2019年末ごろから実用化されるようになった「入居申込のウェブ化」、アットホームがはじめたサービスもあり導入する管理会社や仲介会社が増加しています。
現在リリースされているWeb申込アプリと、そのメリットやデメリットそして賃貸管理のIT化が、どのように進んでいくのかを概観してみます。
不動産会社が活用したいWEB申込みアプリ4選【もはや常識】
「賃貸 ウェブ申込」と検索すると、以下のようなサービスがヒットします。
簡単に概要をまとめておきます。
1. リアプロWEB入居申請
リアルタイム空室情報システム『リアプロ』シリーズのWeb申込アプリです。
「リアプロ仲介」「リアプロ管理」と連携して、リアプロ導入している仲介店からのWeb申込ができるクラウドシステムです。
公式サイト:リアプロWEB入居申請
2. 申込受付くん
不動産リーシング業務のワンストップサービス『ITANDI BB』シリーズのWeb申込アプリです。
仲介会社とはチャットメッセージでやりとり可能、申込フォームもカスタマイズ可能です。
公式サイト:申込受付くん
3. スマート申込
不動産仲介会社の多くが加盟するアットホーム提供のWebサービスです。
スマート物確、スマート契約、スマート重説、スマート内覧など他のサービスとの連携により効率化を高めます。
公式サイト:スマート申込
4. Conomy
入居後も入居者とのやりとりできる機能が付き、スマホからの申込も簡単にできるUIが特徴のアプリ。
ポータルサイト「グッドルーム」掲載利用の場合は、初期費用が割安です。
公式サイト:Conomy
賃貸契約Web申込のメリットとデメリット
賃貸住宅のWeb申込は入居希望者にとってのメリット・デメリットと、管理会社にとってのメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット | |
入居希望者 | 不動産会社に出向かなくてよい | 書類の控えがない |
保証会社の申込を省ける | 年配者にはむずかしい | |
マイペースで申込みできる | ||
管理会社 | ペーパーレス化が図れる | 連携先や他部門がIT化されていないと逆に効率が落ちる |
申込書の記載不備や間違いを防げる | 管理戸数が少ない会社では余分なコストになってしまう | |
基幹システムとの連携により業務の効率化が図れる |
入居者にとっても管理会社にとっても、Web申込による大きなデメリットはありません。
ただし、月の申込件数が100件を下回る規模の事業所では、あまりメリットを感じないかもしれないといわれています。
逆に申込件数の多い場合は、メリットとしてあげられる基幹システムとの連携により、大きな業務効率が期待できるのです。
一方、デメリットにあるように審査部門や入居者管理部門との間では、ペーパーによる情報伝達がおこなわれているような状態だと、申込だけがIT化されても意味はないということも指摘されています。
トータルなIT化があって、はじめて有効に使えるのが「Web申込」だと認識しておかなければなりません。
賃貸仲介・管理IT化の将来
賃貸管理に関わる業務のIT化がすすむと、賃貸管理事業や仕事の内容にどのような変化が起きるのか、将来像を探ってみましょう。
入居申込書を入口として仲介会社や管理会社には、かなり秘匿性の高い情報が集まります。
・勤務先
・年収
・家族構成
・親族
・電話番号
・メールアドレス
などの情報に加えて管理会社には、入居後の家賃の支払い状況や水道・ガス・電力など公共料金の支払い状況までも、場合により知り得ることのできる機会があります。
これらの情報はデータベース化されることにより、より使いやすいデータになるのがIT化の利点といえるでしょう。
またメールアドレスや携帯番号の取得により、一斉メール配信による効率的な情報伝達が可能になり、新しいビジネスチャンスをキャッチすることも期待できます。
たとえば賃貸住宅居住者は住宅購入の潜在的見込み客でもあり、売買仲介を兼ねた管理会社においては、SNSを活用したリードナーチャリングを図る効果もありそうです。
管理業務に関しては、これまで手間のかかる電話や郵送によりおこなっていた更新案内や家賃の督促などは、メールやSMSあるいはグループチャットなどにより、効率性の高い手法を活用できるようになります。
さらに顧客情報のデータベース化は、次のようなマーケットリサーチに役立つ、データの “視える化” をもたらすこともできるでしょう。
・家族構成と住戸タイプのマッチング度
・居住年数
・転居頻度と転居サイクル
・賃料階層分布
・各種データのエリア別分析
データベースは「ビックデータの活用」で見られるように、あらゆる価値を生み出す源となります。
Web申込導入の課題
Web申込は、これまで紙に書かれた情報をキーボードから入力する作業を省きます。
つまりデータ入力作業を入居希望者が自らおこなうという、賃貸管理IT化の大きな転換点ともいえるでしょう。
入力されたデータは保証会社とも共有され、保証申込書なしで審査プロセスへ進んでくれます。
次に連動してほしいのが「火災保険契約」です。
賃貸住宅入居者の火災保険は「少額短期保険」がほとんどです。
少額短期保険も契約者がWeb申込できる商品が増えていますが、管理会社経由で保険契約をする場合、保険会社がWeb申込みに対応していないケースもあります。
入居希望者が賃貸住宅のWeb申込みと連動して手続きができる保険として『スマ Qhome』が、2020年6月に発売されましたが、現状では系列の不動産管理会社の物件限定となっています。
参考:東急少額短期保険株式会社「オンライン申込で賃貸管理会社様のお悩みを解決する家財保険『スマ Qhome』発売開始!」
今後はグループ外の物件にも適用しようとする動きがありそうですが、同様のWeb申込システムが広がっていくと、賃貸Web申込との連動が一般化するようになるかもしれません。
火災保険との連動が可能になると、あと残されるのが「オーナー」とのオンライン化です。
個人オーナーには高齢者も多いという事情から簡単ではありませんが、将来は賃貸管理に関する一連の業務がすべてIT化され、賃貸管理会社の業務効率は格段にあがっていくでしょう。
その結果うまれた時間を、プロパティマネジメントをはじめとしたオーナーが管理会社に期待する業務に、多くのエネルギーを振り向けることができるのではないでしょうか。
引っ越しから電気やガスの契約もワンストップで
賃貸業界では新たなシステムが生まれようとしています。
賃貸住宅「シャーメゾン」を展開する積水ハウスは、2020年度中の運用を目差して「ブロックチェーン」技術を活用した、賃貸入居手続きのワンストップ化を実現させる計画です。
参考:積水ハウス株式会社「業界初 ブロックチェーンで賃貸入居の煩雑なプロセスをワンストップ化」
入居希望者が最初に登録した個人情報をもとにして次のようなフローが可能になります。
無人内覧→入居申込→賃貸契約→電気・ガス・引っ越し・保険契約→入居
この一連の手続きがペーパーに書き込むこともなく処理され、登録した個人情報や契約情報は、ブロックチェーン技術にもとづく強化されたセキュリティにより保護されるしくみです。
このしくみは入居者ファーストとして位置づけられるもので、個人情報の目的外使用を防ぎ、手続きの正確性を保つとともに複数の「B to C」取引を一元化できる優れたシステムといえるでしょう。
まとめ
賃貸Web申込を中心に最近の賃貸管理業務のIT化と、業界で生れた新しいシステムなどについて、駆け足で紹介しました。
コロナ禍という状況のなか、各分野でのオンライン化は非常に早いスピードで進んでいる感があります。賃貸管理のIT化については補助金制度もあり、2021年には賃貸管理業界の様相はかなり変わっているかもしれません。
IT化に後れをとると、ビジネスチャンスを失うことにもなりかねません。善は急げといいます、早目の対応を心がけましょう。