中小不動産経営者の悩みを解決【事業承継のメリット・デメリット】

全6回を予定して連載しています「事業承継」をテーマに解説している記事ですが、今回は5回目として「事業承継のメリット・デメリット」について解説します。

事業承継においては誰に引き継ぐか、つまり親族・身内を後継者とするのか、または従業者などの親族外もしくはM&Aを利用して承継先を探すかによりするかにより、それぞれメリット・デメリットが存在します。

とくに不動産業者の場合は、賃貸もしくは売買を主としているのか、それとも宅地造成など土地売買を主としているか、または任売をメインとしているなど、自社の得意分野を生かす差別化戦略により、後継者に必要な能力も異なります。

今回は事業を承継する後継者の分類ごとに、メリット・デメリットについて解説します。

【不動産】親族内承継のメリット・デメリット

メリット

1. 時間をかけ後継者教育をおこなうことができる。
2. 社内外のコンセンサスが得やすい。
3. 税の軽減処置が多い。
4. 経営理念が踏襲されやすい。

不動産,事業承継,メリット,デメリット

図_中小企業庁HPより

身近な存在であることから、早い段階から後継者候補として選任し、時間をかけ後継者教育できるのが親族内承継における最大のメリットです。

法人格の有・無によらず、中・小不動産業者の場合には代表者の人格や交友関係によりビジネスが派生することも多く、またそれに依存しているケースも少なくありません。

「会社=代表者」の典型であり、従業者も代表に依存していることが多く、そのような土壌が定着している企業の場合に親族外やM&Aにより後継者が選ばれた場合は、新体制後すぐに企業内で不協和音が生じ業績が悪化することもあります。

このような企業の場合には早い段階で親族を後継者として選ぶことにより、社内外の認知も得られやすいことから代表者の交友関係の引き継ぎや社内コンセンサスが得られやすいといったメリットもあります。

不動産,事業承継,メリット,デメリット図_中小企業庁HPより

また生前贈与などの利用により、代表者個人名義で企業利用している資産を、税制優遇を受けながら承継できるといった、親族ならではのメリットもあります。

デメリット

4.後継者教育が甘い、もしくは厳しくなる傾向がある。
5.代表者の理念は踏襲できるが、事業を発展させるといったモティベーションに欠けることがある。
6.相続人が複数人いる場合など、生前贈与や遺言書であらかじめ財産配分を定めておかなければ、相続時にトラブルが発生する。

不動産,事業承継,メリット,デメリット

図_中小企業庁HPより

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図_中小企業庁HPより

親族にたいする愛情が裏目に出て、教育が甘くなる場合もあれば厳しくなりすぎるときもあります。

従業者は、親族が後継者とされているのを認知しても、将来、代表者となる後継者の一挙一動を見ているものです。

これら従業者は頭で理解していても、後継者教育や本人の能力を上回る権限を早々に与えた場合などは反感を持ちますし、また後継者に対して厳しすぎると、後継者自身が委縮して成長しないばかりか嫌気がさしてしまうなど、親族ならではともいえる後継者教育の難しさがあります。

また親族内承継の場合には、良くも悪くも後継者の業務能力をひいき目に見てしまう傾向がありまずが、不動産事業に関わるスキルや能力、経営者として必要な「人徳」は別物です。

それらのバランスを上手くとりながら、後継者教育を進めていく必要があります。

【不動産】親族外承継のメリット・デメリット

メリット

1.従業者や役員を後継者とした場合、企業風土が踏襲しやすい。
2.能力重視で後継者を選択することから、企業の発展に期待がもてる。
3.親族ほどではないが、社内外のコンセンサスが得やすい。

親族外承継は、現在勤務している従業者や役員、それ以外にも知人や前回の記事でご紹介した公的機関などからのマッチングなど、「経営能力ありと見込んだ後継者に事業をたくせる」のがメリットです。

親族ではないことから、冷静に後継者候補の能力や将来性を見極めながら、必要とされる後継者教育に専念できます。

これらのことから、客観的に第三者的な視点で能力を分析し、必要とされる後継者教育を行うことにより、現在の事業形態に後継者の能力を加味したレバレッジを利用して将来的な成長戦略に着手しやすいといったメリットがあります。

デメリット

4.事業を継続・発展させられるかは、後継者の能力と人格に左右される。
5.現在の事業収支が安定し、ある程度の運用資金があるなど企業に魅力がないと難しい。
6.企業を維持し、さらに発展させる意欲など後継者には「強い意志」が求められる。

親族外承継は現在の事業状況や、代表者や企業の資金力などにより大きく左右されます。

不動産,事業承継,メリット,デメリット

図_中小企業庁HPより

あたりまえのことですが事業資金の借り入れも多く経営が青色吐息の状態では、従業者も「そんな苦労は頼まれても嫌だ」となりますし、外部から後継者を招聘しようにも同じような理由で困難になります。

また、創業者ではなくても会社経営を引き継ぎ粉骨砕身まい進する強い意志が、後継者には求められます。

企業規模にもよりますが、そのように能力があり強い意志と責任感を持つ人であれば、創業者として独立志向を持つ場合も多いことから見つけるのも困難です。

実際には、そのような素質を持つ後継者に教育をおこなうことで育てていくといった考え方が大切です。

後継者候補も客観的に企業の現状や将来性を検討し、引き受けるかどうかを判断するでしょう。

M&A承継のメリット

1.親族・親族外で後継者候補者が見つからない場合に、事業承継の手段となる。
2.経営者が譲渡益を受け取ることができる。
3.従業員の雇用維持や、売却対価などを条件として交渉ができる。

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図_中小企業庁HPより

前回までの記事でも解説していますが、M&Aも事業承継の有効な手段の一つです。

後継者がいないことを理由に「廃業」するよりは、企業を存続させる手段として有効に活用できます。

企業規模や事業状況にもよりますが、従業員の雇用条件や売却対価が交渉できることもメリットです。

M&A承継のデメリット

4.経営権を完全に手放すことから、意図しない方向へ会社が変貌していく。
5.条件により、一定期間は企業に据え置かれることもある。
6.M&Aコンサル会社の見極めが重要。
7.従業員の雇用維持や、売却対価などに合意する買主を探すのが困難。

不動産,事業承継,メリット,デメリット

図_中小企業庁HPより

M&Aには様々な方法がありますが、中小不動産業者の場合には企業を「売却」といった方法に偏ります。

実質的に経営権を手放すことになりますので、手塩にかけた会社がどのように展開されていくのかについて意見する立場ではありません。

創業者である場合には心情的な寂しさが残りますし、雇用していた従業者の行く末も心配です。

そのようなことにならないよう、M&Aコンサル会社を選ぶ際には、不動産会社のM&A実績や担当コンサルの能力なども充分に精査して、依頼先を選定することが大切です。

また売却金額や雇用条件などの条件を満たす買い手がスンナリと見つかるかどうかは、現在の事業状況や将来性など、企業のポテンシャルに大きく左右されます。

時間的にも余裕を持って買い手を探す心構えが必要です。

まとめ

今回の記事では、事業承継にかんして後継者候補によるメリット・デメリットをそれぞれ比較する方法で解説させて戴きました。

記事をお読みになればお判りになるかと思いますが、いずれの後継者候補を選定しても相応の時間が必要です。

時間的な余裕を持って、事業承継にたいしての対策を検討し、必要な後継者教育など充分に準備して備えておくことが大切です。

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