スマートホームは入居率アップに効果があるか?

「スマートホーム」と表示される注文住宅・分譲住宅・賃貸住宅を見かけるようになりました。

空室対策にスマートホームを採り入れた事例なども紹介されています。

住宅ユーザー自らが、さまざまなIoT機器やアプリを駆使して、きわめて便利な生活空間を実現させた実例もあります。

賃貸経営を行うオーナーや管理会社も、スマートホームに無関心ではいられません。

ここではスマートホームの現状と今後の可能性に触れながら、スマートホームを経営戦略のなかでどのように捉えるかについて私論を展開してみます。

スマートホームとは

建物のなかの電化製品などをインターネットやブルートゥースあるいは音声により、スイッチの入り切りやコントロールを可能にした住宅です。

電化製品などをスマートフォンや音声でコントロールできるようにすることを「スマート化」と言い、現在次のようなものがスマート化されています。

・玄関の鍵
・テレビドアホン
・照明器具
・エアコン
・スピーカー
・カメラ

スマート化されたアイテムを住宅に採り入れ「スマートホーム」として事業化した例としては、以下のような住宅があります。

・スマートサービス「MANOMA」を採り入れたSREホールディングスの「AIFLAT」
・スマートスピーカー「Google Home」を採り入れた大和ハウス工業の「ダイワコネクト」

さらにスマートホームを採り入れた大手賃貸住宅には、次のような例があります。

・「Leo-LINK」を提供するレオパレス21
・「DK SELECTスマート賃貸」を提供する大東建託
・「Alexaスキル」を提供するアパマンショップ
・「Shinoken Smart Kit」を提供するシノケングループ

スマートホームは賃貸市場で広まるのか?

上記のように賃貸大手ではすでに導入されたスマートホームですが、一般オーナーの賃貸物件ではまだ浸透はされておらず、賃貸物件のポータルサイトでスマートホーム対応の物件を検索しようとしても、まだ「IoT」などのキーワードが設定されたサイトはありません。(2021年4月時点)

スマートホームで可能となる機能は、今後増えていくと思われますが、現在使える機能のなかでニーズが多いだろうと思われるのは「スマートロック」でしょうか。

スマートホームにより得られる “便利さ” は、体験しなければわからないものであり、体験したことのない人に説明をしてもなかなか伝わらないものです。

賃貸住宅を探す人たちの間にスマートホームの体験者が増加し、ニーズとして顕在化するまでは広まらないと考えられます。

ではスマートホームに対するニーズが顕在化するのはいつでしょうか?

スマートホームを必要とする社会への変化

2020年から2021年この期間を中心にした数年間で、社会を大きく変化させるキッカケが作りだされました。

そして変化は具体的に次のような結果を生んでいます。

・テレワークの浸透
・週休3日制のスタート
・副業の奨励
・多拠点生活
・メディア多様化
・ホームスタジオの普及

生活の場であった住宅にはワーキングスペースが必須のものとなり、さまざまなデバイスを活用するシーンが日常でのあたり前なスタイルになってきます。

そのような生活に必要とされるものは「効率性」「同時性」「簡易性」「確実性」などの機能を持つ、利便性を備えたデバイスです。

まさにこれが望まれるIoTでありスマートホームと言えそうです。

より安心に生活ができそして効率よく仕事ができる、ライフとワークを同じ空間で簡単に切替えできるデバイスを、必要とする社会が訪れるように思えます。

スマートホームの実例

2017年に設立したスマートホーム・ソリューションを開発する「株式会社アクセルラボ」のこれまでの歩みをご紹介します。

・同社は不動産投資・マンション投資サービスを行なう、株式会社インヴァランスの物件をIoT化する部署として2016年12月スタートし、ホームIoTアプリ「alyssa」をリリース
・翌2017年7月アクセルラボを設立、10月にはアメリカのBrain of Things社のスマートホームAI「CASPAR」を導入し、インヴァランス社のAI搭載分譲マンション事業をサポート
・2018年2月、不動産管理会社とオーナー向けの物件サポートアプリ「alyssa.cloud」と、消費者用アプリ「alyssa.play」をリリース
・2019年8月にはスマートライフ・プラットフォーム「SpaceCore」をリリースし導入戸数が7千戸を突破
・2020年1月、家具・家電レンタルサービス「Kariru」の提供開始
・2020年6月には「Works With SpaceCore」を開始し、国内外のIoTデバイスとのオープン連携を図る
・2020年10月、インヴァランス社との資本提携を解消して、大東建託と資本業務提携により「SpaceCore」導入戸数を1万6千戸達成

出典:ACCEL LAB「History」

「SpaceCore」が対応するデバイスは現在、以下のラインナップがなされています。

・スマートステーション:各種デバイスの連携機能を持たせるゲートウェイの役割をするスポット ミニ:テレビ・エアコン・照明の操作を行う赤外線コントローラー
・環境センサー:室内の温度・湿度・照度を感知して家電を動作させる
・クリッカー:家電や照明の操作クリックで行なう
・ドア・窓センサー:ドアや窓の開閉を検知し自動ON/OFFとスマホへの通知を行なう
・モーションセンサー:動くものを検知して照明やエアコンのスイッチをON/OFFする
・フレーム カメラ:Wi-Fi接続できるネットワークカメラ
・ダナロック ブイスリー:施錠や解錠をリモート操作するスマートロック
・ダナパッド:ダナロックと連携して暗証番号で施錠や解錠を行うスマートキーパット
・モーションセンサー付調光スイッチ:動体検知や遠隔操作できる調光照明スイッチ
・カーテン モーター:カーテンを電動で開閉する
・HA 端子アダプター:床暖房や給湯器などをまとめて操作できる
・ネイチャー:住宅内で接続されたスマートホーム機器の集中管理をおこなう
・アウトドアカメラ:外部の音やセンサー検知もする屋外用カメラ
・LEDバルブ:スマートフォンからコントロールできるLED照明ライト
・スマートシーリングライト:スマートフォンから無線LAN経由で、照明器具・エアコン・テレビを操作する照明器具、温度・照度センサー付き
・スポット:エアコンやテレビを操作するコントローラー、LED照明としても使用できる

出典:SpaceCore

スマートホームの賃貸経営上の効果

スマートホームは住宅のひとつの類型として、社会的に認知されるようになると思われます。

車にガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車とあるごとく、性能・機能面でそれぞれ違いがあります。

「脱エンジン」といったワードを目にすることもありますが、電気自動車がエンジン車にとって代わるかというと、そう一朝一夕に変化するようには思えません。

住宅にも「スマートホーム化」へのムーブメントは起こりますが、需要構造を大きく変化させるほどにはならないように思えます。

スマートホームを賃貸住宅に導入するには、アイテムの選び方により少ない費用で済ませられる可能性があります。

スマートロックなどからスタートさせて、少しずつアイテムを増やしながら、入居率を検証してみるのもよいのではないでしょうか。

ITやICTとの関りがすべてのビジネスで必要になった時代です。

賃貸経営も社会の動きや変化に敏感に反応し、戦略を常に考えなければならないと言えるでしょう。

まとめ

スマートホームとよく似た言葉に「スマートハウス」があります。

スマートホームはIoTがベースにあり、家具・家電・インテリアまでもがデバイス化され、アプリケーションによる連携が便利な生活を実現させる住宅です。

対してスマートハウスは、概念としてはスマートホームより以前に生まれており、省エネルギーを軸にしてシステム化された住宅全体のイメージと捉えられます。

スマートホームはアプリとデバイスの開発が今後もつづき、もっともっと便利なものが生まれてきます。

なかには入居者に絶対喜ばれるようなアイテムが出てくるかもしれません。

常にアンテナを張り新しい情報には敏感になっていたいものです。

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