不動産業界はゼネコン、デベロッパー、不動産仲介、不動産管理など、色々な業種が集まって成り立っているため、業種ごとの呼称、役割、関係性、違いなどが理解しづらい業界でもあります。
住宅会社と不動産業者も、似たような言葉のため一見同じような業種と思われがちですが中身は全く異なります。
今回は業界未経験の方に向けて、住宅会社と不動産業者の違いについて、その特徴や具体的な業務内容も挙げながら解説していきたいと思います。
認識は人によって若干異なりますが、本記事では住宅会社=ハウスメーカー・工務店・設計事務所、不動産業者=開発・管理・仲介(流通)として記述していきたいと思います。
住宅会社と不動産業者の違い
まず住宅会社と不動産業者の違いを完結に記載すると、下記のように分類することができます。
住宅会社はハウスメーカー、工務店、設計事務所など家造りのプロ集団。
不動産業者は開発、管理、仲介(流通)が根本となり業種は多岐にわたる。
具体的に「住宅会社」「不動産業者」を解説いたします。
住宅会社とは
住宅会社はハウスメーカー、工務店、設計事務所などを指します。
家を建てるとなったら依頼するのはこれらの会社になるでしょう。
以下にそれぞれの特徴や違いを説明していきたいと思います。
ハウスメーカー
ハウスメーカーに正式な定義はありませんが、
・工業化または建築資材や工法を規格化している
・住宅建設事業を幅広い地域で展開している
の3つを備えている企業がハウスメーカーと言われています。
国内の代表的な大手ハウスメーカーとしては
・セキスイハイム
・大和ハウス工業
・パナソニックホームズ
・ヘーベルハウス
・ミサワホーム
・住友林業
・三井ホーム
が挙げられます。
テレビCMや広告などで見聞きしてご存知の方も多いのではないでしょうか。
「住宅展示場に出展している企業」というのが一番身近な表現になるかもしれません。
ハウスメーカーのメリットとしては、個別に生じる設計や施工方法をあらかじめ統一しておくことで、品質と生産効率を高め、大量生産、工期短縮、コスト低減を図れる点が挙げられます。
また、規格化されていることでメンテナンス性も担保されており、保守専門の部門も一定以上の規模で有していることが多いので、施工後の保守点検を強みとしている企業が多いのも特徴でしょう。
研究施設が充実しているメーカーも多いので、新工法や新素材の開発、大型建築に用いられる最新工法をいち早く一般住宅に取り入れられる、などなど、企業規模をバックボーンにした戦略を目にすることが多いのも「ハウスメーカーならでは」です。
「住宅」というジャンルで一括りにされますが、細かく分類すれば一戸建てだけでも木造(在来工法・ツーバイフォー)、鉄骨造(戸建ては主に軽量)、PC造、などなどメーカーごとに採用している工法は多岐に渡りますし、アパート建設でも先述した構造による違いだけでなく、得意とする地域の建築規制に合わせた設計ノウハウを有していたりなど、想像以上に多種多様であったりもします。
各々得意分野を打ち出して他メーカーとの差別化を図っていますので、違いが気になる場合は住宅展示場まで一度足を運んでみるといいかもしれません。
工務店
地域に密着しハウスメーカーよりも狭いエリアで住宅工事を請け負う業者を指します。
近年ではハウスメーカーのように広域展開をしている例や、建築部門が大きいところでは木造だけでなくコンクリート造も手掛けて集合住宅を施工するような事例も増えていますが、工務店=地域密着というのが一般的です。
また、多くの場合で「規格化」が前提にあるハウスメーカーに対し、オーダーメイドでの家づくりを重視する傾向が強い郡です。
基本的に施工作業を自社で行いますので、「住宅会社」として列挙した3種のうち、もっとも「大工さん」という言葉のイメージに近いのは工務店でしょう。
「施工」に関する知識が豊富ですから、見た目にはわからない部分、構造に関するこだわりを持って家づくりをする場合には頼りになる存在です。
注意が必要なのはハウスメーカー以上に「多岐に渡る」ということです。
工務店ごとに得意な工法や、仕入れなれている材料は全く異なります。
(説明を簡略化するためにあえて極端な例を挙げますが)
「長年付き合っている材木屋さんがいて、ヒノキがとても安く仕入れられる」なんてこともありますし、「○○工法は任せろ」といった良い面もありますが、裏を返せば「▲▲という木材は使ったことがない」や「○○工法なんてやったことがない」という可能性もあるわけです。
従業員としても施主としても、ハウスメーカー以上に「合う合わない」が極端に出やすいことは留意したいところです。
ちなみに施主目線でよく言われるところでは、大手ハウスメーカーに比べコスト面でメリットが得やすいことが挙げられます。
TVCMやネット広告などの宣伝費、人件費や拠点維持などにかかる各種固定費など、企業規模が小さいことで得られるコストメリットが建築費の圧縮にも貢献するという理屈です。
こうしたメリットを得られることが多いのも事実ですが、規模が大きいことで得られるメリットももちろん存在するわけですから、「高い・安い」のみで良し悪しを決めず、「どちらが自分の考え方に近いか」といった視点を忘れないことが肝要です。
設計事務所
設計事務所は個人事務所規模の会社が多く、家作りの中でも企画・設計・監理をメインで行っています。
先述の工務店が「施工」に強みがあるのに対し、設計事務所は「設計」が最大の強みとなります。
わかりやすいところでは「デザイン性」を重視する場合には候補の筆頭に挙がるでしょう。
ここまでに挙がった「ハウスメーカー」「工務店」よりも少人数の企業の割合が高く、また、「建築士」であることの要求度は格段に高くなります。
ある程度の規模のある企業であれば、他業界と同様に様々な職種が必要になりますから、無資格でも就職できる可能はもちんありますが、やはり会社として「設計」を強みとするわけですから、基本的に建築士資格は持っていたほうが良いでしょう。
また一般にあまり知られていない仕事としては「監理」が挙げられます。
イメージしやすいところでは、設計図の段階で何か問題がないかをチェックしたり、出来上がった建築物が問題ないか検査をしたりなど、専門知識を用いて建築物の安全性を確保する仕事です。
「建築士として、設計・監理・デザインなどを手掛けたい!」といったお気持ちがある場合には、他の種別の住宅会社よりも設計事務所が一番イメージに近いかもしれません。
不動産業者とは
不動産業界は業種で大きく分けると以下の3つに分類することができます。
・管理
・仲介(流通)
開発
ビルや街・土地等、規模は様々ですが、不動産の開発を行っている事業者を指しています。
大規模なものでは駅や商業施設、さらには「街」規模ということもありますし、リゾート地なども手掛けることもあります。対して中・小規模なものでは、集合住宅や宅地といった、身近に家の近所で見かけるような規模のものも広義には「開発」です。
「開発」の分野は不動産業界の中でも特に規模の大きい企業が多く、業界の「花形」とも言えます。
※ちなみに、事業内容にもよりますが「デベロッパー」と呼ばれることも多いです。
旧財閥を起源とする古くからの大地主が業界の最上位に君臨しており、TOP3である三井不動産・三菱地所・住友不動産は「御三家」と呼ばれています。
また、不動産を開発した後の運用方法によって、その後の事業形態は分岐をしていきます。
開発後の物件を販売するのであれば「分譲事業」になりますし、そのまま保有し貸し出すのであれば「オーナー業」となります。
不動産を扱う以上、単純に地主であることが強みになりますので誰もが知っているような建物を保有している企業は当然に力が強く、業界内での「格」を知る上では保有物件を把握するのは近道となります。
東京駅の「丸ビル」を保有しているのは三菱地所ですし、業界に馴染みがないとご存知ない方もいらっしゃるかもしれませんが「証券取引所」を保有している安田不動産なども業界トップ層の企業でしょう。
既に挙げたもの以外で代表的なところでは、「東急」や「西武」などの電鉄会社を母体とする「電鉄系」の企業もトッププレイヤーといえます。
また、ここまではオーナー業を主に列挙してきましたが「分譲事業」で特に力の強い企業7社をまとめて「メジャー7」と呼ぶことも多いので、この呼び方と「7社がどこなのか」は把握しておいて損はありません。
[番外編]ゼネコン
ちなみに「開発」とよく混同されやすい業種として「ゼネコン」が挙げられますが、ゼネコンの領分は開発における「建設・施工」であり、似て非なる企業です。
ちなみにゼネコンの最大手5社を業界では「スーパーゼネコン」と呼称しており、鹿島建設・清水建設・大成建設・大林組・竹中工務店が該当します。
また、ゼネコン各社は傘下に不動産業者を抱えているケースが非常に多く、大成、長谷工のグループ会社は他業域でも実績が多いため不動産業界にいると耳にする機会も多くなります。
管理
デベロッパーが開発した不動産の維持・管理を請け負う業者を指します。
基本的には開発したデベロッパー傘下の子会社が、そのまま受注することがほとんどです。
扱う物件の種別と、管理の依頼元によっていくつかのパターンが考えられますが、大きく分けると「ビル・テナント管理」「マンション管理」の2種が挙げられます。
「ビル・テナント管理」は商業施設の管理を受け持ちます。デベロッパーがオーナーである状態のまま、建物管理を請け負うことが多いです。
「マンション管理」は、マンションをはじめとする住宅系施設の管理を受け持ちます。分譲された後の建物管理を、マンションを購入した所有者から請け負います。
就業する目線で考えますと、ビル・テナント管理の主なクライアントはオーナー業をしている不動産会社であり「BtoB」であるのに対し、マンション管理は不動産を購入した個人が主なクライアントですから「BtoC」の領域が広い点も大きな違いになると思われます。
また、最近では大手管理会社よりも「コスト圧縮」や「グループ企業のしがらみがない公平な外注先選定」といった強みを押し出した「独立系」の管理会社が少しずつ増えてきています。
※ちなみに、業界未経験の方にとっては身近な「賃貸管理」とは異なる業種です。「賃貸管理」については後述しますので詳細は割愛させて頂きます。
賃貸管理
貸主と借主との間に入って業務を行う点においては「賃貸仲介」と同じですが、「賃貸仲介」は「賃貸借契約の成立」を主な業務としているのに対し、「賃貸管理」は「入居~退去に関わる各種対応」までを主な業務として行っています。
賃貸管理の企業は数多くありますが、事業タイプごとに分けると以下のようになります。
土地活用系
利用されずにある土地「遊休地」を持っているオーナーに対し、活用方法としてアパート経営を提案、建築から賃貸管理までを一手に引き受ける事業スキームを主軸とする企業を指します。
特徴としては
・オーナーとの間でサブリース契約を結び、転貸借で自らが貸主になるケースが多い
などが挙げられます。
大東建託、レオパレス、スターツ等の住宅系大手のほか、近年では介護・医療系の施設、コインパーキング、トランクルーム、シェアハウスなどの業者が台頭しています。
ハウスメーカー系
事業スキームは「土地活用系」に非常に近しいですが、その中でも注文住宅の大手業者を指します。
企業名を挙げると、旭化成(ヘーベルメゾン)、積水(シャーメゾン)、ダイワハウスなどの鉄骨系メーカーや、三井ホームなどの木造2×4メーカーが最大手です。
特徴としては、自社建築である程度の利益確保ができている為、他の土地活用系と比較してサブリース契約の比率が低く提携業者に管理・仲介を委託するケースが多い点が挙げられます。
ちなみにここで言うサブリース契約とは、オーナーから不動産を借り上げ、それを管理会社から入居者に転貸(又貸し)をするアパート管理形態です。
オーナーにとっては管理事務が任せられたり空室リスクが無くなるなどのメリットがありますが、収益が減ってしまったり、一定期間の賃料見直しでのトラブル発生などのデメリットもあります。
他には、ハウスメーカー系の管理・仲介を行っている業者は地場業者が代理店である場合が多くあります。
一見するとFCに見受けられますが、FC程の縛りも恩恵も受けていないことが多いです。
賃貸FC系
こちらは賃貸特化のフランチャイズであるアパマンショップ、センチュリー21を筆頭にエイブル、ピタットハウス、ホームメイト、ミニミニ等が挙げられます。
店舗数で見てもアパマンショップは1,043店舗、センチュリー21は約1,000店舗、エイブルは813店舗と非常に大きな組織であり、認知度やブランド力も高く人気さが伺えます。
年明けから春頃にCM数が増えるのは主に賃貸業界なので、CMの印象が強い企業も多く見受けられます。
仲介(流通)
先述の「分譲」事業のその先にある事業領域で、基本的に販売された後の不動産を扱っている業種全般を指します。
最も大きな分類では「売買」と「賃貸」の2領域に分かれています。
一般的な会話の中で「不動産屋さん」と呼ばれる方々のほとんどはこの領域であることが多く、「不動産の所有者」と何らかの理由で「不動産を探している人」の間を取り持つのが主な仕事となっています。
売りたい方と買いたい方の仲介であれば売買仲介ですし、貸したい方と借りたい方の仲介であれば賃貸仲介となるわけです。
ちなみに仲介が不在でも不動産取引自体は可能ですが、「安全かつ円滑な取引」の実現のためには、相応な専門知識をもつ仲介がいたほうが良いため、必要とされている業種です。
売買仲介
売買仲介の業界上位は基本的に大手デベの子会社、メジャー7などが占めていますが、開発とは「御三家」の面々が若干異なっており、基本的には三井・住友・東急の3強となっています。
※年によって変動したこともあります。
ちなみに財閥系・電鉄系に次いで、銀行を母体とする企業の影響力が強いのもこの領域の特徴です。
銀行系の企業は、シェア率は高くないものの、大規模な案件の陰には信託銀行系の仲介業者が関わるケースが非常に多く、数少ない「デベロッパーに恐れられる」仲介業者と言われています。
その他のトッププレイヤーとしては、フランチャイズ系のセンチュリー21、ハウスドゥ、(スターツ)ピタットハウスなどが挙げられます。
中小の業者でも既存のチェーンに加盟することでネームバリューをもったブランド名を名乗ることができたり、システム面でのバックアップもあるので不動産業界でもFC事業者はそれなりの数が存在しています。
通常のチェーンよりも店舗責任者の裁量が大きく、各FC毎に本部から供給されているシステムを把握できれば営業スキームの確立もしやすいなどのメリットもあります。
賃貸仲介
業務構造は「不動産を貸したい貸主と、借りたい借主の間に入る仲介業」であり売買仲介に非常に近似していますが、実際の業務は売買と大きく異なります。
また、売買部門が強い業者は売買に注力しているケースが多く、賃貸仲介トップ業者は他業種のトッププレイヤーと共通していないのが特徴的です。
主力企業である大東建託、東建コーポレーションは、建設業や賃貸仲介業をメインとし、ミニミニ、ハウスメイトなどは賃貸仲介・管理業をメイン事業としています。
ちなみに大東建託、東建コーポレーションは、自社でアパート・マンションなどを建設し入居者募集をかけるなど、賃貸仲介をメインとしている他の会社と比べて売上高が大きいといった強みもあります。
そしてこのような大手事業者はいるものの、売買以上に地元密着の業者が強い傾向にあり、地域ごとに「この地域ならこの業者」といわれる「地場大手」業者の存在もとても根強いです。
[番外編]買取再販
中古不動産を割安で購入し、リフォームやリノベーションをして再度販売する業者を指します。
売主と買主の間に入りマッチングさせる不動産仲介業とは異なり、買取再販業では不動産会社が直接売主から物件を買い取り販売します。
また、収益構造としては購入時の仕入れ値と、リノベーション後の売却時の販売価格の差額で収益を上げます。
規模の小さな不動産業者に営業をかけた場合に、賃貸を全くしていない小規模業者があればその多くは「売買仲介」出身の「買取再販」業者の可能性が高いです。
この事業領域にも大手は存在しており、京王グループのリビタを筆頭にインテリックス、エフステージ、スターマイカ、クロニクルといった業者が有名。
また、仲介業者も買取再販事業を行っている会社が多く、中でも大京、オークラヤといったマンション特化の売買仲介業者は、買取再販に強みを持っています。
まとめ
ここまで書くと住宅会社と不動産業者は似た言葉ではありますが、業種や業務内容も異なり別のものであることが分かるかと思います。
住宅会社はハウスメーカー、工務店、設計事務所など家造りのプロ集団。
不動産業者は開発、管理、仲介(流通)が根本となり業種は多岐にわたる。
住宅会社や不動産業者は総称であり、その細かな種別を知ることで不動産業界への理解や知識も深めることができるかと思います。
不動産業者を理解する上では宅建業者への理解や知識も必要かと思うので、詳しく知りたい方はこちらの記事もぜひ参考にしてみてくださいね。