中小不動産経営者の悩みを解決【事業承継の相談先は?】

全6回を予定して連載しています「事業承継」をテーマに解説している記事ですが、今回は4回目として「事業承継の相談先」について解説します。

前回までの記事で中小・個人不動産業における事業承継の現状から、後継者の選び方、後継者教育の重要性、そしてM&Aを利用しての会社売却についてまでを解説してきました。

前回までの記事でご紹介したように、どうしても後継者が見つからない場合にはM&Aを検討し、その段階までくれば相談先はM&Aコンサル会社の担当者が相談窓口となります。

その後は二人三脚で売却に向けて歩を進めることになりますが、その前段階、つまり後継者候補の選択や事業承継についての相談先はM&Aコンサルではありません。

むろん相談をすれば親身に話を聞いてくれますし、豊富な知識から様々な提案をしてくれるかも知れませんが、彼らはあくまでもビジネスで相談に乗っている訳ですから、根底に株式売却などを提案して利益を得ようとの考え方があります。

あくまでも最終段階と考えておきましょう。

今回の記事では、前段として誰に相談するかについて解説をしていきます。

相談先にはどのようなところがあるか?

相談先については、事業継承の計画段階において幾つかの窓口を用意しておくことをお勧めします。

事業承継の緊急性や、検討開始時期により以下のような先が考えられます。

1.身近な相談者
2.専門的な相談者
3.国の支援機関の利用
4.民間相談者(M&Aコンサルなど)

なお、4.民間相談者(M&Aコンサルなど)につきましては、前回の記事と内容が重複しますので説明を割愛いたします。

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身近な相談者

事業承継の検討初期段階では、もっとも身近にいる相手を相談者とします。

もっともこれらの相談相手は、実務的な部分については不得手な部分もあるかも知れませんが、後継者の選定も含めて、この身近な相談者への相談で方向性を定めるのが理想的です。

身近な相談先としては、以下のような先があります。

1.親族
2.事業をおこなっている友人・知人
3.取引先金融機関_担当者
4.商工会議所等_経営指導員
5.同業種団体_担当者

専門的な相談者

事業承継が具体的な段階にはいれば、下記のような専門性を有する士業に相談します。

1.税理士
2.弁護士
3.公認会計士
4.各士業団体

もちろん当初から、これら専門士業に相談を持ち掛けるのも有効です。

とくに私たち不動産業者の場合には、日頃から司法書士・弁護士・税理士などの士業と付き合いがありますから、故意にしている士業に相談するのが近道です。

ただし、士業の中には事業承継を不得手としている方もおられますので、そのような場合には事情を説明し他の士業を紹介してもらう必要があるでしょう。

国の支援機関の利用

身近な相談者や士業への相談をおこないながらも、併せて国や地域の支援機関を利用するのも良い方法です。

相談先としては、以下のようなところがあります。

1.経営改善支援センター
2.再生支援協議会
3.事業引継ぎ支援センター
4.中小企業基盤整備機構

個人事業主にお勧め!! 後継者人材バンクの利用

前項でご紹介した「事業引継ぎ支援センター」の一部では、後継者不在の個人事業主にたいして、第三者事業承継を目的とした「後継者人材バンク」事業がおこなわれています。

もちろん、個人事業主に限らず法人格を有している企業でも利用することができます。

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人材バンクは後継者問題の解決と併せた創業促進を目的としており、後継者不在の小規模事業者と創業を志す個人起業家などを、お互いの条件や業務内容をマッチングさせ、当面は起業家と経営者が共同で経営を行い、経営理念やノウハウ、実務などを承継していく手法を提案してくれます。

これら後継者人材バンクは、起業を志す人材が創業リスクを軽減させることができますし、後継者不足に悩む経営者にとっては志の高い後継者を見極めながら、事業承継できるといったメリットがあることから、全国的に拡大傾向にあります。

主な支援先の連絡先など

国の支援機関や各団体など、公的機関の主な連絡先をご紹介します。

下記にご紹介する機関は、基本的に公的な性質をもっていますので相談は無料ですし、営利を目的としていません。

それぞれ得意とする分野がありますので、記載しているURLアドレスで事業内容などを内精査し、もっとも自社の相談相手として合致していると考えられる機関を選んでいただければ良いと思います。

●事業引継ぎ支援センター
後継者問題に悩む中小企業経営者の事業支援を目的として、平成23年に事業引継ぎ専門機関として設置されました。M&Aマッチング支援も含め、事業承継に関する幅広い相談に対応しています。
【連絡先】 事業引継ぎ支援センター一覧
https://www.meti.go.jp/press/2019/08/20190816001/20190816001-1.pdf

●中小企業再生支援協議会
中小企業の再生に向けた取り組みを支援する中小企業庁が運営する協議会です。事業承継に必要な、財務上の問題解決・事業の収益性向上にたいしてのサポートを中心としていますが、事業承継を再生計画と捉えた場合には専門相談に対応できる機関です。
【連絡先】 中小企業庁支援策案内_再生支援協議会一覧
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/leaflet/l-2019/190325saiseiall.pdf

●中小企業基盤整備機構(中小機構)
経済産業省が所管する独立行政法人として中小企業施策を専門に、おこなっています。
経営基盤強化・新事業創出・販路開拓・海外展開など、どちらかと言えば大局的な相談支援を得意としていますが、地域資源活用や新連携支援など、地域を結ぶ事業も手掛けています。
【連絡先】 中小企業基盤整備機構
http://www.smrj.go.jp/index.html

●よろず支援拠点
中小企業・小規模事業者に向けて、経営上の悩み相談窓口として国が全国に設置した無料の経営相談所です。
中小企業総合支援センターや、産業振興センターなど都道府県により設置機関名称はことなりますが、設置目的は同じです。
支援拠点のチーフコーディネーター(CCO)を中心に各分野のスペシャリストとして専門性を有するコーディネーターが在籍しており、経営に関する幅広い相談に応じています。
【連絡先】よろず支援拠点一覧
http://www.smrj.go.jp/yorozu/087939.html

● 商工会議所など
事業を展開している皆様には馴染みがあると思いますが、商工会議所や商工会は経営指導員が巡回訪問等をおこないながら地場密着型で相談に対応しています。
地場ならではの事例にも通じていますので、親身になって相談に応じてくれるといった特徴があります。
【連絡先】全国の商工会議所
http://www5.cin.or.jp/ccilist
日本商工会議所
http://www.jcci.or.jp/
都道府県商工会連合会
http://www.shokokai.or.jp/?page_id=1754
全国商工会連合会
http://www.shokokai.or.jp/

● 全国中小企業団体中央会
会員数27,000人を超える規模の同業種組合です。
事業承継に関するセミナーなども定期的に開催しており、積極的に情報提供や後継者問題への支援先紹介などもおこなっています。
【連絡先】全国中小企業団体中央会
http://www.chuokai.or.jp/

● 経営革新等支援機関認定
中小企業庁により、中小企業等経営強化法に基づき認定された税理士や弁護士、金融機関や商工会議所などから専門性の高いレベルでの中小企業支援を目的とした機関です。
専門性の高い相談員が対応していることから、事業承継のほかにも税務・財務・資金調達などのサポートをおこなっています。
【連絡先】経営革新等支援機関認定一覧
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/nintei/kikan.htm

相談前に内容をまとめておくことが大切

経済産業省では、知的資産経営報告書の作成をして積極的に企業資産をPRすることを推奨しています。

事業承継にあたり、知的資産経営報告書の開示を意識する必要はありませんが、企業のビジョンや将来的な方向性、業界を取り巻く動向など後継者に引き継ぐべき情報の基とすることができる書式ですので、予め作成しておき、前項までに紹介した相談先に提示すれば余計な説明も省略することができます。

経済産業省では、開示事例を下記URLで公開していますので、参考にすると良いでしょう。
https://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/jirei.html

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まとめ

今回の記事では、公的な機関まで含めての相談先をご紹介しました。

事業承継を考えたときに、周りを見回して人材不足だとなげき早々に「廃業」や「M&A」を視野にいれるのはあまりにも早計です。

一人では悩まずに様々な相談先に打診し、事業の継続と安寧を模索する意識をもつことが大切です。

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