【相続や離婚の家事調停でオンライン導入開始!!】不動産業界に与える影響は?

最高裁は令和3年12月中旬以降から東京・大阪・名古屋・福岡の四地域において「離婚・相続」などに用いられる家事調停をオンライン化する試験的な取り組みを開始すると発表しました。
この最高裁のプレスリリースにより報道された、下記の記事から概要を確認することができます。

朝日新聞デジタル【離婚や相続のトラブル解決の「家事調停」、ウェブ会議でオンライン化】として下記から
https://www.asahi.com/articles/ASPD25TN1PD2UTIL00X.html

NHKでは【「家事調停」で試験的にウェブ会議導入 利便性向上などに期待】として、模擬ウェブ調停の動画つきで報道しています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211203/k10013372031000.html

家事調停,NHK

画像_NHK報道資料より

不動産業界における重要事項説明のオンライン化が全面解禁されたのは記憶に新しいところですが、報道内容を見る限りにおいては、このIT重説と近い感覚で調停制度が利用できるようです。
最高裁判所によると、今回の試験運用により情報漏洩など、想定される問題の解決方法を模索しながら集成し、いずれ全国の裁判所で利用できるようにするとしています。
ご存じのように「家事調停」は、裁判官と民間の調停員、そして当事者が話し合い「相続・離婚による財産分与・遺産相続」の問題を解決する手段として、原則は非公開で行われます。
本格的な裁判とことなり、調停費用も割安であることから申請件数も多く、昨年だけで約13万件(全国)がおこなわれています。

法曹関係者からも「ウェブ調停により利便性がさらに高まり、迅速な解決に役立つ」として歓迎されている一方、当事者のなりすましや、非公開が原則の調停内容が録音されて外部に流出する可能性が指摘されるなど、課題も多いとされています。
ですがウェブ会議はすでに広く浸透しており、ウェブ調停における問題が早期に解決され、全国で利用される日はそう遠くないでしょう。
ウェブ調停が本格化すれば、私たち不動産業者が相談を受け対応する、相続問題を早期に解決して販売につなげることや、離婚による財産分与が速やかに実施されることによる恩恵も多くなるでしょう。

反面、私たち不動産業者が介入した相続案件などでトラブルが生じた場合、調停申請が容易であることから当事者が調停に臨み、そこで不成立となった場合には通常裁判に移行して巻き込まれるといった危険性が上昇する可能性もあります。
今回は、家事調停とは何かといった基本的な部分から申請方法、それによりウェブ家事調停制度の全容を知ることを目的として解説します。

 

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そもそも家事調停とは?

家事調停とは冒頭で解説したように、夫婦・親子・親戚などのトラブルを家事裁判官と民間から選ばれた調停委員の2人以上で構成される調停委員会が、当事者双方の事情や意見を聞き、問題が解決できるよう助言や斡旋をおこないます。
調停は原則として非公開で、あくまでも話し合いで解決を目指す制度です。
家事調停は、取り扱う事件の内容により3つに分かれ、家事事件手続法別表第2掲げる事項に関する調停(別表第2調停)・特殊調停・一般調停となっています。

●別表第2調停
親権者変更・養育費の請求・婚姻費用の分担・遺産分割協議●特殊調停
協議離婚の無効確認・親子関係の不存在確認・嫡出否認や認知●一般調停
別表第2調停を除いた家庭に関する紛争事件。離婚・夫婦関係円満調整など。

また裁判所のホームページでは「ご存じですか?家事調停」とのタイトルで、下記URLで10分程度の動画を公開していますので、併せてご覧いただければ制度への理解が深まるでしょう。

https://www.courts.go.jp/links/video/kajichoutei_video/index.html

家事調停の特徴は

調停委員会はあくまでも助言や斡旋をおこなうのに留まり、当事者の話し合いにより解決を目指すのが調停制度ですが、裁判と比較して下記のような特徴があります。

解決が早い

調停は1回につき1~2時間程度で、月に1回のペースで開催されます。
各回の終了時や開始時に、調停委員会から当日の成果、対立点、次回期日までの課題、進行予定などについて説明されます。
平均的には1~3回程度で合意に至っています。

調停回数の制限はありませんが、回を重ねても合意に至る可能性が低い場合、もしくは合意が適切ではないと認めた場合には、当事者が継続を希望しても調停委員会が調停不成立として決定をします。
調停委員が中立の立場でそれぞれの当事者から話を聞き、一方の意見を他方に交互に伝える方式で行われますが、事案によって双方一緒に聞き取りを行う場合もあります。
原則として話は別々に聞き取る形をとることから、当事者同士が感情的になり直接言い争いになる可能性は高くありません。

調停成立は裁判判決と同じ効力を持つ

調停による話し合いの結果、まとまれば調停成立となります。
調停により双方が納得した合意内容は調停証書としてまとめられますが、この調停証書に記載された内容は裁判の判決と同じ効力を持ちます。
ただし調停は話し合いにより合意を目指す手続きですから、不成立となった場合に手続きは終了し、子の監護(養育費・子供の面談)・親権者の指定・変更・婚姻費用(生活費分担事件)など一定の事件については、自動的に審判手続きに移り、審判(裁判)により解決を図ることになります。

家事事件
それ以外の事件による調停不調和については、家庭裁判所に訴えを提起することにより、訴訟による解決を図ることができます。

費用が安い

申立費用は1件¥1,200円です。
弁護士を依頼した場合や証拠調べのために必要な費用などが発生することもありますが、それらは当事者が調停内容を勘案して選択するものですから、いきなり裁判を提起するよりも費用が安くなる可能性が高まります。

調停の裁判所管轄

調停申立書の管轄は、基本的に相手方の住所地を管轄する家庭裁判所になります。
調停申立書は下記の裁判所ホームページから、基本的な書式をダウンロードすることができます。

https://www.courts.go.jp/otsu/saiban/tetuzuki/kateisaibannsyo/vcmsFolder_1383/vcms_1383.html

*上記のアドレスは甲府地方裁判所により公開されている書式ページです。調停管轄の都道府県により書式が変更されていることはありません。裁判所のメインページは_https://www.courts.go.jp/index.html_になります。

家事調停,申立書
離婚の他、後見関係・相続放棄・相続限定承認など家事調停で扱う基本的な書式がダウンロードできます。

ウェブ調停によりさらにスムーズになる

最高裁判所の報道発表では「本格導入は未定」としていますが、民事裁判のIT化により2021年2月から争点整理などに限定した非公開審理をウェブ会議でおこなう制度の導入が全国の地裁に広がっています。
ですから現状では限定的に開始されるウェブ調停も、全国の裁判所で適用可能になるのは、そう遠い日ではないという意見が有力です。
また不動産売買契約書でも約款に記載されている「裁判管轄合意」については皆さんご存じかと思いますが、家事事件手続法245条で、家事調停についても管轄合意は認められています。

つまり、管轄外であっても当事者双方が、試験的導入を開始した東京・大阪・名古屋・福岡のいずれかの利用について合意すれば、ウェブ調停の利用が可能だということになります。
具体的なウェブ調停の方法については、執筆時点でそれほど多くの情報が公開されていません。
当事者は自宅もしくは弁護士事務所から、裁判官及び民間の調停員は裁判所から参加する方法になるようです。

またIT重説と同じく本人確認のために、カメラに向けて運転免許証等、本人確認書類の提示をするほか、ウェブカメラで部屋全体を映すようにして、第三者の居室への侵入を防止するなどが条件とされています。
調停は原則として非公開であり、弁護士以外を除き当事者以外の参加は認められません。
もちろん調停不調和を見越して画像を録画するなどの行為や録音など、裁判に移行した際に利用しようとする行為のほか、外部への漏洩なども厳しく罰せられます。

安易に弁護士を加入させない

裁判による解決を図った場合、長期化する可能性が飛躍的に高まります。
あくまでも筆者の見解ですが、弁護士事務所に所属していない若手弁護士はすぐに訴訟に持ちこむ傾向が高いと感じます。
司法試験合格と同時に独立する弁護士を、即弁(ソク弁_弁護士事務所などに採用されず、すぐに独立した弁護士)とよび、そのほかに軒弁・イソ弁(司法の独立性から、弁護士事務所に所属しているが、受任はあくまで個人)などがおり、ドラマなどでもよく耳にする用語だとは思いますが、そのような弁護士は顧問の企業先を有している訳でもなく、また知名度の不足から相談件数が多いとはいえません。

昔は取得すれば一生安泰とされたプラチナ資格ですが、現在はそうでもないようです。
その理由が、1999年の司法制度改革により日本版ロースクールである「法科大学院」が設置され、弁護士の数が今日まで増加したことにあるようですが、増加したとはいっても2021年12月1日現在の登録数によれば43,030人程度です。
歯科医まで含めた医者の数は約400,000人(厚生労働省2008年データ_現在は数が上昇していると推察される)ですから、せいぜい10%前後でしかありません。
ですが裁判件数は弁護士の数ほど増加しておらず、令和元年も含めた過去5年間の推移を見ても、年間350~360万件程度です。

全裁判所,事件

この数を弁護士の人数で割り返せば、一人当たり90件前後となるのでしょうが、古参弁護士や大手弁護士事務所への偏り、また「国選」が割り当てられていることなどを勘案すると、実績のない若手弁護士がどの程度、事件を扱えているのか疑問です。
異業種交流会などに参加すると、若手弁護士が必死に営業活動している姿を見かけます。
そのような弁護士から話を聞くと、経済的にも実情は大変なのだとか。

ですから初回相談を無料として、相談者を増やし、営業トークにより「勝ち負け」を度外視して裁判に持ち込み、長引かせれば少なくても着手金を始め各種請求が出来るのですから必死でしょう。
そのような弁護士から見れば今回の記事は余計であり、裁判外の和解提案などもってのほかかも知れません。
むろん高い志をもつ法曹関係者が圧倒的に多いのは間違いがないのですが、間口を下げて相談者を募り、事件に持ち込む弁護士も存在していることを私たちが理解して、相続や離婚による不動産売却相談が寄せられ、説明をしても「弁護士に相談してから……」などと言われた場合には、自身が信頼できる弁護士を紹介するほか、一言、添える必要があるかもしれません。

まとめ

離婚を契機とした不動産売却相談。
また相続が絡んだ売却相談の場合には、あくまでも当事者間の持ち分割合や、持ち分などの範囲が確定していなければ販売活動はできません。
相談があっても、当事者同士が持ち分などで争っている場合にはいつ決着がつくのか分からず、弁護士のように当事者の代理人として介入することができない私たちは、事の成り行きを見守るしかありません。

早期解決を目指すのであれば、裁判所へ出頭しなくてもおこなえるウェブ家事調停は利用もしやすく、早期解決に期待が持てます。
私たちは直接介入できなくても、経験豊富な調停委員会が間に入り、専門的な見解から助言や斡旋をしてくれるのですから、早期解決の可能性が高まります。
当然に、そのような提案をした不動産業者も信頼を得ることになり、調停が成立した後の不動産売却などの依頼につながることが期待できるでしょう。

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