退去理由から考える有効な空室対策と無駄な対策

退去する人のなかにはやむを得ず退去する場合と退去を防げたケースがあり、空室対策を考えるうえで退去理由の分析が欠かせません。

退去を防ぐことが可能になると、やむを得ず退去した空室をすみやかに埋める対策に集中することができます。

・空室を早く埋める
・退去を防ぐ

2つの対策が上手く連動することにより、空室対策は効果を発揮するようになります。

退去理由を把握していますか?

賃貸経営は入退去の繰り返しがつきものです。

短い人だと1年以内で退去する人もいれば、長い人は10年以上も居住している人もいます。

入居者が退去するのには理由があります。

思いつくままにあげてみると次のような理由がありそうです。

家族の都合 仕事の都合 賃借物件
結婚 転勤 家賃・更新料
出産 退職 トラブル
子供の入学 職種の変更 利便性の悪化
離婚 待遇の変化 生活環境の悪化

退去届けには退去理由を記入する欄を設けているケース、設けてないケースがありますが、仮に設けていたとしても退去する人が本当の理由を書くかどうかはわかりません。

とくに「家賃が高い」とか「隣の人がうるさい」など、クレーム的な文言を書くことに抵抗を感じる人もおり、無難に「都合により」など抽象的な表現で終わるケースが多いといえそうです。

退去理由を分類すると見えてくる改善方法

退去理由を「やむを得ない理由」と「退去を防げる理由」に分けてみましょう。

やむを得ない理由 退去を防げる理由
結婚や出産で家族構成が変わる 家賃が周辺の物件よりも高い
子供が入学し通学便の良い物件への住み替え 更新料が高くもっと便利で安い物件へ住み替える
離婚によりもっと狭い住宅へ住み替える 隣からの騒音が我慢ならない
転勤することになった 長く住んでいるため室内や設備が古くなった
退職し故郷へ戻る 管理状態への不満がある
職種や待遇が変わり住宅の条件が変化した 不審者の出没など治安が悪くなった
商店・学校・病院などが無くなり利便性が悪化 周辺に新しく安い物件が増えた
高層建物や工場などが建ち環境が悪化した 保有車が増え駐車場が足りない

このように改善や改良を加えると、退去する理由がなくなり退去を防ぐことのできるケースに気づくこともできます。

本当の退去理由を知るためにできること

退去を防ぐためには「本当の退去理由」を知らなければなりません。

そのためにできることとは?

退去時や更新時にアンケートをお願いする

アンケートとなると文字を書かなければならず、書くことそのものに抵抗を感じてしまい、なかなかうまくはいきません。

そこでチェックシート方式の書かずにできるアンケートを用意します。

家賃が高いと思ったことはありますか □はい □いいえ
更新料が高いあるいは不要だと思ったことはありますか □はい □いいえ
隣室などからの騒音などに悩むことがありましたか □はい □いいえ
設備が古く新しいものに交換してほしいと思いましたか □はい □いいえ
内装が古く汚れており張替などをしてほしいと思いましたか □はい □いいえ
共用部分の清掃は行き届いていましたか □はい □いいえ
管理担当者の応対に満足していましたか □はい □いいえ
周辺の治安の悪化が退去理由になっていますか □はい □いいえ
周辺に家賃の安い物件が増えたと感じていますか □はい □いいえ

上の表は一例として掲げたものですが、このようなアンケートを退去時あるいは契約更新時に答えてもらい、入居者の意識を把握しておくことが大切です。

エリア内の競合物件は常にチェックする

止むを得ない理由以外の理由による退去は、比較対象となる競合物件が周辺にあり、現在居住する物件にあるネガティブ要素が増幅して、退去に至ることが多いと思われます。

そのため退去を防ぐにはエリア内にある競合物件について、賃貸条件や管理の状態などを常にチェックし、自社管理物件との比較をおこない自己検証する必要があります。

他社の欠点を指摘することは簡単ですが、自社が管理する物件の管理状態を検証することには消極的になりやすく、いつのまにか品質の低い管理業務をおこなっている場合もあるのです。

賃貸条件については入居者に有利な条件に偏ると、オーナーの収益性が低下するという面があり、ちょうどよいバランスでの設定が大切です。

また賃貸条件は以下の要素との兼ね合いで決まるものです。

・築年数
・間取りや広さ
・設備の内容
・立地条件
・生活環境

さらに競合物件との比較で重要視しなければならないのが、季節によって変わる「特典や特約」の設定、そして競合物件の件数も重要です。

自社管理物件と比較して極端に好条件の物件があったとして、恒常的におこなわれている条件なのが、スポット的におこなっているキャンペーンなのかも把握しなければなりません。

エリア内に20件ほどの競合物件があり、そのうち1件のみが好条件を打ち出しているのか、ほとんどが好条件になっているのかなど相対的な比較も大切なことです。

有効な空室対策と無駄な空室対策

管理会社の重要な役割は入居稼働率を限りなく100%に近づけることです。

そのためにやるべきことは2つ

●空室はできるだけ早く埋める
●退去を防ぎ空室をつくらない

これらを一般的に「空室対策」といいますが、主におこなわれる対策には次のような方法があります。

1. 家賃設定を見直し
2. 敷金・更新料・フリーレントなどの設定変更
3. 保証人なしやペット可などの条件緩和
4. 入居プレゼントや長期居住特典
5. 設備の更新や追加
6. マーケットの需要変化に合わせたリフォームやリノベーション

これらの対策は多くの物件において実施されていることであり、効果のあることも知られていますが、実際に自社管理物件でおこなう場合には競合比較が必須です。

それぞれの対策により、自社の物件の評価がどの程度ランクアップされるのかを見きわめること、他社物件よりも選ばれる率が高まるのかを検証しなければなりません。

常に「他の物件と比較してどうか?」という視点で、採用しようとする空室対策を検討しなければなりません。

そしてそのときに大切なことは、管理状態が他社物件と比較して遜色のないこと、あるいは優れていることが必要です。

せっかくの空室対策も管理状態が他物件よりも劣っていては、効果は生まれないと認識しておかなければなりません。

まとめ

空室を早く埋めそして退去を防ぐには、退去理由の分析と競合物件との比較が重要です。

退去理由を理解するには入居者の意識をできるだけ正確に把握する、そしてエリア内の競合物件の状況も正確に把握することが重要です。

そのうえで管理物件と比較をしますが、そのときに忘れてならないのが「自己検証」です。

このようにマーケットのなかにおける自社管理物件の評価を客観的におこなうことにより、はじめて効果のある空室対策が可能になることを認識しておきたいものです。

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