不動産情報サービスのアットホームから、私たち不動産業者にも興味深い情報が、報道各社向けとして発表されています。
調査はインターネットによるアンケート方式で、対象は学生・社会人ともに18~29歳の一人暮らしの男女となっています。
全体を通して、私たち不動産業者が参考になるデータが掲載されておりますので、詳しくは下記リンク先よりご確認ください。
at-Home_ユーザー動向調査2021賃貸編
https://athome-inc.jp/news/data/questionnaire/hitorigurashi-202111/
今回のコラムでは防災情報に焦点をあて解説しますが、公開データの見出も下記のような目を引くタイトルになっています。
画像_at-Home_ユーザー動向調査2021賃貸編_報道資料データより
不動産取引時「水害ハザードマップにおける対象物件の所在地説明」については2020年7月17日から義務化されているのは、皆様ご存じの通りです。
不動産取引に該当するのは売買取引だけではなく、賃貸なども含めて全てですので、宅地建物取引業法を遵守していれば重要事項説明書に記載されているはずだが……と思いながら全体を読み進めました。
どうやら、部屋探しの段階から防災情報を意識して選ぶ傾向が高まっているということのようです。
このことから、賃貸住宅に関して今後の広告掲載方法について検討する材料となります。
また、調査対象者が結婚するなどして不動産を購入する際にも嗜好性は引き継がれるでしょうから、若い世代の意識変化を知るうえで参考になる調査結果です。
画像_at-Home_ユーザー動向調査2021賃貸編_報道資料データより
公開されているのはアンケート結果をまとめたデータと、意識変化についての短いコメントのみです。
そこで、今回は公開データを参考に考察を加え、今後の広告や物件資料の作成に関しての方向性も模索しながら解説していきます。
防災意識の変化
データを見ると部屋探しの際に防災を意識する傾向は、前回調査の2019年から上昇し、全体平均で44.85%にまで及んでいます。
さらに地域の避難場所やハザードマップ情報を部屋探しの段階から、つまり入居を決定する前までに、全体平均の68.25%が「知りたい」と回答しています。
もちろん学生と社会人、男性と女性により回答にバラつきはありますが、2019年の調査結果と比較した場合に学生は3.4%、社会人は14.4%、社会人の中でも女性は15.1%上昇している結果を見ると、男性よりも女性の防災意識が高くなっていることが伺えます。
画像_at-Home_ユーザー動向調査2021賃貸編_報道資料データより
募集広告の現状は
売買を含め物件を探す際に顧客は、少なからず不動産ポータルサイトを利用しています。
賃貸不動産のポータルサイトには、調査データを公開しているアットホームのほか、SUUMOやホームズなどの大手を筆頭に様々なものがあります。
画像_at-Home_ユーザー動向調査2021賃貸編_報道資料データより
過半数以上が利用する不動産ポータルサイトや検索サイトですが、基本的にどのサイトでも間取りや物件概要、周辺環境として病院やコンビニなどの情報、サイトによっては近隣住民による口コミ情報なども掲載していますが、防災情報を掲載しているサイトは見受けられません。
売買のサイトの一部では、防災情報サイトと紐づけしているケースも見受けられますが、全体を通して積極的に公開されているとは言えないのが現状です。
やはりハザードマップなどの防災情報は、場所により河川の氾濫や地盤の軟弱性などの「負」の情報であり、そのようなネガティブ情報を掲載するのは利点が少ないとの発想からでしょうか?
これからは防災情報掲載が必須の時代になる
これだけ防災情報を求めている顧客が多いのに、不動産ポータルサイトでは積極的に防災情報を掲載していない現状が確認できました。
不動産ポータルサイトの掲載事項を変更することは私たちにはできませんが、自社のホームページの掲載方法を変更することはそれほど難しいものではありません。
顧客が利用しているのは大手の不動産ポータルサイトばかりではないからです。
下記の検索先分類に関してのグラフを見ても、上位に不動産業者のホームページが位置しています。
画像_at-Home_ユーザー動向調査2021賃貸編_報道資料データより
物件ごとに防災情報を紐づけるのは時間や手間もかかるでしょうが、公的に公開されているハザードマップ等をリンク先として紐づけておき「物件の防災情報を知りたいかたはこちらをクリック」などとしておけば、興味のある顧客はそこからリンクして調べてくれるのではないでしょうか?
防災情報お薦めリンク先
ここでは目的別に、筆者がオススメする防災関連サイトをご紹介します。
防災情報マルチモニタ
https://www.river.go.jp/portal/?region=80&contents=multi
国土交通省が「気象・水害・土砂災害」について、リアルタイムに防災情報を発信しえいるサイトで、地点登録しておけば、大雨が降ったときの河川状況などが監視カメラによる画像で確認できます。
ハザードマップポータルサイト
洪水・土砂災害・高潮・津波のリスク情報、道路防災情報、土地の特徴などが、地図や写真を自由に重ねて表示することができますので、顧客提示用の資料作成にも利用できます。
また各市町村で作成されたハザードマップへもこのサイトからリンクできますので、他府県の物件に関しての防災情報も、これひとつで確認できます。
指定緊急避難場所
国土地理院地図と連動している下記サイトが最適でしょう。
https://www.gsi.go.jp/bousaichiri/hinanbasho.html
災害時には、洪水・がけ崩れ・高潮・地震など震災種別により緊急避難場所がことなります。
このサイトではそのような震災種別ごとの緊急避難場所を一覧で確認できます。
避難施設を探す
全国にある避難場所を検索するには、内閣官房の国民保護ポータルサイトが利用しやすいでしょう。
https://map.kokuminhogo.go.jp/p/kokuminh/
まとめ
ネガティブ情報を可能な限り公開したくないというのが、社会通念上の暗黙知ですが、防災情報の提供はそれに当てはまりません。
むしろ災害の際に人命にかかわる情報は、積極的に公開するべきでしょう。
もちろんネガティブに表現する必要はありません。
過去の災害履歴や、何かあった時の避難先など顧客が求める情報を公開するだけです。
営業マンの信頼度や好感度について、購入者にアンケート調査をすると「リスクも含め詳細に教えてくれたから」などの意見が目立ちます。
実際に入居して生活するのは顧客自身です。
ですから利点も含めて防災情報を予め知り、入居場所を検討したいと思うのは必然でしょう。
私たち不動産業者も思い込みを捨て、防災情報を積極的に公開する、あるいは説明することにより顧客の信頼を勝ち得ることができ、実績につながるのではないでしょうか。