かつて中国最大の不動産大手であった恒大集団(エバーグリーングループ)で過剰債務問題が深刻化してます。積極的な先行投資によって2兆円のドル建て債券を含む11兆円を上回る有利子負債を抱えており、さらに中国当局によって不動産会社への融資が大幅に規制されて経営が悪化しています。習政権に対し批判的な態度をとっているとされる同社に対して当局が救済処置を施すかは不明瞭であり、債務不履行つまりデフォルトの懸念が生じています。中国国内の金融システムを不安定化させる事態を警戒し、当局は指導に乗り出しています。
ロイター通信によると、13日には広東省深圳(シンセン)にある同社の本社オフィスビルに100人近くの投資家が押し寄せ、株式や債権の償還などを求めたということです。インターネット上では経営破綻説も出回っており、巷を騒がせています。
恒大は同日声明を発表し、「破産するという情報がネット上で出ているが、事実ではない。」と経営破綻の噂に関しては否定しました。その一方で「現在、会社はかつてない困難にぶつかっている」ことを認め、危機的状況にあることを訴えました。
万が一恒大集団が破綻した場合、その影響は単なる中国バブル崩壊の序章にはとどまらないと考えられます。現在中国当局では「国家共同富裕」を実現しようとする動きがみられており、資本家倶楽部と化していた共産党を再び農人と労働者の政党に戻すことで富裕層からの富を奪い全ての層に与え分ける、文字通りの「革命」のトリガーとなるかもしれません。こうした中国の階級変化は当然中国経済の構造を一気に再編させ、世界経済への影響も計り知れないと考えられます。
恒大集団は1996年に広東省で創業して以来、中国経済成長の勢いそのままに全国でマンション建設を手掛けて急成長しました。近年は住宅販売面積において中国2位に位置し、電気自動車の開発やサッカークラブ「広州恒大」の運営など事業の多角化も積極化させてきました。
しかしその結果としての過剰債務問題はあまりにも大きな代償といえるでしょう。恒大の有利子負債は今年3月末時点約11兆5千億円にまでふくれあがっており、住宅購入者の前払い金なども加えた負債総額は約33兆5千億円相当に上ると伝えられています。また海外の機関投資家も恒大が関わる債券を保有しているといい、デフォルトとなれば国際金融市場への影響も懸念されます。