区分所有マンションの取引では「マンション管理」に関する事項も調査しなければなりません。調査先は管理組合または管理業務を委託している管理会社です。
売主に確認し管理業務の委託先を確認して調査に着手します。
ここでは、調査項目として「重要事項調査報告書」「長期修繕計画書」「管理規約」について解説しますが、「重要事項調査報告書」は管理業務を委託している場合に該当するもので、ほか2項目は必ず調査すべき項目です。
不動産営業マンがマンション取引時に調査すべき3つのこと
- 重要事項調査報告書
- 長期修繕計画書
- 管理規約
1.重要事項調査報告書
ほとんどの分譲マンションは、管理業務を国土交通省の登録を受けたマンション管理会社に委託しています。全部委託か一部委託の違いはありますが、マンション管理のプロフェッショナルが管理業務に携わっているのです。
区分所有マンションを取引するさいには、管理会社に依頼すると「管理に係る重要事項調査報告書」が取得できます。費用は有料です。
報告書の内容を大きな項目について紹介すると以下のようになっています。
- 管理体制について
- 共用部分について
- 売却対象住戸の管理費
- 管理組合の収支
- 専有部分使用制限
- 大規模修繕計画
- アスベスト使用調査
- 耐震診断
- 管理形態
- 管理事務所
- コミュニティ関係
- その他
売買契約の前に買主に対しおこなう重要事項説明にて必要な事項は、「管理に係る重要事項調査報告書」の内容に網羅されているので、管理規約のこまかな部分まで確認するといった作業を省略することが可能です。
また管理規約は改訂されていることが多いのですが、「管理に係る重要事項調査報告書」には、改訂内容の重要な事項について特記されています。
管理費や修繕積立金といった “金銭” に係ることについても、決算書や収支明細を確認せずとも必要な情報を取得できるようになっています。特に対象住戸の「滞納状況」については重要です。
重要事項調査報告書の依頼時には、後述する「長期修繕計画書」と「管理規約」についても依頼すると、これらもあわせて取得することができます。
2.長期修繕計画書
マンションの共用部に係る修繕工事は大規模な内容となり多額な費用を要します。定期的におこなう必要があり、新築時から30年~40年後までの「長期修繕計画」を立てることが望ましいとされているのです。
長期修繕計画の策定については、国土交通省告示「マンションの管理の適正化に関する指針」にて定めており、計画を立てたのちは5年ごとに見直しをし修繕積立金との整合性をチェックする必要があり、マンションの維持管理に重要な事項になっているのです。
大規模修繕の具体的な工事は次のようなものが該当します。
- 外部塗装工事
- 屋上防水工事
- 給水管工事
- 配水管工事
3.管理規約
管理規約は「建物の区分所有等に関する法律」第30条~第33条で定めているように、分譲マンションの建物・敷地・附属設備の管理や使用に関することを、区分所有者相互間で取り決めることができるとされています。
古いマンションには管理規約を定めていない場合がありますが、現在中古市場で流通するマンションには、管理規約があると考えていいでしょう。
国土交通省はマンション標準管理規約を公開し、多くのマンションでは管理規約を定めるさいに活用されています。
標準管理規約の内容を「マンション標準管理規約(単棟型)」で確認してみましょう。
第1章 総則
・管理規約の目的や用語の定義
・規約の対象となる範囲
・管理組合の構成
第2章 専有部分の範囲
・専有部分と共有部分の範囲
第3章 敷地及び共用部分等の共有
・共有の対象と共有持分
・共有部分の分割と分離の禁止
第4章 用法
・専有部分の用途制限と住宅宿泊事業(民泊)使用の規定
・敷地や共用部分の使用制限
・バルコニーや駐車場の使用制限
・専有部分の修繕、使用細則、貸与についてと暴力団員の排除規定
第5章 管理
・区分所有者の義務について
・敷地や共用部の管理と断熱性能向上に関する管理組合の主体性について
・管理のための権限規定
・損害保険の加入権限
・管理費と修繕積立金の規定
第6章 管理組合
・組合員の定義と義務
・管理組合の業務内容と管理会社への業務委託及びマンション管理士活用に関する規定
・役員構成と任期の定め及び役員の誠実義務や報酬規定
・管理組合総会の定義と手続きおよび議決権など管理組合の運営に係る事項
・理事会の構成と理事会の運営に係る事項
第7章 会計
・会計年度と収支予算および決算や管理費などの徴収に関する取決め
・預金口座の開設と借入に関する規定
第8章 雑則
・義務違反者への措置および理事長の権限
・その他の規定
以上の構成になっており別表として以下のリストを添付するようになっています。
- 対象物件の表示
- 共用部分の範囲
- 敷地および共用部分等の共有持分割合
- バルコニー等の専用使用権
- 議決権割合
さらに「使用細則」を定めるのが一般的です。
標準管理規約に則って作成された管理規約であっても、トランクルームや駐輪場、専用庭や屋上バルコニーなど、取引対象マンション特有の専用使用権が及ぶ共用部分のある場合があります。
使用細則では「ペットの飼育」や「床フローリングへの張替」など、買主の関心が高い項目もあり、管理規約と使用細則はひととおりすべて目をとおしておくことが大切です。
まとめ
区分所有マンションは「管理状態」により、資産価値が左右されるといわれます。
特に修繕積立金の残高と長期修繕計画とを検証したときに、明らかに修繕積立金残高が不足している物件もあります。
買主にはマンション管理の現状を正しく理解して購入するよう、媒介業者はより気をつけたいものです。