成約数・成約価格の推移から考える不動産市況の今後と対策

不動産流通機構(レインズ)の月例マーケットウオッチによると、2020年4月の中古マンション成約数の前年同月比は、東京都で−55.3%、愛知県で−40.9%、大阪府で−41.3%となり、レインズが統計をとりはじめてから最大の下げ幅を記録したとのことです。

4月は新型コロナウイルス感染拡大防止を目的に、緊急事態宣言が発令され、その後全国に拡大されました。

そのことによる外出自粛、経済が停滞することによる仕事や収入への懸念などが原因となり、上記の記録的な成約減につながったものと思われます(このあたりの背景は、(「20.4%が「不動産会社への訪問を控えた」と回答。不動産仲介業におけるウィズコロナの接客とは?」も併せて御覧ください)。

その後、成約数は少しずつ持ち直していますが、それでも前年並にはまだ回復していない状況です。

また、成約数の減少は、成約価格の低下圧力となり、手数料収入の減少にもつながるという負のスパイラルを招きかねません。

そこで今回は、レインズが公開している成約数と成約価格から、今後の不動産市況について論考してみたいと思います。

4月・5月の中古マンション成約数が前年比半減

2020年4月・5月の成約数と前年同月比(3大都市圏主要都府県)

4月 5月
成約数 前年同月比 成約数 前年同月比
東京都 812 -55.3% 882 -37.6%
神奈川県 390 -52.1% 407 -40.2%
千葉県 204 -52.7% 201 -39.5%
埼玉県 223 -40.8% 202 -37.5%
愛知県 238 -40.9% 260 -14.8%
大阪府 480 -41.7% 392 -34.4%
京都府 123 -34.2% 87 -31.0%
兵庫県 290 -41.3% 239 -31.7%

出典:レインズ月例マーケットウォッチ(2020年5月)

2020年4月の3大都市の中古マンション成約数は上で述べた通りです。

首都圏・近畿圏の東京都・大阪府以外の府県も軒並み大幅減となっています。

5月は4月に比べると持ち直す傾向にありますが、多くの都府県が−30%〜−40%台となっており、依然として厳しい状況が続いています。

成約件数が大幅に減少した要因としては、不透明な経済情勢による仕事や収入の不安定化懸念、不動産価格を含めた市況の見極め、コロナ感染リスクなどが挙げられます。

6月の実績はまだ公開されていませんが、緊急事態宣言が解除されて即V字回復というのは考えづらく、当面は前年同月比減で推移するものと思われます。

4月・5月の中古マンション成約平米単価は小幅の下げ

2020年4月・5月の平米単価と前年同月比(3大都市圏主要都府県)

4月 5月
平米単価(万円) 前年同月比 平米単価(万円) 前年同月比
東京都 70.18 -0.9% 70.57 2.5%
神奈川県 41.86 -2.4% 41.02 -3.1%
千葉県 24.15 -11.3% 25.38 -8.4%
埼玉県 29.98 -3.8% 31.32 -3.6%
愛知県 26.54 -4.3% 25.41 -7.6%
大阪府 35.68 -0.2% 33.02 -6.9%
京都府 39.07 -8.2% 35.31 -7.6%
兵庫県 26.87 -13.6% 27.15 -7.3%

出典:レインズ月例マーケットウォッチ(2020年5月)

一方、2020年4月と5月の中古マンション平米単価をみると、成約数の大幅減に比べて、下げ幅が小幅となっています。

成約数が−52.1%だった神奈川も、平米単価でみると−2.4%の下落、京都や兵庫も成約数の下落幅−30〜40%と比較すると、小幅の減少と言えるでしょう。

5月に至っては、東京都が2.5%の増加で価格が上昇している状況となっています。

成約平米単価が大きく下げなかった理由とは?

2020年4月の東京23区・東京都下それぞれの平米単価と前年同月比

4月
平米単価(万円) 前年同月比
東京23区 67.80 -3.7%
東京都下 29.19 -20.7%

出典:アットホーム不動産情報ネットワークにおける首都圏の新築戸建・中古マンション価格(2020年4 月)

ここまでの結果から、成約数の大幅減に対して成約平米単価はそれほど下げていないということがわかりました。

その理由として「人気のあるマンションは価格を下げなくても売れる」ことが考えられます。

上の表は、アットホーム(株)の登録物件の成約価格です。23区と東京都下で下げ幅が大きく異なる結果となっています。

ここから導き出せる仮説として、都心に所在する希少性の高い物件・人気のある物件は、売りに出ても価格をあまり値を下げることなく買い手がすぐについていることが考えられます。

そのため、成約数が大幅に減少していても成約平米単価の下落にそれほど影響を与えなかったものと思われます。

今後の不動産市況と仲介業者のとるべき対策

上述したように、今後も成約数が低調に推移した場合、成約平米単価は下落傾向となっていくことが想定されます。

理由としては、コロナウイルス感染拡大の第二波に加え、経済の低迷が挙げられます。

経済の低迷によって不動産の売却が増加すれば、市場原理から言っても価格の下落圧力となりますし、任売・競売物件の増加なども価格の下落圧力となる可能性が想定されます。

一方、ポジティブな面では、ここ数年の中古マンション価格の上昇により、希少物件がなかなかマーケットに出てこないという状況が続いていましたが、価格の下落により、マーケットに出てくるということが今後増える可能性があります。

エンドユーザーの観点から考えると、成約数は減少しているものの、コロナリスクや市場動向の値踏みを目的に様子見をしているユーザーが過半数となっており(「20.4%が「不動産会社への訪問を控えた」と回答。不動産仲介業におけるウィズコロナの接客とは?」より)、リアルでの行動は控えていても、Web上での情報収集はむしろ積極的に行っている状況にあると言えそうです。

コロナ禍によって住み替え需要が消えたわけではなく、一定水準までの値下がりやコロナリスクの解消によって成約数が回復することが考えられます。

内閣官房「新型コロナウイルス感染症対策」(https://corona.go.jp/)の「人の流れの推移(6月25日(木)19時台の増減率)」によれば、東京駅周辺の人の流れは、緊急事態宣言前と比較して18.5%増、新宿歌舞伎町は28.9%増となっており、東京以外の都市圏でも6月に入ってからは右肩上がりで人の流れが増加しています。

7月には23日〜26日に4連休があり、制限解除後初の大型連休が控えます。

政府主導の観光需要喚起策「Go to キャンペーン」は8月以降に実施予定のため、遠出する人は比較的少ないことが予想されます。

集客において取りこぼしのないようにしたいところです。

その際、自社の商圏における集客(チラシやポスティング)はもとより、ポータルサイトや自社ホームページ、SNSなどを活用した広域の集客も重要になってきます。

テレワーク・在宅勤務の普及により、自宅におけるワークスペースの確保や家族との時間を過ごせるゆったりとした空間へのニーズが高まっており、検討エリアが広域化する傾向にあるからです。

また、安全安心な住まい探し環境(マスクの着用、消毒殺菌の徹底など)を用意していることなども含めて、各種メディアでの訴求内容を見直し、7月の連休の集客に備えましょう。

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