでしょう。

親の家業に縛られたくないという思いや、安定志向を求めるゆとり教育の弊害もあるのでしょうが、近年では親族外継承が増加しています。

この傾向は今後さらに増加していくことが予想されています。

事業継承,経営者と後継者の関係

事業承継に苦労はつきものですが、みずほ情報総研株式会社が2018年に実施した事業承継に関するアンケート結果でも、「取引先との関係維持」や「後継者を補佐する人材の確保」に苦労したとの回答が多くなっています。

不動産事業の承継においても同様の問題で頭を痛める可能性が高いでしょう。

このような問題を解決するためには、継承を完了するまでに相応の時間が必要とされます。

先述したアンケートでは、後継者の決定後、実際に引き継ぐまでの期間が1年未満とした回答が、親族であるか否かを問わず過半数となっています。

ですが人材育成や問題のない承継を念頭におけば、1年では性急すぎる印象を受けます。

何年かければよいという答えは存在しませんが、やはり3~5年を目安にじっくりと継承していくのが良いのではないでしょうか。

リスク管理と透明性は必須

先述したように、事業承継でもっとも大切なのは「目に見えない資産」を、その想いとともに承継することです。

それぞれの企業が持つ強みの源泉である知的資産は目に見えません。

経営理念を文字で表しても、そこに込められた想いを承継するには、やはり育成が不可欠です。

同様に技術やブランド、ノウハウ・独自のネットワークなどは文字で表現したからと言ってすぐに承継できるものではありません。

そのために必要なのが「見える化」です。

先に紹介した各種シートなどはそのための手段ですし、見た目の良い部分だけではなく問題点もあぶり出し、透明性を確保しつつ育成していく必要があるでしょう。

後継者も不安を覚えるでしょうから、とくにこのような企業実態については、根気よく丁寧に承継していく努力が必要です。

とくに自社が持つ「強み」は、見える化が難しい部分です。

地場密着で事業を継続してきた地場不動産の場合、その強みはこれまで積み重ねてきた「信用」や「伝統」、そして地場で浸透した「知名度」だからです。

老舗企業の強み,帝国データバンク

これは不動産に限らず、老舗企業の場合にはどのような業種でも同様でしょう。

物的資産の承継は、専門士業の力添えがあればそれほど困難なものではありません。

結局のところ会社の持つ強みや弱みを明確にし、それにより再確認できる「企業としての魅力」を、今後さらに磨き上げ発展させるか。

それが事業承継の「肝」であると言えるのかも知れません。

まとめ

今回は事業承継について「何から手をつけたら良いのか分からない」という不動産会社の経営者向けに、事業承継においてもっとも重要なポイントについて解説しました。

とはいえ、結論としては企業の魅力を具体的に棚卸しすることです。

経営者であれば、改めて「見える化」しなくても漠然とであれ自社の強みや弱みを把握しています。

実際に企業を切り回しているのですから当然ですが、そのような秘めた「想い」は、言葉で尽くさなければ他者に理解できるものではありません。

背中を見て学べでは通用しないのです。

そのために各種シートなどを利用しながら、時間をかけて自社の強みや弱みなどを見える化していく。

これにより後継者も理解しやすくなるというものです。

悩む前に棚卸し。

これが事業承継で成功するための第一歩になるのです。

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