(公財)東日本不動産流通機構のレポート「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」によると、過去10年で成約物件・新規登録物件のいずれにおいても築古化が進んでいることが分かりました。
この記事では、首都圏中古戸建て市場における成約物件・新規登録物件の動向を検証し、その背景と対策について考えてみたいと思います。
中古戸建ての成約物件・新規登録物件における築年数の推移
新規登録物件の約30%が築31年超
(図1)中古戸建て住宅の平均築年数
出典:レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」
(図2)中古戸建住宅築年帯別構成比率
出典:レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」
(図1)では、中古戸建て住宅の平均築年数が成約物件・新規登録物件のいずれにおいても築20年超となっており、この10年間で築古化が進行していることが分かります。
(図2)を見ると、成約物件・新規登録物件における「築31年以上」の物件シェアがこの10年間で概ね1.5倍程度となっており、築古化進行の主要因となっています。
一方、2020年の成約物件と新規登録物件における20年以下の物件のシェアを見てみると、成約物件の50.8%に対して、新規登録物件の45.8%なっており、築浅と築古の需給バランスは概ね均衡状態にあると言えそうです。
築古物件ほど土地・建物面積が拡大
(図3)中古戸建住宅の築年帯別平均土地面積
出典:レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」
(図4)中古戸建住宅の築年帯別平均建物面積
出典:レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」
(図3)と(図4)は、中古戸建て住宅の築年帯別平均土地面積と建物面積を表したもので、いずれも築古になるほど面積が広くなっています(平均建物面積の「築31年〜」を除く)。
築古化が進む中古戸建て対策とは?
首都圏中古戸建て市場における成約物件・新規登録物件の動向を以下にまとめました。
・20年以下の物件のシェアは、成約物件と新規登録物件で大きく変わらない
・築年帯別平均土地面積と建物面積は、築古になるほど面積が広くなる傾向にある(平均建物面積の「築31年〜」を除く)
首都圏の中古一戸建ては、成約物件・新規登録物件のいずれも築古化が進んでいますが、築年数帯別の成約数と新規登録物件数のシェアが大きく相違していないことから、築古=不利という図式は必ずしもあてはまらないと言えそうです。
特に昨今のコロナ禍においては、住環境・室内環境の充実を求めるニーズが高まっており、広くて部屋数の多い物件が選好される傾向にありますので、築古になればなるほど土地面積・建物面積が広くなる中古一戸建ての特徴はむしろ好感されるのではないでしょうか。
コロナ禍の新しい生活習慣と住まい探しニーズ
こういったコロナ禍における新たな住まいのニーズの背景と対策について、株式会社LIXILが行った「家族時間の変化と住まいに関する調査」から検証してみたいと思います。
①防音性
自宅で過ごす時間が増加したことで、音に対して敏感になる方が増加しており、「防音機能がついた部屋が欲しい」と回答した人が45.9%となりました。
特に在宅勤務をしている方で回答割合が高くなっており、在宅勤務をしていない方の43.1%に対して在宅勤務をしている方は52.3%と約10ポイント上回る結果となっています。
テレワーク中の子どもの声や隣人への音漏れを気にする方が多く、これらはニューノーマルならではの課題と言えるでしょう。
対策としては、リフォームで内窓を取り付ける、住宅用の個室防音ブースを導入するなどが挙げられます。
②衛生意識の向上
新型コロナウイルス感染拡大防止のために、家族内で新たな習慣を取り入れた家族も増加しているようです。
戸建てにお住まいの方が取り入れた新たな習慣の上位3項目は以下の通りです。
②定期的な換気(40.7%)
③週末にまとめ買い(28.5%)
特に割合が高い①と②はウイルスを室内に入れないという衛生意識の高まりが表れたものと言えるでしょう。
対策としては、玄関クロークでコートを着脱する、玄関に手洗場を設置する、水道はすべてタッチレス水栓にするなどが考えられます。
ちなみに、こういった習慣は今後も継続していきたいと回答した人が89.9%となっており、一時的というよりは恒久的なニーズと理解して対応することが求められそうです。
調査方法:インターネット
調査時期:2020年12月実施
調査対象:全国の30〜40代既婚男女、同居家族あり(配偶者+子供)、持家(マンション、戸建て)800人