タワーマンションが抱える将来的な問題点と展望を考える

2021年5月31日「タワーマンションの管理データから紐解く住まいの実態や維持管理上の課題」と題する文書が発表されました。

同文書は大和ライフネクスト株式会社が設立した「マンションみらい価値研究所」と三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社の共同研究によるもので、タワーマンション管理の実態について調査研究したものです。

ここでは同報告書が伝えるタワーマンションの問題点と課題についてお知らせします。

タワーマンションの概況

マンションみらい価値研究所の研究結果によると、2018年までに供給されたタワーマンション(20階以上)は約1,400棟あると言います。

その年代別の分布は下図のとおりであり、2000年~2014年の15年間で建てられたタワーマンションが約7割を占めます。

タワーマンション,課題

出典:大和ライフネクスト株式会社「タワーマンションの管理データから紐解く住まいの実態や維持管理上の課題」

ファミリーマンションと異なり築年数はまだ浅く、築20年から築6年のタワーマンションがほとんどであり、今後も供給がつづくことが予想されています。

今般のマンションみらい価値研究所が発表した「タワーマンションの管理データから紐解く住まいの実態や維持管理上の課題」では、今後10数年から数十年の間に発生するタワーマンション特有の問題について警鐘を鳴らしています。

タワーマンションの管理上の問題点

タワーマンションには一般のファミリータイプのマンションと異なり、次のような管理上の問題があると指摘しています。

1. タワーマンションには容積率緩和の適用を受けるなどのため、公開空地を設けるケースが多く第三者が敷地内に出入りし、管理上むずかしい面がある
2. ファミリータイプにはあまり見られない充実した共用施設があり、利用マナー違反や設備破損など管理コストが上昇する
3. マンションの取得目的に「居住」「投資」「賃貸」など多様なものがあり、資産価値の維持についての共通認識が区分所有者相互で生れない
4. 区分所有者の絶対数が多く意思疎通が図れない
5. 通常の共用部維持管理コストと特殊な共用施設の維持管理コストへの配分について、管理組合の合意形成を図ることがむずかしい

区分所有者が多く維持管理コストが一般的なマンションと異なることが主たる要因です。

タワーマンションの販売価格は坪単価にして数百万円~千数百万円であり、購入層が限られるのは言うまでもありません。

さらに維持管理コストを長期間にわたり負担できなければ、所有できない特別な資産とも言えます。

改善が求められるタワーマンション管理

タワーマンションに限らず分譲マンションに共通してある問題が「修繕積立金の不足」です。

分譲マンションの管理については「区分所有法」と「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」があります。

2020年6月にマンション管理適正化法が改正され、2022年4月から「管理計画認定制度」が施行されます。

この制度は地方公共団体がマンションの管理計画について評価し、適切な管理計画にもとづくマンションを認定する制度です。

・適切な修繕計画
・修繕計画に適合する修繕積立金
・総会や理事会などの管理組合の円滑な活動

これらを評価することにより、適切な時期に大規模修繕工事をおこなえるマンションであるか否かを判定します。

タワーマンションは階数が高くなるほど、そして住戸数が多くなるほど修繕工事は上昇します。

下図は2019年10月18日に開催された「社会資本整備審議会 住宅宅地分科会 第1回マンション政策小委員会」にて配布された資料に掲載された、管理組合総会への出席割合と大規模修繕工事の規模別金額を表示したものです。

引用:国土交通省「マンション政策の現状と課題」

タワーマンション,課題

300戸を超えるマンションでは総会への出席率が2割未満となり、大規模修繕工事金額は500戸を超えると500戸以下の倍以上となり、20階建て以上は19階までの倍以上となっていることがわかります。

総会出席率の低下は合意形成が進まない要因であり、理事会の活性化や管理会社の関与が欠かせません。

修繕積立金不足は、一般ファミリーマンションの平均修繕工事サイクル12年に対し、タワーマンションは14年と、大規模修繕工事の繰延べにつながっています。

またサイクルの繰延べは合意形成に時間がかかっているといった面もあるようです。

そのため求められるのがタワーマンションの特性に適応できる管理規約です。

タワーマンションの特性に沿った管理規約

多くの管理組合は管理規約を「マンション標準管理規約」に沿って作成しています。

標準管理規約には単棟型・団地型・複合用途型の3種類あり、タワーマンションでは複合用途型標準管理規約が多く活用されていると言われます。

標準管理規約(複合用途型)は低層階に店舗があり、上階が住戸といった形式のマンションを想定したものであって、タワーマンションのような充実した一部共用部分がある形式を想定したものではないとされています。

2022年4月から施行される管理計画認定制度では、評価項目に管理規約が標準管理規約に準拠しているかどうかがポイントになります。

しかしタワーマンションに適用すべき標準管理規約が現在は策定されておらず、管理計画認定制度の有効性に疑問が生じる可能性があると言えるでしょう。

マンション管理士などの積極的な関与を図り、それぞれのタワーマンションの特性に合った管理規約の策定が急がれていると言えるのです。

修繕積立金と推定工事費との整合性

タワーマンションの大規模修繕工事については、一般的なマンションに比較し工事費は割高であり、技術的にも高度なレベルが必要とされます。

管理計画認定制度では修繕積立金と推定工事金額との整合性を評価します。

・均等積立方式による徴収
・計画期間の推定工事費よりも積立金累計額が多い
・組合への実際の収入額が長期修繕計画の年度収入額のとおりとなっている

これらに該当することが必要ですが、マンションみらい価値研究所の調査では、17年経過した物件でまだ大規模修繕工事が実施されていない事例もあり、計画通りに修繕工事が実施できていない実態が浮かんできます。

管理組合運営の課題

タワーマンションと一般的なファミリーマンションの違いを端的にいうと、区分所有者の多さです。

数百名という規模になるタワーマンションでは、合意形成が簡単におこなえないことが問題となっています。

また各種の機能を持った共用部分の管理には専門的な知識が必要とされ、管理組合を主導する理事会への負担は大きなものがあります。

マンション管理士も含めた専門家の助言や運営への係わりが必要であり、場合によっては専門家や管理会社が理事会や総会をリードする役割を担う必要もでてくるでしょう。

築15年以内の物件が7割を占めるわけで、タワーマンション管理のノウハウはまだ未成熟とも言えます。

管理計画認定制度がスタートしますが、それぞれの管理組合の実態を正確に反映するものになるかはこれからです。

中古マンション市場におけるタワーマンションの比率は今後増加すると考えられます。

管理計画認定制度による5段階評価のうち、通常に取引されるのは「S」ランクと「A」ランクになると思いますが、タワーマンション特有の課題がある物件は少なからず存在します。

その評価をどのようにおこなうのか課題は、まだまだつづくと思われます。

まとめ

2021年もタワーマンションの価格上昇はつづいており、平均価格は7千万円台に達しています。

都心へのアクセスを優先するとタワーマンションしか選択肢はなく、今後もタワマンの供給はつづいていくと思われます。

タワーマンションがかかえる問題点については多くの議論がネット上にもあり、肯定する意見や否定する意見が存在します。

そのようななかで、取りあげた「タワーマンションの管理データから紐解く住まいの実態や維持管理上の課題」は、タワーマンションの実態を客観的に捉えた初めての調査報告書と言えるでしょう。

読んでみて、やはり!と納得のいくものですが、約1,400棟、40万戸に近い社会的資本をどのように活かしていくのか、不動産業界の共通の課題と言えそうです。

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