遊休不動産を活用する都市再生推進法人とは

空き家・空き店舗などの遊休不動産の活用を図り、地域の活性化に不動産会社が取り組むケースも増えてきます。

不動産事業は社会的な貢献や地域再生といった視点から評価する必要もあり、一私企業の立場を超えた関わり方を求められることもあります。

ここでは全国的にも広がってきたマネジメントと、その手法の1つとして考えられる「都市再生推進法人」の制度についてご紹介します。

遊休不動産活用とエリアマネジメント

遊休不動産の活用として単一のビル・店舗・住宅などの再利用を図る方法が考えられます。

一方、遊休不動産を含めた一定のエリアを一体として活性化を図る、エリアマネジメントという考え方もあります。

遊休不動産には個人や企業が所有するものや、地方自治体などの公的機関が所有するものもあります。

再利用を図り長期間にわたって “にぎわい” を継続させるには、再利用を図る物件が存在するエリアのポテンシャルは高くなくてはいけません。

人流がある程度あるエリアで遊休不動産が少ない場合は、単一の物件をリニューアルすることにより再生できる期待をもてますが、ポテンシャルの低いエリアの場合はむずかしいものがあります。

エリアマネジメントは面的に活性化を高め、エリア内の施設や街の装置が互いに相乗効果を生むよう企画するものです。

遊休不動産の活用を図るためエリアマネジメントを企画するには、地方自治体との連携が欠かせません。

都市再生推進法人の制度

エリアマネジメントを考えるさい条件が整えば活用したいのが「都市再生推進法人」の制度です。

都市再生推進法人とは都市再生特別措置法にもとづき市町村が指定する法人であり、行政の補完的な立場でまちづくりを担う団体を言います。

都市再生推進法人になることができるのは次の法人です。

1. 一般社団法人・公益社団法人
2. 一般財団法人・公益財団法人
3. NPO法人
4. まちづくり会社(まちづくり推進を目的とした公共性の高い会社)

都市再生推進法人の指定までには、一定のまちづくり活動の実績が必要になりますが、指定を受けると次のようなメリットがあります。

1. 市町村の指定法人になるので関係機関との調整を円滑に進められる
2. 公共の遊休施設や既存の公共空間を一体として活用することが可能
3. 都市再生整備計画に関する提案を市町村に対しできる
4. まちづくりに関して都市計画の変更などの提案ができる
5. 緩和税制や融資制度の活用が図れる

まちづくりに積極的に関わろうとする不動産会社は、賛同してくれるエリアの企業や個人と社団法人を設立し、まちづくり会社を新設するなどして活動をおこない、ある程度の実績を残せると都市再生推進法人に指定される可能性があります。

都市再生推進法人が活用できる制度

都市再生推進法人として指定を受けると、上記のメリット以外に次のような事業費に対し補助金を受けることができます。

1. ワークショップの開催など普及啓発事業に対する事業費
2. 都市再生緊急整備地域における都市安全確保計画や、主要駅周辺におけるエリア防災計画の素案の作成費
3. 都市・地域総合交通戦略や立地適正化計画にもとづく、歩道・駐車場自由通路などの整備費
4. エリアマネジメント活動をおこなう組織体制の構築費や活動費

さらに以下の事業に対しては貸付けや資金拠出が受けられます。

1. エリアマネジメント活動に対しては無利子貸付
2. クラウドファンディングによるまちづくりファンドを組成する場合は、民間都市開発機構による資金拠出
3. 交流・滞在空間の充実化のためのベンチの設置や植栽事業には、民間都市開発機構からの低利貸付

都市再生推進法人の活動事例

指定を受けた都市再生推進法人は2021年6月現在79法人あります。

その活動内容や事業内容は「官民連携まちづくりポータルサイト」で紹介されており、10の法人について概要を紹介します。

1. 札幌大通りまちづくり株式会社

札幌駅前通沿道の地権者が中心となって設立(2005年10月)した「札幌駅前通協議会」が、2019年に策定した「札幌駅前通地区まちづくりビジョン」にもとづき、沿道空間でさまざまな仕掛けを埋め込んだ魅力あるオープンスペースを創りあげています。

・歩行者ネットワークの形成
・建物低層階には交流と賑わいを生む
・コミュニケーションが誘発される歩行空間

2. 一般社団法人荒井タウンマネジメント

仙台駅から6kmほど離れた地下鉄東西線荒井駅の南側で実施された、区画整理事業地内約38haを活動エリアとする民間企業が主体となったエリアマネジメント事業。

・コミュニティ形成事業と賑わい創出事業
・パークマネジメントによる官民連携事業
・多機能複合施設の不動産賃貸事業
・収益構造を強化した売電事業

以上の4つの柱で構成されています。

3. 株式会社まちみとラボ

個人5名と2つの法人により設立したまちづくり会社。

水戸市のまちなか再生に向けてさまざまな事業を展開しています。

・まちなかマルシェ「ガンケット」
・水戸をプロデュースするウェブマガジン「TRIX MAG」
・中古マンションをリノベーションしまちなか居住を推進
・インキュベーション施設「M-WORK」

4. 株式会社まちづくり川越

川越市と川越商工会議所が主体となり組織されたまちづくり会社。

産業観光館「小江戸蔵里」を拠点として、川越市の各種団体と連携しながら川越市中心市街地約65haを活動エリアとした活性化事業に取り組んでいます。

5. 特定非営利法人今様草加宿

草加市からの呼びかけにより、草加市の旧日光街道南側詰から綾瀬川左岸・松並木までの地域を「今様・草加宿」としてまちづくりをおこなう組織が生まれました(2003年9月)。

対象地域の町会・自治会・地区まちづくり協議会・商店会・商工会議所・青年会議所などの役員が集まり活動を重ね2018年に法人化しました。

6. 秋葉原タウンマネジメント

2001年に再開発が決定した秋葉原駅前の約24haを対象として、地域町会・商店街組織で再開発協議会を形成し、再開発業者や行政にも呼びかけ「まちづくり推進協議会」を設立しました。

駅前広場に広告媒体を整備し販売する広告事業や、駅前エリアをプロモーションする事業のほか、清掃や交通治安維持などの非収益事業もおこなっています。

7. 株式会社 飯田まちづくりカンパニー

飯田市の中心市街地活性化のため飯田市と金融機関、法人、個人が出資したまちづくり会社。

2012年に都市再生推進法人に指定されました。

不動産賃貸・管理業、テナントミックス事業、まちづくり事業のほか、非収益事業としてイベント・文化事業もおこなっています。

8. 高蔵寺まちづくり株式会社

1968年から入居がはじまった春日井市の高蔵寺ニュータウン、約50年を経過し人口減少がはじまっています。

ニュータウンの新たな魅力をつくり子育て世代家族を呼び込むための事業を展開します。

個人所有の空き家をまちづくり会社がサブリースし、DIYリノベ賃貸事業や空き家の管理サービスをまちづくり会社が担うなど、ニュータウンが一体となって再生事業に取り組んでいます。

9. 草津まちづくり株式会社

草津市中心市街地の活性化を目指し民間事業者のノウハウを最大限活かすため、草津市と草津商工会議所、地元金融機関が中心となりまちづくり会社を設立。

・低未利用地の活用プロジェクト「niwa+(ニワタス)」
・空き家・空き店舗のリノベーション事業
・旧草津川跡地を利用したテナントミックス事業
・草津市からの業務委託により公共空間を活用した賑わい創出事業

などを展開しています。

10. 神戸ハーバーランド株式会社

神戸駅の貨物駅跡地周辺でおこなわれた再開発地区の拠点として、神戸ハーバーランド情報センターを設立(1988年)。

神戸市の都心西部の核づくりを目指して、ウォーターフロントを前面に出したまちづくりをおこなっています。

民間事業者が主体の団体です。

まとめ

地域の活性化に必要な資金調達として「クラウドファンディング」が、有効な手法として社会的な認知を受けるようになりました。

クラウドファンディングは社会的な信頼のもとに形成されるもので、その信頼を得る1つの方法が「都市再生推進法人」の制度です。

地域の活性化事業は地方自治体の力だけで可能なものではなく、第三セクターよりも民間のノウハウや関わり方を強くする、官民連携のまちづくりが望まれています。

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