中古マンション購入者が不動産会社に求めているものは何か?「住宅市場動向調査」を検証!

国交省が平成13年度から毎年実施している「住宅市場動向調査」。

先般、最新の調査結果となる令和2年度版が公表されました。

同調査は、住み替え・建て替え・リフォームを行った世帯を対象に、住み替え・建て替え前後の住宅・世帯の状況などの実態を調査したものです。

今回は、この「住宅市場調査」の結果に関する特筆点を取り上げ、中古マンション購入・取得世帯の動向について考えてみたいと思います。

■国交省「住宅市場動向調査」(令和2年度)概要
調査対象:全国で2019年4月~2020年3月に住み替え・建て替え・リフォームを行った世帯(リフォームのみ三大都市圏)
調査数:3,794サンプル
調査期間:令和2年9月1日〜12月14日

住宅市場動向調査の結果分析

「立地環境が良かった」が約10ポイント減少

以下のグラフは、国交省「住宅市場動向調査」から、中古マンションの購入を選択した理由の上位5項目を抽出し、直近5年間の結果と比較したものです。

中古マンション,購入,ニーズ

引用:国交省「住宅市場動向調査」(グラフは筆者が作成)

各項目で大きな変動はありませんが、「住宅の立地環境が良かったから」(グラフ赤)はここ数年6割程度を維持していましたが、今年度は昨年の63.1%から54.8%まで数字を落としています。

中古マンション市況を見ると、成約数が増加する一方で、在庫物件数の減少といった状態が続いていますので、選択肢が限られた中で物件を選んでいる状況がこの結果に表れていると言えそうです。

物件情報の収集は「不動産業者で」が最多

以下のグラフは、物件に関する情報収集方法の上位5項目を抽出し、直近5年間の結果と比較したものです。

中古マンション,購入,ニーズ

引用:国交省「住宅市場動向調査」(グラフは筆者が作成)

物件の探し方は「不動産業者で」(グラフ青)が最多、「インターネットで」(グラフ赤)が次点となり、両者ともここ数年は横ばいで推移しています。

その一方で、「新聞の折り込み広告で」(グラフ緑)の落ち込みは激しく、5年前の約1/3程度となっています。

売主・買主ともにリフォームを行う割合が増加

以下の表は、中古マンション購入後のリフォーム状況について、直近5年間の推移をまとめたものです。

中古マンション,購入,ニーズ

引用:国交省「住宅市場動向調査」

中古マンション購入時に売主によるリフォームが施されていたケースは、直近5年間で増加傾向にあり、令和2年度は52%で過半数を占めました。

続いて、以下の表は、中古マンション購入前後のリフォーム状況と築年数についてまとめたものです。

中古マンション,購入,ニーズ

引用:国交省「住宅市場動向調査」

築10年以内の物件の「リフォームなし」の割合は50%となっているのに対し、築11年〜20年では、20%〜30%程度まで低下しています。

内訳を見ると、築11年前後の「購入後のリフォームのみ」が16.7%→30.8%と伸び幅が大きくなっていることがわかります。

50歳代以上の中古マンション取得者が増加傾向

以下の表は、中古マンション取得世帯主の年齢について、過去5年間の結果の推移をまとめたものです。

中古マンション,購入,ニーズ

引用:国交省「住宅市場動向調査」

中古マンション取得世帯のボリュームゾーンは30代〜40代で、全体の過半数を占めているものの、平成28年〜30年度では6割近いシェアだったのが、直近2年間は50%台前半で推移しています。

その一方で、50歳代以上が4割近くまでシェアを伸ばしているほか、直近5年間で減少傾向にあった20歳代以下が5年前の水準までシェアを回復しています。

住宅市場動向調査結果まとめ

ここまで、「住宅市場動向調査」の結果から特筆点をピックアップしました。ポイントは以下の通りです。

・中古マンションを取得した理由で「住宅の立地環境が良かったから」の割合が低下している

・物件の探し方は「不動産業者」「インターネット」が中心。「新聞の折り込み広告で」の落ち込みが激しく、5年前の1/3程度まで減少

・売主によるリフォーム物件が過半数を占め、買主によるリフォームは、築11年以降の物件で行われる割合が高まる

・世帯主は30代〜40代が最も多いものの、他世代の割合が増加傾向にある。特に50歳代以上のシェア拡大が顕著

購入の決め手を求めて「不動産業者で」情報収集を行う

中古マンション市況をマーケット全体で見ると、成約数・成約価格共に上昇傾向にあり、在庫の消化が進んでいます。

そのため、少ない選択肢の中から決め手を欠いたまま購入する・しないの判断を行っている状況が「住宅の立地環境が良かったから」の減少に表れているのではないでしょうか。

インターネット上の情報だけで購入の決め手が見つからず、+αの情報を求めて「不動産業者で」の情報収集を行っていると考えられ、その割合が高くなっている(中古戸建ては「インターネットで」の割合の方が高い)ことの一因になっていると考えられます。

そういったエンドユーザーに対して、コミュニケーションを通じた現状把握を手助けし、まだ気づいていない課題やニーズの発見、費用対効果の検証などを通じた納得感のある提案を行うことが、今後より重要になっていくでしょう。

その際、ポイントになるのはマーケティングにおける環境分析の「3c」にあると考えます。

3cとは「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの頭文字を取ったもので、それぞれの視点で物件を分析することで有効な戦略立案が可能になるとされています。

(株)東京カンテイの調査「眺望の価値を可視化する」

3c分析の一例として、(株)東京カンテイの調査「眺望の価値を可視化する」から、方角によるタワーマンションの一般的な価格差を大きく上回る値付け事例をご紹介します。

以下の表は、東京都港区三田に所在するマンションの平均坪単価を階別・開口部の向きごとに見たもので、各階の南向きの平均坪単価を100として比較しています。

◼︎北東側に東京タワーがあるマンション(港区三田)の平均坪単価比較(一部を抜粋)

南向き 東向き 西向き 北向き
33階 100 103.0 122.4 90.8
32階 100 非分譲 139.5 103.6
31階 100 非分譲 139.3 103.7
30階 100 119.2 102.9 101.0
29階 100 119.5 103.1 101.2
28階 100 119.4 103.5 101.7
備考 各階の南向きを100として比較 東京タワービュー 31階以上で東京タワーの一部が見える 東京タワービュー

引用:東京カンテイ「眺望の価値を可視化する」

一般的には、条件が同じであれば、南向きの物件の方が坪単価は高くなりますが、「東京タワービュー」という付加価値によって北向きや西向きの物件が坪単価で南向きの物件を上回っており、物件によっては40%程度の価格差が生じています。

中古マンション購入者が不動産会社に求める「購入の決め手」

マーケティングと一口に言っても、そのプロセスは多岐に渡りますが、この事例は市場調査と価格設定を3cの観点で行ったもので、東京タワービューの市場における希少性、競合物件との比較、顧客における東京タワービューの価値を3cの視点で規定したものと言えるでしょう。

その意味で、「マーケティング」は誰も気づいていない価値をみつけることであり、中古マンション購入者が求める「購入の決め手」になりうるものと言えるでしょう。

人口減少社会においては、「ものが良いだけでは売れない時代」とも言われていますので、どれだけ効果的なマーケティングができるかがポイントになります。

3c分析を活用することで、貴社の課題や今後の戦略が可視化され、物件ごとのマーケティングによって販売戦略がより効果的なものになるでしょう。

◼︎中古マンションを選択した理由(複数回答、上位5項目を抜粋)

平成28年度 平成29年度 平成30年度 令和元年度 令和2年度
価格が適切だったから 71.6% 69.20% 60.2% 65.10% 67.1%
住宅の立地環境が良かったから 59.0% 59.70% 60.5% 63.10% 54.8%
マンションだから 35.8% 42.50% 37.7% 40.40% 42.5%
住宅のデザイン・広さ・設備等が良かったから 35.2% 35.40% 28.2% 34.40% 30.2%
昔から住んでいる地域だったから 24.5% 30.50% 25.5% 23.90% 23.4%

◼︎物件に関する情報収集方法(複数回答、上位5項目を抜粋)

平成28年度 平成29年度 平成30年度 令和元年度 令和2年度
不動産業者で 49.0% 53.2% 52.5% 53.9% 54.4%
インターネットで 38.1% 32.5% 42.7% 43.9% 43.70%
知人等の紹介で 18.1% 22.1% 11.3% 11.5% 13.9%
新聞等の折り込み広告で 22.3% 17.5% 13.4% 9.0% 9.1%
住宅情報誌で 11.9% 10.4% 6.5% 5.7% 4.8%

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