【増加するSNS型投資詐欺】理解したい詐欺の手口と防止策

朝、新聞を読むと、連日のように詐欺被害の記事を目にします。その被害額を見ると、「よくこれほどの現金を持っているな」と驚く一方で、なぜ簡単に騙されてしまうのだろうと不思議に思うことがあります。

しかし、かつて詐欺で服役した人物から話を聞くと、「自分だけは騙されない」と思い込んでいる人ほど騙しやすく、特に権威のある人間ほどその傾向が高いと言っていました。

最近では、投資詐欺の手口が巧妙化し、ロマンス詐欺などSNSを利用した新たな形態が増加しています。また、高齢者を狙った悪質な手口も後をたたず、その被害は深刻化しています。

特に投資詐欺では、「必ず儲かる」、「元本保証」など遵法精神が欠落した勧誘文句が使われ、それを信じて資産を失う人が少なくありません。

警察庁が公開した「SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺」の認知件数・被害総額の推移では、令和5年4月以降は減少傾向にあるものの、被害総額は令和5年同期比(1~11月)で763.4億円増加し、1,141億円に達したことを確認できます。

さらに、令和5年1月から令和6年11月までの「SNS型投資詐欺」に関する被害認知件数は5,939件、被害総額は約797.4億円であることも確認できます。

しかし、このような多くの認知件数に対して、「SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺」の検挙件数は令和6年1~11月でわずか193件に留まっています。

巧妙化するSNS型犯罪は捜査も困難でしょうから、検挙件数と認知件数が相関関係となるわけではありません。当然、捜査は継続して行われているのでしょう。しかし、検挙率が高いとは思えません。

日本の刑事裁判における有罪率は99.9%と高いものの、これは逮捕して起訴された場合に限られます。また、有罪判決が出ても被害額が戻される確証はなく、民事裁判を経ても加害者が資産を持っていなければ泣き寝入りとなる可能性が高いのです。

最も効果的な防衛策は「騙されないこと」です。そのためには、「SNS型投資詐欺」や「ロマンス詐欺」の手口を知り、日頃から注意することが重要です。また、不動産業者は投資相談に応じる機会が多いため、投資対象に疑わしい点がある場合には、被害を未然に防止するため適切な助言を行う責務があります。

今回は「SNS型投資詐欺」や「ロマンス詐欺」の典型的な手口を紹介するとともに、詐欺を防止するために有効な助言のポイントについて解説します。

SNS型不動産詐欺の種類と手口

冒頭でも紹介しましたが、SNSによる投資詐欺では「必ず儲かる」、「元本保証」など、甘い言葉がしばしば使われます。しかし、どのような投資にも必ず相応のリスクは伴い、確実な投資先など存在しないことを理解する必要があります。

例外があるとすれば、インサイダー取引でしょう。しかし、これには『5年以下の懲役または500万円以下の罰金、またはこれを併科(第197条の2)』という厳しい罰則が科せられます。また、インサイダー取引で得た財産は没収され、または追徴されます。

インサイダー取引に関する罰則について理解していない場合でも、市場価格に影響を与える機密情報の漏洩が、何らかの法律に抵触する可能性があることは、ほとんどの人が感覚的に理解しているはずです。

それにもかかわらず、「あなただけに教える確実な情報がある」と言われ、それを信じてしまう人がいます。SNSを通じて知り合い、顔を見たこともない、さらに氏素性も不確かな他人から提供された情報が本物であるはずなどありません。

これは金融商品に限らず、不動産でも同様です。

「今のうちに買えば、将来確実に値上がりする」といった説明がなされ、多くの被害を生んだ「原野商法」などは、その典型です。令和に入ってからは、使い道がない土地を持て余している所有者や相続人に対し、買取を持ちかけつつ新たに土地を売りつける「原野商法の二次被害」が数多く報告されています。

最近では、小口不動産への投資をかたった詐欺的な勧誘が増加しています。

典型的な手口には、「無登録・架空業者による勧誘」と「自転車操業的な運営」があります。これらの販売はインターネットやメールを通じて行われ、投資形態としてはクラウドファンディング、不動産投資信託(REIT)です。

これに対して、国土交通省は注意喚起を行っています。

どのような投資案件であっても、商品や重要事項の説明は省略できません。特に解約時の違約金や元本割れに関するリスク説明は不可欠です。にもかかわらず、「安全・確実」と説明すること自体、違法な勧誘行為と言えるのです。

SNS型の不動産投資詐欺の一つに「ポンジスキーム」があります。これは、利益を出資者に還元する名目で資金を集め、実際には運営会社や仲介者が資金を持ち逃げする手法です。初期の数回は分配金が支払われるため、出資者は安心して続けるのですが、突然分配金が支払われなくなるのです。連絡を取ろうと試みても、運営側との連絡が取れなくなり、そこで詐欺に気がつくことになります。

さらに、SNSで「格安物件」と称して写真や物件情報の詳細を公開し、実際には物件が存在していないケースや、免許を持たない業者が不動産業者を名乗って契約を結び、報酬を得る詐欺行為も確認されています。

このような一連の詐欺を防止ぐためには、以下の対策が重要です。

①情報や業者、提案者の裏付け調査を確実に行う
②業者名が明確に示されている場合でも、担当者の本人確認を確実に行う
③金銭を前払いしない(不確実性が高い場合には、金銭を振り込まない)
④怪しい話には耳を傾けない
⑤儲け話が他人からもたらされることはないと知る

これらの対策を確実に実行することで、詐欺被害を未然に防ぐことが可能になります。

ロマンス詐欺の手法

すべての人が常に理性的であるとは限りません。特に、「恋は盲目」と言われるように、恋愛感情が絡むと、時に理性を失ってしまうことがあります。ロマンス詐欺は、まさにこの人間心理に漬け込んだ悪質な手法です。

警察庁は、ロマンス詐欺の代表的な手口を以下のように公開し、注意喚起しています。

1. SNSやマッチングアプリでやり取りがスタート。

2. ある程度やりとりが進んだ後、相手から「もっと安全な方法で連絡を取りたい」などと持ちかけられ、Telegram(テレグラム)、Signal(シグナル)、WeChat(微信)など、秘匿性の高いアプリに誘導される。

※これらのアプリ自体に危険性があるわけではありません。しかし、高い機密性を有することからロマンス詐欺や闇バイト、特殊詐欺に利用されるケースが増加しています。

3. 「1日中、話していたい」、「貴方のことが好き」など、恋愛感情を引き起こさせるメッセージが送られてくる。

SNSをきっかけに恋愛関係が始まることは珍しいことではありません。むしろ現代で最も多い出会い方の一つかも知れません。しかし、SNS型ロマンス詐欺が、令和5年1月から令和6年11月までの累積件数で3,326件、被害総額が約346.4億円に達している実態を知れば、危険性が良く分かります。

例えば、「頂き女子リリちゃん」を名乗り、男性3人から1億5,500万円を騙し取った渡邉真衣被告は、上告が退けられ、2025年1月16日に懲役8年6ヶ月、罰金800万円の実刑判決が確定しました。この事件で注目すべきなのは、渡邉被告が「恋愛マニュアル」を作成し、これを販売していたことです。

このマニュアルでは、どのような言い回しやストーリー展開で金銭を巻き上げるかを解説しており、実際にそれを購入した人が1,000人に上ることが報道されています。

現在はAI技術を利用して、写真の加工や音声、動画も簡単に作成できる時代です。これにより、性別に関係なく誰でも簡単に他人になりすませます。

実際に会ったことがないのに、「二人の将来のために投資してお金を増やそう」、「会いたいから旅費を送って」、「結婚したいけれど借金があるため、それを返済してからでないと迷惑をかける」と言う甘い言葉で被害に会った事例が、毎日のように報道されています。

SNSがきっかけであることから、ロマンス詐欺は若い世代に多い犯罪だと誤解されがちですが、実際はそうではありません。

詐欺被害者を性別で区分した場合、男性が62.3%を占めているのは予測どおりです。しかし、年齢層については男性が50~60歳代、女性は40~50歳代が中心になっています。つまり、一般的に「分別ある大人」と見なされる年齢層の男女がターゲットにされているのです。

また、入口を恋愛関係として、次に投資話を持ちかけられるケースが増えており、令和6年1~6月集計では、その割合が8割以上に達しています。

ロマンス詐欺の被害者の中には、不動産を処分して資金を捻出した人もいました。

私たち不動産業者には、売却理由を問いただす法的義務はありません。売主も、告知が義務とされる内容を除き、私的な理由を明かす必要はありません。

とはいえ、相続や相隣トラブル、所有者本人であるかの確認、事故物件か否かを確認する必要があるので、その流れから売却理由を尋ねるのが一般的です。しかし、「急に現金が必要となった」と言う理由に対して、それ以上の質問をするのが難しい場合もあります。

このため、ロマンス詐欺を防ぐことは不動産業者にとって困難なのです。

しかし、もし投資話が持ち掛けられている段階であれば、状況に応じた適切な助言を行うことで被害を未然に防げる可能性はあります。

手口を知ることは大切だが……

ここまでSNS型不動産投資とロマンス詐欺を中心に解説してきましたが、これらの詐欺は「特殊詐欺」に分類されていません。

特殊詐欺の定義は、警察庁により「被害者に電話をかけるなどして対面することなく欺もうし、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪の総称」とされているからです。

オレオレ詐欺、預貯金詐欺、還付金詐欺などが典型的な例です。

これらの詐欺行為に共通するのは、年々手口が巧妙化していることです。そのため、単に手口を知って警戒するだけでは未然に防止するが難しくなっています。

例えば、最近のSNS型投資詐欺では、著名人になりすました偽の広告が出回り、それにクリックしたユーザーが被害にあうケースも増加しています。そもそも、著名人が無料で投資教室を開催したり、利益が確実に出る投資話を無料で教えたりすることなど、現実的にはありえません。

仮に、投資話が本物であったとしても、振込先として指定されるのが個人名義の口座番号であったり、度々口座番号が変更されたりするなど、通常は考えられません。

ロマンス詐欺も同様です。

実際に会ったことがない相手からお金の話が出ること自体、不自然です。また、結婚を前提に投資話を持ちかけてくることも、疑念を抱くべきサインです。

このように、「ありえない」、「不自然だ」と感じた場合は、まず一旦冷静になり、相手の主張を精査するのです。そして、信憑性について確認することが重要です。この対応を取ることで、詐欺被害の大半を未然に防止できます。

まとめ

筆者は、かつて上司から「売れば報酬が得られるのだから、売却理由なんかどうでも良い」と指導されてきた世代です。今でも、こうした考え方をする人が多いかも知れません。

しかし、顧客が詐欺に巻き込まれるリスクがあるのに、それを見過ごすことは許されません。人道的な観点からも、不動産業者の社会的責任からも好ましくない行為です。

不動産は高額な財産ですから、その取扱いに遺漏があってはなりません。売却理由を確認せず取引を進めることは、無責任であり、最終的に業者自身の信頼を失わせる結果を招きます。

もちろん、売却理由の確認に法的義務はありませんが、不自然な点があれば、しっかりと確認し、顧客に適切なアドバイスを行う責任はあります。そのような対応を徹底することで、顧客との信頼関係を築き、業者としての評価を高めることができるのです。

信頼は一度築くと強固なものになります。顧客が安心して取引を行えるよう、私たちは日々、真摯に対応することが求められています。その積み重ねが、最終的に長期的な信頼につながり、業界全体の信頼向上にも寄与することになるのです。

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