いつまでつづくのか?終わりが見えないウッドショック~続報

住宅業界に大きな影響を与えている「ウッドショック」ですが、まもなく半年が経過しようとしています。

長期化の様相を示しており中小の工務店経営には、大きな影響を与える懸念が生じています。

日本政策金融公庫は「新型コロナ関連の特例措置」として、中小事業者への資金繰りに対する支援相談を開始していますが、ほとんど事業者には周知されておらず相談はわずかな状況です。

この記事ではウッドショックの現在の状況と今後の見とおしについて、公表されている資料にもとづきご紹介します。

ウッドショックとは?

アメリカからの輸入製材価格は2月から上昇しはじめました。

下図は経済産業省が日本銀行の資料「企業物価指数」にもとづき作成公表した、製材の輸入価格推移をグラフにしたものです。

ウッドショック,製材の輸入価格

引用:経済産業省「いつまで続くウッドショック;価格の高止まりが需要に影響?」

「ウッドショック」というホットワードが表面化したのは5月頃であり、このときの集成材国内価格を上記同様、経済産業省作成のグラフで確認してみます。

ウッドショック,木材価格

引用:経済産業省「いつまで続くウッドショック;価格の高止まりが需要に影響?」

木造住宅の構造部材のほとんどは「集成材」を加工して使用しており、集成材の価格上昇は住宅コストに直接影響します。

その結果「ウッドショック」として、全国的に影響が表面化しました。

ウッドショックの発端はアメリカにおいて、コロナ禍による生活スタイルに変化が生まれたことです。

新築住宅需要が増加し北米産の木材価格が急騰し、日本が輸入する製材価格を押し上げたことと見られています。

ウッドショックの現状

木材・木製品の国内価格推移を指数で分析すると、2015年を100とした価格水準は2020年12月ころまでは安定しており、2021年3月ころから上昇に転じていることが、上図の「木材・木製品の国内価格」から見てとれます。

2021年9月現在の各種木製品の国内価格指数は以下のとおりです。

・集成材=219.8
・製材=168.5
・木材・木製品=152.6
・合板=127.4

製材は上昇カーブが7月からはゆるやかに転じていますが、他の3指数の傾きはあまり変わっていません。

まだしばらく上昇傾向がつづく可能性があると言えそうです。

では全国各地での影響についてもう少し詳しく見ていきます。

全建総連(全国建設労働組合総連合)が「第2回 ウッドショックによる工務店影響調査」をおこないました。

調査期間は2021年8月6日~8月30日でした。

32都道府県273社から回答を得て、5月におこなった第1回目の調査との比較をしています。

その結果、悪化と回答した割合は51%、横ばいが42%となり改善の兆候はまったく見えないのが現状です。

値上がりの状況としては、大きく値上がりと若干値上がりとの回答が93%、値上がり幅は「1~2割」が41%「3~4割」が34%となっています。

プレカット価格の上昇もあり約6割が値上がり・高値を実感しています。

出典:林野庁「ウッドショックによる工務店影響調査(第2回)」

住宅価格への影響

ウッドショックの影響は住宅コストを上昇させます。

全建総連の調査では以下の結果となっています。

・新築1棟当たり平均82万円の上昇
・リフォーム1件当たり平均27万円の上昇

上昇したコストをどのように負担したのか、状況をグラフで確認してみます。

ウッドショック,費用負担

引用:経済産業省「いつまで続くウッドショック;価格の高止まりが需要に影響?」

すべてを自社で負担した割合が13%であり、施主への負担が浮き彫りになっています。

価格上昇は受注への影響があり

・横ばい61%
・悪化37%

と受注状況はよくなく今後の資金繰りにも懸念が生じており、長期化するとほとんどの工務店が年末にはひっ迫すると心配されています。

出典:林野庁「ウッドショックによる工務店影響調査(第2回)」

このため国土交通省は2021年5月17日付の事務連絡で、ウッドショックは新型コロナ関連の特例措置の対象として位置づけ、ウッドショックによる資金繰りの支援を日本政策金融公庫が窓口としておこなうことを通知しました。

しかしながら、事業者にはこの通知を知らない企業もあり、相談実績はごくわずかとなっています。

参照:全建総連「住宅用木材の価格高騰・不足を踏まえた木造住宅供給事業者等における業務の対応について」

ウッドショックはいつ終わるのか?

ウッドショックはアメリカの住宅需要の増加が大きな原因ですが、アメリカにおいても住宅価格は上昇しており、住宅需要は若干ながら下火になってきていると言われます。

輸入価格が高値となるもうひとつの要因としてあるのが、世界的なコンテナ不足による海上運賃の高騰です。

コンテナ不足の原因はコロナ禍によるコンテナ生産量の減少や、コロナによる港湾作業員不足もあるようです。

また中国経済が回復したことにより中国から欧米への輸出量が拡大し、コンテナ需要が大きく上回っているのもコンテナ不足に拍車をかけているようです。

ウッドショックは単にアメリカによる木材需給のバランスだけではなく、国際的なロジスティクスの機能不全という一面もあり、まったく予測のつかない状況と言えそうです。

経済産業省は冒頭の「いつまで続くウッドショック;価格の高止まりが需要に影響?」において、次のように結んでいます。

“したがって、日本国内では、当面は、いわゆるウッドショックといわれる状況が継続する蓋然性が高く、今後の動向を引き続き注視していく必要があると考えています。”

まとめ

経済産業省は2021年7月に「新型コロナがもたらす供給制約 ; ウッドショックの影響」と題したWebページをアップロードし、ウッドショックに関する公的な論評を発表しました。

その中で

“今回のウッドショックは、一時的な現象との見方もありますが、海外依存度が高い日本のサプライチェーンの脆弱性をあらためて浮き彫りにしたものであり、国産材に注目が集まっている好機をどのように活かすのか、今後、国産材の活用を含め、サプライチェーンの強化に向け対策を講じていくことが必要と考えられます。”

と結んでいますが、当時よりも長期化の懸念が生じており、影響を深刻に受け止める必要もありそうです。

なにより受注減による建築事業者の経営状況悪化について、どの程度の規模におよぶのか注視しなければなりません。

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