【自転車利用は分速何mで表示すれば良い?】不動産広告ルール改正から1年、減らないおとり広告と表示についての疑問

冒頭からで恐縮ですが、タイトルとして用いた質問、物件最寄りのスーパーまでの移動時間が、徒歩では多少遠いので自転車を利用した場合の時間で表示したい。

その場合、1分間換算での道路移動距離をどのようにすれば良いか分かりますか?

「不動産の表示に関する公正競争規約」で徒歩による移動の場合は「道路距離80mにつき1分を要するものとして数値を表示する」と定められており、これは皆さんご存じかと思います。

あまり知られていませんが、自転車による移動時間の表示方法についても定められているのです(表示規約施行規則第9条第11号)。

具体的には、「道路距離を明示して、かつ走行に通常使用する時間を表示する」とされています。

ですから道路距離と併記して、一般的なシティサイクルなどを利用して移動に要した具体的な時間を計り、それを記載するのが正解なのです。

広告に表記した時間でスーパーに到着できない場合には、表示規約で禁止された不当表示(表示規約第23条)に該当する可能性が生じますので注意が必要です。

「不動産の表示に関する公正規約(表示規約)」及び「表示規約施行規則」が、公正取引委員会及び消費者庁の認定・承認を受け施行されたのは2022年9月1日です。

改正により強化されたのが、交通の利便性や各施設までの距離・所要時間と特定事項の明示義務、そして引渡し可能年月(賃貸においては入居可能時期)及び二重価格表示であるのはご存じのとおりです。

改正が行われたのは、法改正への対応や消費者保護の強化、新聞折り込みからインターネットやソーシャルメディアを利用した広告へとシフトしたことが主な理由とされています。

間接的には、広告媒体の変化による「おとり広告」を防止するためであると言えるのでしょう。
改正から1年。不当表示は減少したのでしょうか?

今回は不当表示により措置命令が課された事例を中心に、その傾向について解説すると同時に、ウッカリのミスを防止するため必要な表示規約の基礎知識について解説したいと思います。

おとり広告は賃貸が主流?

今回の記事では、公益社団法人首都圏不動産公正取引業協会が公開しているデータを中心に検証したいと思います。

基本的なことですが規約や法令に違反した広告表示が確認された場合、処分権者は不動産公正取引業協会です。

処分は「注意」、「警告」、「厳重注意」、「違約金課徴」の順で重くなり、違反広告数や表示数・内容・影響の度合いなどを勘案しいずれかの措置が決定されます。

それだけではありません。

掲載内容が景品表示法に違反している場合には消費者庁や公正取引委員会が処分権者となり、「指導」または「措置命令(併せて課徴金)」が課せられ、措置命令については公表の対象とされます。また宅建業法にも違反するでしょうから、「指示」、「業務停止」、「免許取り消し」などの処分が科せられる可能性があるのです。

このように措置が科せられれば企業としての存続に影響を与えかねない「おとり広告」ですが、表示規約が改正された以降も措置が確認されます。

例えば2023年6月の措置状況を見ると、違約金課徴が2社、警告・注意が合わせて24社(警告7社・注意17社)となっています。その前月(5月)では違約金課徴2社、警告・注意9社。

さらに遡る(4月)と、違約金課徴2社、警告・注意10社となっています。それ以前についても、毎月同程度の措置状況が確認できます。

警告や注意には誤植やうっかりミスなど、注意不足により発生したと見られるものもありますが、違約金課徴が課せられたケースはその限りではありません。意図的な「おとり広告」です。

例として違約金課徴が課せられたA社を取り上げますが、契約済物件を長いもので2年2ヶ月以上、短いもので3ヶ月以上もの間、自社のホームページに掲載しています。

違約金課徴,おとり広告

また、それ以外の記載事項についても必要とされる記載事項の不記載が多数確認されています。

このレベルになると「うっかりしてました」は通用しません。

違約金課徴が課せられた事例をつぶさに見ていくと、9割以上が賃貸業者であり、指摘された媒体は自社のホームページです。

また免許番号が(1)である場合がほとんどで、起業したのは良いが思うように業績が伸びず、背に腹を変えられなかったという実態があるのかも知れません。

ですが「おとり広告」は、賃貸・購入を問わず住居を探している一般消費者にとってはもちろん、同業である私たち不動産業者にとっても迷惑な話です。理由が何であれ容認されるものではありません。

不動産ポータルサイトでは「おとり広告撲滅」に力を入れていますし、SUUMO・LIFULL HOM`S・at homeなどの主要サイトでは、不動産公正取引業協会から厳重注意もしくは違約金措置を受けた不動産業者からの広告掲載依頼は、掲載停止期間(およそ1ヶ月)中に限り受け付けないとしています。

掲載停止期間が開けても、業態改善や経営状態などの審査基準をクリアしなければ再掲載は認められませんから、場合によっては死活問題にもなるでしょう。

ついウッカリには注意が必要

意図的なおとり広告は論外として、「不動産の表示に関する公正競争規約」を正しく理解していなければ、ついウッカリが生じます。

よほど重大な表記ミスでなければ、ただ1点を持って措置が課せられることはありませんが、それでも消費者にいらぬ誤解を与えることになりかねません。

そこで、実際の事例からウッカリミスになりがちなポイントについて解説したいと思います。

基本的な話ですが、不動産広告は折込広告やホームページ・SNSなどはもちろん、パンフレットや小冊子・ダイレクトメールやノボリなど、およそ顧客を誘引するための手段として用いられるもの全てが該当します(具体的には表示規約第4条第5項による定め)。

よく営業個人が開設しているSNSを用いて不動産情報を投稿しているケースを見かけますが、個人用のアカウントを用いようが表示規約第8条(必要な表示事項)の規制を受けるインターネット広告に該当します。ですから、記載事項に全てを掲載できない場合には物件概要が表示される他のリンク先を設定しておかなければなりません。

また間取り表記にも注意が必要です。

1SLDKと表示したケースでは、Sが納戸であることについての説明がされていないとして注意が発せられています。

不動産業者であれば、建築基準法の定めにより居室として必要な採光面積や換気に必要な開口部の要件を満たしていない部屋、つまり納戸や物置などが「S(サービスルーム)」であることは知っていますが、一般の方はその限りではありませんから説明が必要です。

また広告図面を作製する際、LDKやDKの表示に関しノリで決めている方を見かけますが、不動産公正規約では、それらを表記する際に最低限必要とされる下限目安が定められています。

DK+1部屋の場合にはDKが4.5帖以上あること、これが2部屋以上、つまり2DKの場合にはDK単独で6帖以上なければ表記できません。同様にLDK+1部屋の場合はLDK単体で8帖以上、2LDKと表記する場合にはLDK単独で10帖以上の広さが必要です。

また購入に伴い補助金などを、購入者自らの申請により受ける場合には、制度の適用条件(建物面積や満たすべき性能基準、所得の上限など)を満たしている必要があります。もっとも限られた小さなスペースにその全てを記載することは困難であることから、下記のような表示方法であれば問題ないとされています。

【表示例】
◯◯制度が利用できる主な条件
①住宅の引き渡し日から6ヶ月以内に自らが入居していること
②本制度を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること。
※詳細についてはお問い合わせください。

それ以外に指摘されている事項としては、文字の大きさ、つまりポイント数があります。

基本的に不動産広告においては、原則として「7ポイント以上の文字を使用し、かつ見やすい色彩で分かりやすい表現で明瞭に表示すること」が定められています。

物件概要はとかく文字数が多くなりますので、特に印刷物として限られたスペースに盛り込んだ場合、「文字のかすれ」、「つぶれて判別不能」などの状態になることがありますが、これらは違反の対象になります。

また、SNS広告などにおいては一部の事項を記載して「詳細はホームページへ」とリンクで誘導することを認めていますが、印刷物はその限りではありません。

広告作成時に注意する条文は4つ

広告表示について理解を深めようと思えば、下記URLから確認できる「不動産の表示に関する公正規約(表示規約)」及び「表示規約施行規則」を熟読するしかありません。

https://www.sfkoutori.or.jp/webkanri/kanri/wp-content/uploads/2019/01/h_kiyaku.pdf

不動産の表示に関する公正競争規約,同施行規則

全体で34P程度ですから目を通すだけならそれほど時間もかかりませんが、正確に理解しようと思えば相応の努力が必要です。

そこで最低限、広告作成時には特定事項の確認(13条)、表示基準(15条)、特定用語の確認(18条)、不当表示(23条)を確認し、最後に不足項目や誤字脱字のチェックを心がけましょう。

新築住宅の広告作成フロー

これを徹底するだけで、意図しないウッカリミスの大半は防止できるはずです。

まず特定事項(13条)は、一般消費者が通常予期できない不動産の事項(地勢、形質、立地、環境など)及び取引の相手方に「著しく不利益な取引条件」などの16事項が規定されています。

具体的には市街化調整区域や道路要件を満たしていないことによる「建築不可」もしくは「再建築不可」などの表記や、土地全体にたいし路上部分が全体の30%以上を占める場合にはその割合や面積について具体的に明示しなければなりません。

そのほかセットバックが必要な場合や、古家等がある土地、高圧線下の物件などについても明示が義務付けられていますので注意が必要です。

次いで表示基準(15条)は、広告作成時の基本となるルールです。

1. 取引態様
2. 物件所在地
3. 交通利便性
4. 各種の施設までの距離及び所要時間
5. 団地の規模
6. 面積(坪と単位とした表示のみは不可)
7. 物件の形質(地目や、リフォーム済みの場合はその内容や実施時期など)
8. 写真・絵図
9. 設備・施設等
10. 生活関連施設
11. 価格・賃料
12. 住宅ローン(返済例などを表示する場合には、金融機関の名称、融資限度額、利率などについて具体的に表示しなければなりません)

表示基準(15条)は、表示事項と並んで不動産広告作成時の最重要規定とされています。

具体的には、表示する際の定義が規定されている、もしくは合理的な根拠が保有されているもしくは根拠が併記されていなければ使用できないです。

例えば「新築」と表示するには、建築後1年未満でありかつ居住の用に供されていないことが条件とされています。

それ以外にも、合理的な根拠を併記できない下記のような用語はその使用自体が禁止されています。

不動産広告,使用禁止用語

次に特定用語の確認(18条)です。これは15条と重複する部分もあるのですが、新築・新発売などの用語を利用する際の具体的な条件について規定しています。とくに注意したいのは、DKやLDKなどの目安を満たしている場合でも、実際の形状や機能が満たされていなければDKは「K」、LDKは「DK」などと表記しなければならないとしている点です。

また同条第2項では、「激安」、「最高級」、「破格」などの表現をする場合には、それを裏付ける合理的な根拠を示すことができる場合を除き、その使用を禁止しているのは15条と同様ですが、それらはあくまでも例示であり、同様の意味を有する外国語による表現も禁止している点が特徴です。

不当表示の有無(23条)は、前15条及び18条を総括する意味合いとして、消費者に特に誤認されやすい表現の表示について言及しています。

これまでに解説した各項目を充分に確認し、最後に誤字脱字をチェックすれば、不動産公正取引業協会から指摘される可能性は激減することでしょう。

まとめ

令和5年1月12日に『いわゆる「おとり広告」等の禁止の徹底について』が国土交通省から首都圏不動産公正取引業協会あてに発出されました。

これは、年度末に向け不動産取引が増加する時期であることから、「おとり広告」の増加が懸念されることから、その防止を徹底してほしいとの意向もありますが、真意は「撲滅」です。

公取協通信

「おとり広告」を行えば、それを見た消費者が問い合わせをしてくる可能性はあるのでしょうが、そもそも必要な情報も開示しておらず物件自体、存在しないこともあるのですから、それを原因としてトラブルが発生することがあるでしょう。

一時的に利益は得られるかも知れませんが、そんな状態が長く続くはずもありません。いずれ何らかの措置がくだされるでしょう。

違反すれば課徴金の支払いはもちろんですが、公表された際には致命的な影響を受け、場合によっては廃業に追い込まれるかも知れません。

「おとり広告にメリットなし」と理解して、ルールの遵守を徹底したいものです。

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