平成12年より施行された定期借家制度。あらかじめ賃貸借契約の期間を定めておき、期間が到達したら、更新することなく賃貸借契約が終了するという契約制度です。
定期借家制度を利用することでどのような人にメリットが生まれるのでしょうか?
定期借家制度における大家側のメリットについて、詳しく解説していきます。
定期借家制度はどのようなケースで利用される?
あらかじめ賃貸借の契約期間を定めておくと大家にとってメリットがあるケースがいくつか考えられます。
定期借家制度を利用すると大家側にメリットがあるのは以下のようなケースが考えられます。
・滞納の恐れがある
・戸建て賃貸や区分マンションの場合オーナーの転勤
この3点について解説しましょう。
解体予定の築古物件は定期借家制度を使おう
大家さんがそろそろ建て替えを考えている物件には、定期借家制度が有効利用できます。
例えば5年後に建て替えを考えている場合、普通借家で契約をしていると、建て替えのために解体する際に、立ち退きを行わなければいけません。
立ち退きは非常に厄介な業務で、入居者と立ち退き費用の交渉や、引っ越し先の確保といった問題が発生します。
そこで、建て替えの時期までの定期借家契約にすることで、立ち退き費用の交渉や、引っ越し先の確保といった労力を減らすことができます。
先日、築古物件の今後の運用方針について相談を受けたことがありました。建て替えを推奨しましたが、大家の悩みは、立ち退きの問題です。
そこで、今後の入居に関しては定期借家契約を提案したところ、大家さんは定期借家契約のことを知らなくて、信頼を得ることができました。建て替えを決めている物件に関しては、定期借家契約が、非常に効果的です。
滞納の恐れがある入居者には定期借家契約が有効
滞納が疑わしい入居者と契約するときに定期借家制度を利用する方法もあります。
不動産経営において大きな問題のひとつが家賃滞納です。
家賃滞納を防ぐ手段の一つとして、入居審査を厳しくする方法が考えられます。
しかし、入居審査を厳しくするということは、空室が決まらないというデメリットも抱える諸刃の剣です。
私も、入居審査を行うときに滞納と入居のバランスで非常に苦慮した経験があります。
そこで、1年程度の定期借家契約にして、家賃の入金状況をチェックしながら、滞納があった場合は1年後に解約して被害を最小限度に抑えることが可能なのです。1年間大きな問題がなければ、契約終了時に普通借家契約で再契約すればいいので家賃滞納のリスクを抑えることができます。
転勤で一定期間だけ部屋を貸したいときには定期借家制度が有利
大家が転勤によって部屋を賃貸したいときに、あらかじめ転勤の期間だけ貸したいときは、定期借家制度が有利です。普通借家契約だと、転勤から戻ってきたときに退去してほしいとなると、借主の都合も考えないといけません。
また、立ち退きに関しての費用負担の可能性もあり、転勤の期間が決まっているときには定期借家制度を利用する方法がベストです。定期借家契約制度が施行された以降、転勤中の住居で積極的に定期借家制度が利用されています。
定期借家制度は入居者や部屋探しの希望に利用できる
入居募集のとき、条件変更の希望があった場合、定期借家制度をうまく組み合わせることで入居の要望を叶え、契約へと結びつけることができます。
どのような希望があると、定期借家制度を組み合わせることができるのでしょうか?
入居希望者から要望がある、3つのケースについて解説していきましょう。
ペット可物件に切り替えるときには定期借家制度を利用しよう
ペット可物件において、定期借家契約が有効的です。
入居希望のお客様の中にはペット可物件を探しているけどもなかなか見つからずに困っている人もいます。そのようなお客様の希望を、定期借家制度を利用してペット可物件に切り替えることができます。
ペット可物件に切り替えるとき、大家さんの悩みは
・ペットが部屋を荒らすリスク
などを挙げることができます。
そこで、ペットを飼う入居者に対しては1年程度の定期借家契約にして様子を見てみましょう。
問題があれば、1年後に解約すればいいでしょうし、問題がなければ1年後に再契約すればいいのです。
私は、空室が多い物件でペット可物件への切り替えを推進する際に、定期借家制度とセットで提案していました。大家さんですら定期借家制度の認識がない人が多く、「そこまでリスクを考えてくれるのか」と逆に感謝されたこともあります。
ペット可物件に切り替える際は、是非定期借家制度を活用したらいかがでしょうか。
家賃の減額を一定期間に抑えたい大家にも効果的
一定期間の家賃減額で契約する場合も、定期借家契約が効果的です。入居希望のお客様から家賃の減額交渉があるときに、定期借家契約を使った契約にすることで一定期間の減額で家賃の減額を抑えることができます。
普通借家契約で契約してしまうと、その入居者が契約している間は、減額した家賃しか家賃収入として得ることができません。
しかし、繁忙期までの間、減額した家賃での定期借家制度を利用する、1年限定などで定期借家契約を交わすなどいくつかの方法で、家賃の減額を一定期間に抑えることができます。
契約期間を限定することで家賃減額損や空室損を減らすことができることも定期借家制度のメリットです。
住居用物件の事務所使用も定期借家制度を使いましょう
居住用の物件を事務所として借りたいという要望もちらほら見受けられます。このような場合でも、定期借家制度が有効活用できます。居住用物件で、事務所使用を認めることによる心配事は、既に居住用として入居している人とのトラブルにならないのかという点です。
トラブルの原因として事務所に不特定多数の人が出入りするなどの理由が挙げられます。このような場合も、定期借家制度を利用して一定期間の契約期間と定めておくと、既存入居者とトラブルになった場合、契約を終了させることが可能です。
定期借家契約期間に、大きな問題がなければ、終了後再契約ができます。
まとめ
定期借家制度は、まだまだ知られていない分、管理会社として、大家にメリットがある定期借家制度の活用方法を提案できると、信頼度が一気に増します。管理会社の中でも、規模が小さい管理会社は、定期借家制度を利用したことがないケースもあるので、いかにうまく活用するかで管理会社の差別化を図ることも可能です。
一旦定期借家契約で契約していても、契約終了後再契約も可能なので、非常に使い勝手が良い契約ともいえます。定期借家制度を有効活用して、管理の質を上げ、オーナーからの更なる信頼を勝ち取りましょう。