居住用の住宅や投資用の住宅など不動産売買は、ローン付けができてはじめて成立します。
売買契約の締結が終わってもまだ取引が成立したわけではありません。
事前審査がとおらず契約ができないケースや、本審査で否認され決済ができないなど、ローン付けは仲介会社にとって最重要テーマとなっています。
ローン付けがうまくいかないお客様がいる場合、どのような対策が考えられるか?審査される内容にもとづき対応方法をお伝えします。
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住宅ローンと不動産投資ローンの審査手順
住宅ローンや不動産投資ローン・アパートローンなど、不動産取得のための融資を借りるには金融機関の審査を受けます。
一般的に「事前審査(仮審査)」と「本審査」の二段構えの審査手順となりますが、事前審査を省略し本審査のみでも行うことは可能です。
事前審査では借入申込者や融資対象物件の審査をおこない、融資可能な基準を満たしているか判断します。
期間は数日間で結論が出され連絡がきます。
本審査は売買契約締結後に行うもので、売買契約書・重要事項説明書などの契約関係書類にもとづき詳細な審査をおこないます。
借入申込者の信用状況や健康状態なども審査し、借入金の返済が間違いなく可能かどうか、約定に違背した場合の貸金の回収可能性など厳密に審査し、3週間程度の期間を要することもあります。
住宅ローンの審査が否認される理由と対策
住宅ローンの審査がとおらない場合、理由が明確にされることは少ないですが、事前審査の時点で受付されないケースから、本審査まで進み最終的に否認されるなどのケースもあります。
主な否認理由と審査に落ちた場合の対策についてみていきます。
審査に落ちやすい理由
住宅ローンは国の持ち家政策により融資の間口が広く、事業資金よりも比較的融資が受けやすいしくみになっています。
それでも審査に落ちるケースがありますが、金融機関や住宅ローン商品によって審査基準が異なることに注意をしなければなりません。
1. 収入
住宅ローンの審査では何といっても「収入」が重要視されます。
年間返済額と年収との比率=返済比率が金融機関の基準に達していないと、融資希望額の変更や申込みそのものが受付けてもらえないこともあります。
返済比率は年収が高くなればなるほど有利ですが、年収が少なくなると返済比率も低くなり借入がむずかしくなります。
また住宅ローンの返済金額だけではなく、自動車ローンや他の借入に対する返済金額もすべて合算して返済比率を計算するため、既存の借入がある場合は審査がとおらないケースが多いです。
2. 勤務先と勤続年数
収入とともに重要視されるのが勤務先と勤続年数です。
勤務先はカテゴリーが分かれており、審査にとおりやすい順に並べると以下のようになります。
・非上場の大企業
・中小企業
・自営業者
公務員や上場企業勤務の方ほど、審査にとおりやすく保証料も安くなり有利です。
勤続年数は最低でも1年とする金融機関が多いですが、住宅金融支援機構のフラット35は制限がありません。
また住宅金融支援機構は勤務先や雇用形態(非正規・パート等)にも制限はなく、民間金融機関での融資がむずかしい場合、フラット35は有力な選択肢となっています。
3. 個人信用情報
過去にクレジットやローンの滞納などがあり、信用情報機関に事故情報がある場合は、審査がとおらない可能性が高くなります。
4. 年齢
申込み可能な年齢制限があり完済時の年齢にも制限を設けているのがほとんどです。
完済時年齢の基準が満たせない場合は、返済期間を短くしなければならず返済比率が高くなり、審査基準をオーバーすると審査はとおりません。
5. 健康状態
民間金融機関では団体信用生命保険の加入が条件となっていることがほとんどです。
事前審査(仮審査)で承認されても本審査で承認されないケースのなかには、生命保険に加入できないことが理由である場合が多くみられます。
6. 担保価値
住宅ローンの対象となる物件はほとんどの場合、都市計画区域内の土地+建物であり担保価値が低く審査がとおらないといったケースは少ないです。
借地の場合でも融資が可能な金融機関はあり、担保評価で審査がとおらないケースは稀なことと考えられます。
7. 自己資金比率
現在は頭金なしの融資も多くなっており、自己資金の比率を審査基準にしているケースはほとんどないと思われます。
しかし自己資金がない場合は返済金額が多くなり、返済比率が基準内に納まらず審査がとおらなくなることはあり得ます。
審査を通す対策
住宅ローンの審査がとおらない場合は、いくつか異なる金融機関に申込むとうまくいくケースもあります。
住宅ローンを扱う金融機関は、都銀・地銀・信託銀行・労金・信金・信組・農協・ネット銀行と種類もたくさんあります。
またフラット35に変更すると審査がとおりやすいことも見逃せません。
審査は金融機関がおこなうこともあれば、保証会社の審査が結果に大きく影響することもあります。
金融機関によって保証会社が異なることも多く、審査の結果はまちまちです。
複数の金融機関に申込んでも審査が通らないというケースはあります。
・返済比率
この2つの要因が多いと感じます。
またレアなケースですが健康状態がネックとなり本審査が通らず、生命保険の加入が必須ではない金融機関に変更して融資を受けた事例もあります。
勤続年数や返済比率がネックになるケースでは、2年ほど待って年収が増加してからチャレンジするといった、柔軟な考え方が必要です。
不動産投資ローンが否認される理由と対策
不動産投資ローンは一般的に住宅ローンよりも審査が厳しいと言われます。
審査する項目は住宅ローンと似ていますが、借入する目的が違うため重視する項目には優先順位があるようです。
審査に落ちやすい理由
不動産投資ローンやアパートローンは事業性融資のため、融資対象物件の資産や収益性が重視されますが、借入申込者の属性も同様に審査されます。
家賃収入が不足した場合は別の収入や預貯金による返済が必要となり、収入や勤務先などの属性が高いほど審査は通りやすくなります。
審査に落ちやすい理由について優先順位の高そうな項目からみていきます。
1. 担保評価
土地・建物の評価額から金融機関は担保評価額を算定します。
融資可能額は担保評価額をベースにし、さらに属性により担保評価額を上回るケースもあれば、下回るケースもあります。
そのため借入希望額が担保評価額を上回るほど審査は厳しくなります。
2. 収益性
ローンの返済原資は家賃収入が原則です。
事業計画書において家賃収入が返済額に満たないなどは論外であり、修繕費や租税公課などの支払のあとも、充分な利益がでる状態でなければ審査は通りません。
返済金額と家賃収入金額の比率を返済比率といいますが、50%前後で審査する例が多いようです。
3. 収入
給与収入や所有する他の物件からの家賃収入、不動産以外の個人事業の所得など、申込者の収入がある程度安定していることが必要です。
そのため前年だけの収入確認ではなく、2~3年間の収入状況を確認することが多いでしょう。
住宅ローンのような年収に対する返済比率を審査することはないですが、融資対象物件からの家賃収入がなくても、十分生活できる程度の収入は必要でしょう。
4. 勤務先と勤続年数
勤務先は属性のなかでも重要な審査項目であり、一般には次のような優先順位があるとされています。
・非上場の大企業
・中小企業
・自営業者
勤続年数は長ければ長いほど安定性があるとみられます。
反対に1年未満や転職を繰り返しているなどは厳しくなるでしょう。
5. 年齢
明確な年齢制限や完済年齢条件を設定する金融機関は少ないと思われますが、不動産投資や賃貸経営が可能な年齢と、融資対象物件以外の収入が減少する年齢は考慮されます。
給与収入のある場合は、定年退職を迎える年齢がひとつの区切りとみなされるようです。
審査を通す対策
審査に通らなかった場合の対策は指摘された事項についての改善ですが、具体的な項目について明らかにしない金融機関もあります。
「総合的な判断で・・・」などの表現をされるケースもあり、かなりむずかしい面もありますが、できるだけ融資条件に合わせる努力は必要です。
担保評価や収益性あるいは属性の評価が悪い場合、自己資金を増額し融資希望額の減額を図る必要があります。
自己資金に限界がある場合は、投資額の少ない物件に変更することも考えなければならないでしょう。
勤続年数など金融機関の内部基準に合致しないというケースでは、勤続年数が基準を超えるまで2~3年待つ必要があることも考えられます。
また不動産投資などへの融資は金融政策の影響を受けることもあり、2019年の不正融資が明るみになって以来、金融機関の融資姿勢そのものが厳しくなっていることが原因で審査が通らないことも考えられるのです。
そのような場合は数年間様子をみて、金融環境が改善するのを待たねばならないことも考えられます。
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まとめ
ローン審査は100%大丈夫ということはありません。
属性がよく絶対大丈夫と思われたお客様が、10枚を超えるクレジットカードを保有しておりキャッシング歴はないのですが、すべてのカードを解約して審査がやっと通ったという事例もあります。
審査がとおらない理由にはいくつかの類型があり、最低限次のポイントは事前に確認しておくことがよいでしょう。
2. 自動車ローンなどの既存借入
3. キャッシング枠のあるクレジットカード
4. 生命保険に加入できない持病の有無
物件の内容よりも申込者の属性に係る項目に落とし穴があります。
注意したいものです。
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