不動産を売買する場合に「相場価格」という言葉が使われることが多いのですが、実は相場価格はたいへんあいまいなもので、売主と買主の立場が変わると相場観はまったく違うものになります。
不動産の評価は個人の主観が大きく影響するものですが、売買においてあまりに違う評価を互いに主張しては、まとまるものではありません。
売主と買主が同じ土俵で取引できるよう、客観的な評価額を算出するのが「不動産査定」です。
ここでは不動産査定の概要について解説します。
不動産物件査定とは?査定から販売までの流れを解説
物件査定とは?
不動産が売買される過程ではさまざまな価格が当事者から提示され、最終的に売主と買主が合意した価格で売買されるのですが、下表のとおり “価格の種類” があります。
売却希望価格 | 売主が希望する売りたい価格 |
査定価格 | 媒介業者が3ヶ月程度で売れるだろうと客観的に予測する価格 |
売出価格 | 販売初期の売出し価格 |
購入希望価格 | 購入希望者が希望する買受価格 |
成約価格 | 売主と買主との間で媒介業者が調整して合意する価格 |
査定価格は売却活動を開始するうえでもっとも重要な価格と位置付けられます。査定価格を算出する一連の業務が「物件査定」です。
物件査定の目的は「売主にとっても買主にとっても納得のいく妥当な価格」で取引できるように、客観的な物差しとなる価格を提示することです。
売主はできるだけ高く売りたいと考えます。逆に買主はできるだけ安く買いたいと希望します。しかし目安になる価格が最初にないと “せり売り” のような方法になってしまうのです。
宅地建物取引業法では媒介契約にあたり「売買すべき価額又はその評価額」を明示しなければならず、購入希望者は媒介契約にもとづく「売出価格」に対して、購入の “是非” を判断することになります。
つまり「売出価格」は客観的な不動産評価にもとづき決定するもので、その判断材料になるのが査定価格であり、不動産査定書になるわけです。
物件査定の注意点
物件査定は「3ヶ月程度で売れるだろうと予測できる価格」とするのが、売主の利益を守ることになります。
売主は物件査定を複数の媒介業者に依頼するのが一般的。媒介業者の立場になると競合する会社が複数いるわけです。
そのなかで他社との差別化を図り「媒介契約」の締結を克ちとるために、査定価格を高めに提示する傾向があります。
媒介契約を締結してから「この価格ではむずかしいので値下しましょう! 」などの手法は、宅建業界の信用低下につながる行為であり、気をつけるようにしたいものです。
査定から販売までの流れ
査定は売主からの「査定依頼」でスタートするのですが、以下に各ステップでの注意点を解説します。
1. 物件調査
物件調査は、現地調査・登記簿調査・役所調査で解説した事項に関し漏れの内容に調査をおこないます。
2. 査定作業
物件の種類により査定の方法は3種類あり、もっとも相応しい方法で査定をおこない、場合によっては参考資料として複数の査定方法にもとづいておこなうこともあります。
3. 不動産査定書提出
査定作業により計算された結果を「査定書」として提出しますが、売出価格を具体的に決める判断材料になるものです。
また売主にとっては “思い入れ” のある不動産を売却することになります。数字上だけの結果だけでは納得できない感情的な要素もあるので、査定価格は〇万円~〇万円のように幅をもたせた価格帯提示をするほうが望ましいでしょう。
4. 売出価格決定
売出価格を決定する時点では「媒介契約」締結がほぼ前提です。査定価格は「3ヶ月程度で売れるだろうと予測できる価格」で提示したわけですが、売出価格は売主との相談を経て決定します。
売主の希望や意向がある程度反映された価格という一面と、媒介業者の販売戦略が盛り込まれた価格という面もあります。
5. 媒介契約締結
売出価格が決定し媒介契約の締結となります。媒介契約には3種類の形式がありますが、「一般媒介契約」の場合でも「レインズ」への登録は、販売機会を増やす意味でもおこなうほうが望ましいでしょう。
まとめ
不動産査定ができるようになると営業マンとしても “一人前” といえるでしょう。
不動産査定は物件を近視眼的にとらえるのでなく、立地条件による社会的な要素や法的規制と地域の将来的な変化などを見通した、総合的な見地で不動産に評価を与えるものです。
査定結果に影響を与えたさまざまな要素を論理的に説明できて、はじめて売主の納得を得るものです。納得を得られなければ「媒介契約」締結には至りません。
理路整然と説明できるような査定を心がけてください。