不動産の管理では、建物を使用している人のさまざまな問題に対応してゆかなければなりません。
地主や物件所有者である賃貸人と、建物を借りて生活している賃借人との間に入って、トラブルに対処してゆきます。
土地や建物を借りるときに起きる問題を解決するため、貸す側・借りる側にそれぞれ、どんな権利や義務があるのかについて説明します。
借地借家法(しゃくちしゃっかほう)
土地・建物の賃貸借において、貸す側・借りる側の権利や義務を定めたものに借地借家法があります。
借地借家法とはどのような法律なのでしょうか。
借地借家法とは
モノの貸し借りについて民法で定められていますが、民法では借主と貸主が対等に設定されており、実際には、貸主が優位に立つことが多くなります。
土地を借りて、その上に自分の家を建てたり、建物を借りて家財道具を運び入れて住む場合は、多くの費用が発生し、ある程度の借主保護が必要となります。
借地借家法は、土地や建物を借りるルールを定めた法律で、借主を保護するために作られました。
そのため、土地や建物を借りる場合には、民法に同じ項目がある場合は、借地借家法が優先されます。
借地権の地上権と賃貸借権
借地権には、「地上権」と「賃貸借権」があり、地上権で他人の土地を利用することもあります。
賃借権と地上権との違いは、賃借権が契約による「債権」であるのに対し、地上権は所有権と同じ「物権」になります。
地上権は「物権」であるため登記することができ、地主は地上権の登記に応じる義務があり、登記した地上権は新しい所有者にも主張できます。
賃借権も登記できますが、地主はこれに応じる義務はなく、第三者に譲渡されれば、新所有者に賃借権は主張できません。
それでは賃借人は安心して住めないため、借主を保護するために、特別に一定の対抗力が認める法律が借地借家法です。
譲渡に関しては、地上権は第三者に譲渡できますが、賃借権を譲渡するには地主の承諾が必要で、無断譲渡は賃借権の解除要因となります。
借地権とは
借地借家法では、借地権と借家権があります。借地権とはどのような法律なのでしょうか。
借地権と存続期間
借地権とは、建物を建てるために土地を借りる場合に発生する権利です。
いっぽう、駐車場や資材置き場に土地を借りる場合は、借地権の対象にはなりません。
土地を借りて家を建てるための土地使用であるため、借主を守る必要があり、借地借家方では、借地権の期間を最低30年と定めています。
10年の期間を定めたり、期間を定めなかったりした場合は、30年とみなされます。
また、30年以上であれば、35年、40年などの期間を定めることもできます。
借地権の更新
借地権の更新には、「合意更新」「請求更新」「法定更新」があります。
「合意更新」では、双方の合意により、建物があってもなくても更新され、最初の更新は20年以上、それ以降は最低10年以上となります。
「請求更新」は、建物が残っている場合、地主の承諾なしでも借地権者は更新請求できますが、地主は正当な自由を持って異議を述べることができます。
「法定更新」とは、借地上に建物が残っていて、地主が正当な自由で遅滞なく異議を申し立てなかった場合、合意更新のように自動的に更新されます。
実際には、期間経過後も建物が残っていることが多く、「借地権の更新」をめぐりトラブルが多くあります。
所有者が土地を第三者に売り、その土地を買った人が土地の明け渡しを受けることができないなどの場合、裁判にまで発展することがあります。
借地条件の変更と増築許可
借地条件で、「建物は木造平家建てに限る」などの、構造や規模の条件がある場合は、建て替えて変更するには地主の承諾が必要です。
しかし、裁判では、その建て替えが、土地利用規則の変更・付近の状況変化で相当と認められる場合は、裁判所は変更を認めることができます。
また、増改築を制限する条件がなければ、既存の住宅を増改築するのに、地主の同意は必要とされません。
土地の通常の利用で相当と判断される増改築においては、裁判所は借地人の申し立てに対して、地主の承諾に変わる許可を与えることができます。
地主は、裁判所の判決があれば、借地人の主張を認めざるおえない状況があります。
このように、借地借家法では、地主よりも借主を保護するようになっています。
借家権とは
不動産の賃貸業務では、借家権が重要になってきます。借家権とはどのような法律でしょうか。
借家権とは
借家権とは、建物の賃借権を意味し、一軒家でなくても、マンションの専有部分の賃貸権も含みます。
また、利用目的が倉庫・店舗・事務所でも、借家権の対象となります。
借家権の期間は自由に設定でき、設定しないこともできます。
しかし、1年未満の契約は短すぎるので無効となり、期間の定めがない契約とみなされます。
借家権の存続期間
借家契約の期間が満了し、賃借人が更新を望んでいる場合、賃貸人が拒否すると借主が困るため、自動的な更新(法定更新)が認められています。
貸主は契約を終了するには、賃借人に対して、期間満了の1〜6ヶ月前までに、期間終了を通知しなければなりません。
遅滞なく通知しなければ、同じ条件で契約更新されたとみなされます。
また、貸主が、期間終了の解約を申し入れるには、自分がその家に住まなければならなくなったなどの、「正当な事由」が必要です。
借主には、退去するために、「正当な事由」で解約の申し入れをした日から、6ヶ月の猶予が与えられています。
賃貸借契約で借りている建物が、第三者に売却された場合、「建物の引き渡し」を受けていれば、第三者に対して賃借権を主張することができます。
定期建物賃貸借
賃貸人が、契約更新を拒絶したり、解約を申し入れたりするには、正当な理由が必要になります。
そのため、一度賃貸借契約を結ぶと契約を終了させることが非常に難しくなります。
それではあまりにも貸人が不利になるため、定期建物賃貸借という制度があります。
定期建物賃貸借とは、契約の更新がないことを特約にした建物の賃貸借です。
定期建物賃貸借契約を結ぶには、貸主は借主に契約時に、公正証書による書面などで説明することが必要です。
次の契約更新がないこと、期間満了で賃貸借契約が終了することを、賃借人に明確に説明します。
また、期間満了の1〜6ヶ月前までに、賃貸人は賃借人に、期間の終了を通知する必要があります。
貸賃の増減請求
近隣の同様の建物の賃料に比較して、不当に安くなったり、その他の理由で市場価格にそわなくなったりした場合は、貸主は賃料の増額を請求できます。
貸主は、契約の条件にかかわらず、将来に向かって、賃料の増減請求ができます。
「将来に向かって」とは、既に支払われた過去の賃料までさかのぼってまで、増額請求できないと言う意味です。
まとめ
民法では、モノの貸し借りで、貸手の方が強い立場にあるため、住居に関して住む人を保護する必要があり、借地借家法が作られました。
そのため、借地借家法では、借り手の方が優位になるように法律が制定されています。
不動産の賃貸借では、土地・建物の所有者と居住者のトラブルが、裁判に発展することも多いのが現実です。
借地借家法の基本を理解し、不動産管理におけるトラブルを冷静に対処できるよう努めましょう。