都心部を中心に新築戸建て分譲事業などを手掛けるオープンハウスが、同社で住宅を購入した利用者が電気料金やガス料金などを一括で引き落とせるネット銀行「おうちバンク」の設立を発表してから約4か月が経ちました。
おうちバンクとは、電気やガス、ネットなどの住宅に付随するサービスの料金を同サービス内で引き落とした際にポイントが付与される仕組みになっており、将来住宅をリフォームする際の代金に充当できる仕組みを想定しているサービスです。住宅の購入だけでなく日常生活からリフォームに至るまで、長期的なライフプランを支援するプラットフォームとなっています。
画像はFinTech Journalより
オープンハウスがおうちバンクの運用を開始した理由は、エンベデッド・ファイナンスによる収益化構造の拡張や購入ハードルの引き下げ、顧客のリピート推進などに留まりません。オープンハウスがおうちバンクの開設に際して最も警戒している未来は、「新築住宅が主流ではなくなる」という世界線です。
急激な人口減少や世界的な資材価格の上昇、さらには日本政府の脱炭素社会への舵取りによって、新築住宅の需給は共に減少しリフォームなどの既存の住宅を前提にしたサービスの供給が主流になってくると考えられているのです。リフォームニーズに的確に対応するには所有する家の属性や家族構成などによって個別のマーケティングが必要となってくるため、購買データを蓄積し、分析するシステムを取り入れる必要が出てきます。このようなシステムの構築に、BaaS(Banking as a Service)を利用した自社内金融サービスが大きな役割を果たすのです。
「おうちバンク」はリフォームが主流となるこれからの不動産業界でも、オープンハウスが消費者のニーズを絶えず捉え、業界内でもプレゼンスを発揮するための重大な施策と言えます。今後ゲームチェンジがおきた際でも安定した収益を生み出すために、同サービスは大いに活用されていくでしょう。また、オープンハウスを先行事例として不動産業界全体としても金融システムの取り込みが進んでいくことが予想されます。