(公財)東日本不動産流通機構のレポート「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」によると、過去10年で成約物件・新規登録物件のいずれにおいても築古化が進んでいることが分かりました。
この記事では、首都圏中古マンション市場における成約物件・新規登録物件の動向を検証し、その背景と対策について考えてみたいと思います。
中古マンションの成約物件・新規登録物件における築年数の推移
成約物件・新規登録物件のいずれも築古化が進行
(公財)東日本不動産流通機構のレポート「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」によると、過去10年で成約物件・新規登録物件のいずれにおいても築年数が上昇する傾向にあります。
(図1)中古マンションの平均築年数
出典:レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」
図1を見ると、過去10年間の成約物件と新規登録物件の築年数が右肩上がりで上昇している事が分かります。
特に直近5年間でみると、成約物件の上昇率に比べて、新規登録物件の上昇率が大きくなっており、急速に築古化が進行しています。
築古物件のシェアが10年前の2.5倍に
次に、成約物件数・新規登録物件数における各築年帯のシェアを見てみましょう。
(図2)中古マンション築年帯別構成比率
出典:レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」
まず、成約物件・新規登録物件ともに築31年以上の物件のシェアがこの10年で1.5〜2.5倍程度に拡大していることが分かります。
また、2020年の成約物件と新規登録物件のシェアを比較すると、築25年以内の物件が成約物件数に占める割合が65.1%に対して、新規登録物件数に占める割合は46.7%となりました。
この乖離は年々広がっており、需給バランスの不均衡化が進んでいると言えるでしょう。
築20年を境に成約率・成約平米単価の下落幅が拡大
ここからは、中古マンションの成約率・成約価格を見ていきましょう。
(図3)中古マンションの築年帯別成約率(成約件数/新規登録件数)
出典:レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」
(図4)中古マンションの築年帯別平均成約平米単価
出典:レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」
図3は築年帯別の成約率(成約件数/新規登録件数)、図4は築年帯別の平均成約価格をそれぞれ表していますが、いずれも築年数20年以降に下降幅が大きくなる二番底に入っていき、築26年以降で横ばいになっています。
成約価格に関しては、ここ数年物件価格の高騰が続いていますので、築浅から築25年までほぼ一方的に右肩下がりで価格が下落する形になっています。
築浅物件の減少と築古物件の増加
ここまで、首都圏中古マンション市場における成約物件・新規登録物件の動向を検証しました。ポイントは以下の通りです。
・成約物件/新規登録物件ともに築古化が進んでいる・成約物件/新規登録物件のいずれも特に「築31年以上」の物件数が増加しており、10年前と比較して1.5倍〜2.5倍に拡大している
・築浅物件と築古物件において、需要と供給のバランスの不均衡化が進行している
・築20年を境に成約率/成約平米単価ともに大きく下落する
築古物件の増加と客付け対策
客付けが不調な築古物件に対して、値下げによって売り切ることを目指すことが一般的かと思います。
しかし、築20年以上の物件が新規登録物件の6割超となり、需給のギャップが広がる中で値下げの有効性は今後限定的なものとなっていくかもしれません。
付加価値の大きいリフォーム・リノベーションとは?
築古物件が増加する中では、リフォーム・リノベーションによって競合物件との差異化を図ることが重要となるでしょう。
図3の築年帯別の成約率を見ると、築20年を境に成約率が一気に下落していきますので、築20年前後(2000年前後の竣工)の新築マンションでどういった変化があったのかについて検証してみます。
2000年には「住宅性能表示制度」が施行され、新築分譲マンションの性能が向上するきっかけとなりました。
90年代までと比較して、床スラブが数センチ厚くなったことで遮音性が向上、2003年の建築基準法の改正に向けて24時間換気システムの導入などが進んだ時期でもあります。
とりわけ防音・遮音や換気は、昨今のコロナ禍においてニーズが高まっている部分でもありますので、築古物件のリフォーム・リノベーションにおいては、差異化の注力ポイントとなるでしょう。