【アウトドアブームによる山林購入熱】実際の取引はどうするの?

コロナの長期化で後押しされた感もあるアウトドアブームですが、世間的にも影響力を持つ芸能人などがソロキャンプ用に山を購入したと発信するなど、「山買い」を本格的に検討する方が見受けられるようになりました。
不動産のコンサルティングの合間で談笑すると、「山って、どうやったら購入できるのですか?」と質問されることがあります。
「注意する点はいくつかありますが、基本的に一般の不動産取引と変わりませんよ」とお答えすると、知人の不動産会社の人に聞いても、「取り扱ったことがない」「いろいろと難しい」などと、具体的な金額や購入方法について説明してくれず、取り扱いをしたくないといった感じをうけるとのこと。

業者にもよりますが、山林売買の経験者はそれほど多くはないようです。
ですが下記ポイントさえ注意すれば、重要事項説明書や契約書は通常の土地取引となんら変わることがありません。

1. 売り山の探したかた。
2. 隣地境界などの考え方
3. 下見や案内
4. 決済後の届け出方法

今回は実務としての山林売買について、ポイントを中心に解説します。

山林所有者の現状

木材売買など事業目的として山林を所有している場合を除き、相続などにより所有者となった場合には「山林」を持て余している方が多いようです。
無指定の山林などは年間の固定資産税も数千円程度からと安く、間伐手間などを緩和するために林業協同組合経費などを支出していない場合などは、所有をしていても負担がすくなく、いわゆる「塩漬け」状態で保有しているといった現状があります。
山をレジャー目的で所有している場合を除き、用途として以下のようなものがあります。

1. 木材を売却して利益を得る
2. 自治体などに貸し出す
3. 太陽光発電業者に貸し出す
4. 自治体や林業業者に貸し出す

これらは道路付けや立地がある程度は整っているといった前提が不可欠であり、そうではない場合には自治体や林業業者も手を出さず、また自分で低地の一部を利用しようにも水道や電気の引き込みが困難である場合も多く、傾斜地などの場合には相応の地耐力も必要ですので造成工事も高額になります。
そのような山林の多くは市街化区域外の無指定で、しかも配置によっては無接道ですから、建築は可能ですが建築資材を搬入する道がない。
電気や水道の引き込み以前に、道をつくることから始めなければならないといった途方もない労力が必要となります。
手放そうにも買い手がつかず、売れたとしても安値でしか売買できないといった現実のほか、相続により所有した場合には諸々の絡みもありますから安易に売却できないなど、結局のところ所有されているだけの山林が、日本には無数にあります。

「売り山」物件の探し方

一般的な売り物件であればレインズを利用して検索すればよいのですが、山林の登録情報はさほど多くありません。
ですが、エリアを指定して土地面積を50,000坪以上などとすればそれなりの数は検索することができます。
試していただければお判りになりますが、これらの検索物件の多くは文字情報のみで、図面が展開されていても公図やおおよその位置を示した地図がせいぜいです。

山林売買を得意としている不動産業者も存在していることから、それらの業者が展開しているHPなども併せて検索すると良いでしょう。
また顧客希望エリアを管轄している森林組合に問い合わせするのも有効です。

●参考検索先

1. レインズ

2. 全国森林組合連合会
http://www.zenmori.org/kumiai/5_list_detail.shtml

3.マウンテン・ジャパン.COM
https://www.mountain-japan.com/mountain_list/

4.山いちば
https://yamaichiba.com/

5. 山林売買.net
http://www.sanrin.net/buy.php

公募にするか実測にするか

山林売買は、公図はあっても地積測量図が存在していないことがほとんどです。
ご存じのように、実測取引をおこなうためには仮測量図を作成して隣地の利害関係者と境界明示の確認作業を必要としますが、山林の場合には隣地所有者の記憶も曖昧であり、それぞれの所有者が「この辺りかな……」と指し示す場所が違っているなど、多額の費用をかけて境界を明示し図面作成するメリットはありません。
費用対効果についての説明をして、公募取引をメインとするのが良いでしょう。

立木も資産だが、過度な期待は禁物

取引に関し「立木に関する法律」については皆様ご存じかとおもいますが、本来であれば独立した不動産である立木も、一般的には「山」の所有権と同時に売買されます。
売買情報に林種・樹種などが記載されているサイトもあることから、スギやヒノキなどの天然木を売買して一儲けなどと考える方もいるかも知れませんが、要注意です。
日本は国土面積の7割が森林であるとされる森林大国ですが、木材自給率が30%程度しか活用されていません。

理由は、国産材と比較して価格の安い輸入材が市場に溢れていたことも原因ですが、ウッドショックの影響により国産材も見直されてはいても、地元林業組合が手を出していない理由を冷静に考えなければいけません。
切り出してから出荷する経路が確保できているか、つまり接道条件やルートの確保ができる地形であるかにより原価計算の異なる木材は、業者も加工場からより近くで利便性の高い山を中心として出荷量を勘案します。
購入価格の低い中山間地域の多くはそのような条件を満たしていないことも多く、過度な期待は禁物です。

下見の重要性

売買対象物件の下見や案内は不動産仲介をしているのなら当然の業務ですが、「山」の場合には異なります。
実際に、山林売買を得意とする業者でも資料や情報は提供するが、確認はご自由にというスタンスがほとんどです。
つまり、物件案内には対応していない。
それでも顧客要望により、案内が必要な場合には必ず下見をしておきます。

中山間地域の案内業務は「道なき道をゆく登山」です。
とくに傾斜地や原野の一部ではなく、山を丸々と売買対象とする場合は下準備なく顧客と同行して案内業務をすると後悔することになります。
足を踏み外して滑落するなどの危険性がありますので、絶対におやめください。

舗装された公道が山間を縫うように走っていればよいのですが、多くの場合にはまともに公道にも隣接しておらず、せいぜい未舗装の林道などで、途中で道が途切れる、もしくは幅員が極端に狭く車が侵入できません。
日本の誇る優秀な4WD車でも、立木や雑草の生い茂る道なき道を分け入るのは無理ですから、残りは徒歩になります。
下見の時点でも、GPS機器や登山アプリなどにより方位を見失わないための準備しておきます。

●GPSお勧めアプリ
「YAMAP」
「ヤマレコ」
「スーパー地形」
「Geographica」

解説するまでもないとは思いますが、下見にスーツに革靴でいくのは言語道断です。
虫対策に長袖シャツは必須として、少なくても軽登山以上の装備で行くべきでしょう。
そのほかにも地図や航空写真などで全体を俯瞰して情報を整理し、効率の良いルートを検討してから下見を実施しましょう。

図面や航空写真などを利用して情報をまとめる

図面や航空写真、実際の下見により確認した情報は別途詳細にまとめておきます。
購入希望者が独りキャンプなどに憧れている場合にも、水道や電気などのライフラインがどこまできているか、またキャンプ設営するのに最適な平地が存在しているかなどをマーキングして情報をまとめておけば、顧客と同行しての案内業務もスムーズに終えることができます。
実際には、山の売買を専門にしている業者でも情報の開示はおこなっていますが案内業務には対応していないケースがほとんどです。

これらのことから、まとめた情報を渡してあとはご自由に見学して下さいでも問題はありません。
ただし山林の状態や地形は、実際に散策し自らの足で歩く以外に理解する方法はありません。
平地や倒木の有無、川や水場、獣害の状況など以外にも樹種や樹齢・間伐や植林状態などのチェックもしておくとよいでしょう。

取引後には届け出を忘れずに

情報を提供し、売買する物件の確認と価格に折り合いがつけば契約になります。
契約自体は通常の不動産土地取引と同じですから、特段に注意する点はありません。

登記手続き完了後にはなりますが、平成24年4月以降から森林土地所有者は市町村への事後届が必要となっています。
届け出は各都道府県が策定する地域森林計画の対象森林とされていますが、ほぼ該当すると考えておいた方が良いでしょう。
期間は所有権移転後から90日以内とされていますので、あらかじめ準備しておく必要があります。
記載事項は下記の通り。

1. 前所有者の住所・氏名
2. 現所有者の住所・氏名
3. 移転年月日
4. 移転の原因
5. 所在地及び面積
6. 用途

これら届け出についての記載例やQ&Aについては、林野庁の下記URLアドレスから確認することができます。
https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/todokede/

山林,購入,取引エリアにより「国土利用計画法の届出」を必要とする場合もありますので、確認が必要です。

まとめ

今回の記事では、山を購入する目的をあくまでもレジャーやアウトドアに活用するとしていますので、森林組合に加入して樹木を売買する方法については解説していません。
これら売買を目的とした樹木管理については、林野庁の「森林整備事業の補助金」を利用して植付・下刈り・間伐作業経費を賄うことができるほか、各都道府県の緑地保全制度適用区域内に該当すれば、樹木管理補助金を利用できる可能性もあります。
顧客の購入動機が、そのような林業参入を目的による場合には別途、調査をしておく必要があるでしょう。

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