国税庁が7月1日に「路線価」を発表しました。
2022年の路線価は、全国平均で昨年の実績を0.5%上回る結果となり、地価の改善がみられました。
コロナ禍やそれに伴う経済の低迷などの影響が低下傾向にあることが伺えます。
2年ぶりの地価上昇となった今回の路線価の発表ですが、このタイミングに合わせて(株)ツクルバが「保有する不動産(自宅)の売却価格や査定に関する生活者の実態や意識を把握するための調査」を実施しました。
同調査の結果から、路線価や基準地価といった土地価格に関する発表やニュースによって、売主は保有する不動産(自宅)価格への意識が高まり、実際に行動に移している実態が明らかになっています。
そこで今回は、路線価・公示地価といった土地価格の発表について、その際の売主の行動・インサイトを分析した上で、不動産売買仲介会社が売却委任を獲得するためのポイントについて考えてみたいと思います。
56.8%が「路線価」「基準地価」の発表で自宅価格が気になると回答
以下のグラフ①は、路線価や基準地価などの土地価格の発表に際し、自宅価格への影響が気になるかどうかを調査した結果をまとめたものです。
「気になる」「少し気になる」と回答した人が合計で56.9%となり、公的機関から発表される土地価格の情報によって保有する自宅価格への意識が高まると回答した人が過半数となりました。
グラフ①(引用元:(株)ツクルバ「保有する不動産(自宅)の売却価格や査定に関する生活者の実態や意識を把握するための調査」)
ちなみに、ここでの「地価発表」とは、路線価(7月1日発表)・公示地価(3月中旬頃発表)・基準地価(9月中旬頃発表)などを指します。それぞれ国税庁・国交省・地方自体が調査主体となっていることはご存じの通りです。
自宅価格が気になったら約4割が「価格を調べる」「査定を受ける」
以下のグラフ②は、自宅価格が気になった際の行動について調査し、その結果をまとめたものです。
自宅価格が気になっても26%が「何もしない」と回答していますが、これは裏を返すと、全体の74%が何らかのアクションを起こしていることが分かる結果と言えるでしょう。
グラフ②(引用元:(株)ツクルバ「保有する不動産(自宅)の売却価格や査定に関する生活者の実態や意識を把握するための調査」)
具体的な行動をみると、「近隣の売り出し中物件の価格を調べる」(42.6%)が最多で、「WEB上の簡易査定を受ける」(39.9%)、「仲介業者の訪問査定を受ける」(18.4%)が続いています。
41.9%が「不動産売却を考えてから半年以上何もしてない」
次に(株)コラビットが行った「不動産売却に関する調査」の結果を見ていきたいと思います。
以下のグラフ③は、不動産の売却を考えてから行動に移すまでの期間を調査した結果をまとめたものです。
「1ヶ月から半年未満」が全体の36.4%を占めて最多となっており、「1年以上」(23.6%)、「1ヶ月以内」(21.7%)が続く結果となりました。
グラフ③『不動産を売ろうと思ってから、具体的な行動(不動産会社に話に行く等)に移るまでにどれくらいかかりましたか?』(引用元:(株)コラビット「不動産売却に関するアンケート」)
近年では、売却期間が長期化する傾向が指摘されていますが、不動産売却を考えてから「半年以上」何も行動していないと回答した割合は41.9%(円グラフ赤色箇所)に達しており、そのことを裏付ける結果と言えそうです。
次に、以下のグラフ④から「行動に移さなかった理由」について調査した結果を見ていきたいと思います。
最も多かったのは「特に急ぐ必要がなかった」の30.8%で、「計画通り時間をかけた」が17.2%で続く結果となっています。
グラフ④『行動に移さなかった理由はなんですか?』(引用元:(株)コラビット「不動産売却に関するアンケート」)
特筆点は、「何をすれば良いのかわからなかった」(10.9%)、「不動産売却の知識がないので調べていた」(10.6%)など、情報・知識不足による売却活動の停滞が全体の2割を占めていることです。
言い換えれば、不動産売却のポイントが分かっていれば、もっとスムーズに行動することができたと理解することもできるでしょう。
従って、この2割の層にアプローチし、ニーズの顕在化を促していくことで、不動産売買仲介会社としてのビジネスチャンスを拡げていくことができると考えられます。
検討期間が短い程、売却の満足度は高い
以下のグラフ⑤は、「不動産売却の動き出しまでの期間」と「売却活動の満足度」の相関を表したものです。
売却を考えてから行動に移すまでの期間が短ければ短い程、売却活動の満足度が高まる傾向が読み取れます。
グラフ⑤『売却の満足度×動き出しまでの期間』(引用元:(株)コラビット「不動産売却に関するアンケート」)
「非常に良い」「それなりに良い」売却活動ができたと回答した人のうち、「半年以内」に動き出したと回答した割合はそれぞれ70.4%、62.3%なっています。
とりわけ、「非常に良い」と回答した人のうち、「1か月以内」と回答した割合は35.2%で約3人に1人が回答する結果となっています。
日頃から不動産の売却に関心を持ち、価格や売却プロセスを理解するなどの準備を怠らないことが、売却活動の満足度の向上に欠かせないことが分かる結果と言えるでしょう。
まとめ「売主に最適なタイミング・トピックでアプローチすることが重要」
ここまで、各社の調査結果から、土地価格の発表とその際の売主の行動・インサイトを検証・分析してきました。
ポイントは以下の通りです。
・自宅価格が気になった売主は、「販売価格の調査」「売却査定」など、自宅の売却価格を把握するための行動を起こしている
・売却を考えてから実際に売却活動を開始するまで「半年以上」行動を起こしていないユーザーが4割程度いる
・行動を起こさない理由として「知識不足」「何をすれば良いのか分からない」などが一定数を占めている
・売却を考えてから実際に行動を起こすまでの期間が短い売主程、売却活動の満足度は高まる傾向にある
これらのポイントを踏まえると、売却活動のノウハウ・情報を追客活動で共有することによって、売主の売却活動を促していくことは、不動産売買仲介会社はもとより、売主自身にとっても有益であると言えそうです。
売主へのアプローチのポイント!
昨今では、不動産購入・売却の検討期間が長期化していることもあり、売買仲介業務における追客をMA(マーケティング・オートメーション)ツールを活用して自動化する売買仲介会社様が増えています。
そのため、エンドユーザーは多数のメールを受信することとなり、競合他社様やその他のメールに貴社のメールが埋もれてしまうといったケースが発生し、結果として、顧客にとって重要な情報が適切なタイミングで届かないといったことも少なくないようです。
そこで重要になるのは、顧客目線での5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・どのように)を今一度徹底し、貴社からの情報がニーズに合った重要度の高いものであるという認知を顧客に定着させることです。
今回の調査結果を踏まえると、顧客との接点を持つタイミングとしては、不動産売却への関心が高まる地価発表が一つのポイントになりそうです。
地価発表で自宅の価格が気になった売主は、ポータルサイトや不動産会社のHPで所在地周辺の物件価格をチェックする傾向にあります。
そのタイミングに合わせて物件公開を強化する、一括売却査定サービスの利用・強化などを図ることで、新規顧客の効果的な誘導につなげることができるでしょう。
既存顧客に対しても同様に、自宅の価格に関心が高まるタイミングを逃すことなく、商圏の価格動向・査定実績、未公開物件情報など、貴社の独自性の高い情報を「臨時号」「特別配信」といった形で行うと効果を高めることができそうです。
直近の地価発表は、9月中旬に地方自治体が発表する「基準地価」が予定されています。
不動産売買仲介会社として、売主に対して不動産売却に関する知見・情報を共有し、信頼を獲得しつつ、早期のアクションを促していく絶好の機会となりますので、今から準備を進めておくことをおすすめいたします。
・(株)ツクルバ「保有する不動産(自宅)の売却価格や査定に関する生活者の実態や意識を把握するための調査」概要
調査方法: web調査 (株式会社ジャストシステムが運営するfastastを利用)
調査期間: 2022年6月15日~17日
調査主体: 株式会社ツクルバ
調査対象: 一都三県在住で、自身か配偶者(パートナー)が保有するマンションに住む20~60代男女
有効サンプル数: 208名
・(株)コラビット「不動産売却に関するアンケート」調査概要
調査対象:全国の戸建て・マンション・土地などの不動産を売却した人
調査方法:Webアンケート
調査期間:2022年4月20日~4月22日
回答人数:530名