最近は、物件データを集積して査定賃料を弾き出すのが主流になってきた。
こういったサービスは不動産会社でも多く利用されるようになったし、さらに大家のかたも利用されるかたは増加している。
ひと昔前の賃料査定サービスとは異なり、最近の査定サービスはかなり精度が高い印象である。
そもそもの参考とするデータ量も膨大だし、算出するロジックもしっかりとしている。
かなり実際の募集賃料に近い数値が弾き出せるのではないだろうか。
では、世の中の不動産会社の全てがこうした査定サービスを使用しているかと言われれば、まだまだな状況ではある。
コスト的な部分もあるし、査定件数の少なさも影響しているかもしれない。
しかし長い将来を見ていくと、この自動査定システムはかなり一般化することは間違いないだろう。
しかしあくまで私見だが、不動産の現場では「厄介な案件」や「特殊な案件」が市場には多く転がっている。
瑕疵物件が一番わかりやすいパターンだが、それ以外でも日照の問題、騒音の問題、壁の薄さ、管理状況などなど、査定のブレを生み出してしまう要素は数え上げればキリがない。
またこうした特殊事情を自動で査定金額に反映するのはまだ技術的に難しいのかもしれない。
今回はそんな特殊な条件でも、ある程度現実に即したスタンダードな賃料査定方法を伝えたい。
多くの不動産会社が既に実施しているかもしれないが、改めて確認して頂けたら幸いだ。
1.査定案件の把握
まず賃料査定のファーストステップとして、「査定案件の把握」という大前提のところがある。
立地からはじまり、新築であればプラン、既存物件であれば現状の間取り状況を確認する。
とにかく手持ちのデータだけで確認できる内容を徹底的に見ていくことを忘れてはならない。
居室ひとつとっても、柱がデッドスペースになっていないか、また収納の大きさは充分に取れているかなどを細かく確認する。
プランの詳細や間取りが確認できないのなら致し方ないが、まずは「ある情報をどこまで理解するのか」が重要なところだろう。
2.周辺相場の調べ方
次に周辺相場の調べ方である。
コツとしては「広域」から相場情報を見ていくことである。
最終的には近隣の相場や競合物件を調べていくことになるが、いきなり対象物件の近くを調べると「木を見て森を見ず」になってしまう。
逆に広域で相場を調べることで、対象物件のエリアやトレンドがわかりやすくなる。
たとえば東横線の横浜に近い物件に対して、渋谷を起点に調べることといきなり近隣物件のみ調べるのでは、情報の掴み方が変わってくる。
まずは一旦広域の相場観を掴むことだ。
次の相場調査のステップとしては、当然として近隣相場を調べることである。
ここでのポイントは、駅までの距離、築年数、居室の広さ、そして設備のバランスである。
ここでの周辺物件の調べ方のコツは「ポータルサイトでもしっかりと調べる」というところだ。
よく業者間サイトのみで相場を調べるかたも多いが、なかなかそれだと精度は悪くなる。
とにかくエンド向けサイトを参考にすることがコツのひとつであることは、間違いない。
ちなみに、公的に発表されている駅賃料相場だと、新築物件の供給や大量の退去者の物件があったりすると、数値に偏りがうまれてしまう。
エンドユーザー向けのサイトから同条件で検索をかけてみて、条件を緩めたり、少し駅までの距離を見てみたりなどが相場を調べるポイントである。
3.一次査定の設定
上記取り組みを行い、まずは「一次査定」(仮)を実施する。この一次査定の数値を「基準値」として考える。
すぐには査定賃料を確定しないことが重要である。
4.ヒアリング
一次査定が終わったら、次にヒアリングだ。
基準値の賃料を基に、知り合いの社内メンバーや、同業者の知り合いなどにヒアリングを行う。
ここだけの話かもしれないが「受託する、しない」というところにあまり関係のないかたのヒアリングだと、かなり意見がネガティブになるような気がする。
「この場所だと、厳しいのでは。。」「少し高いのでは。。。」こういった意見が基本的に多いような印象を受ける。
しかしそれでもこうした意見をしっかりと聞くことでなんとなくのリーシングのイメージが付き始めるだろう。
ネガティブな意見でも、参考になるケースは多くある。
5.現地調査
次のステップは、現地調査だ。
時間がないかもしれないが、なるべく現地に見に行くことは忘れてはならない。
物件現地まで一直線に直接歩くのではなく、周辺をしっかりと歩くことだ。
そして、重要なポイントとして「近隣の競合物件」もついでに見ておく。
対抗物件と思っていた物件が案外良い物件だったりすると、賃料を見直さなければならない。
また逆もしかりだ。
もし、現地に行く時間があれば是非競合物件も見てほしい。
6.二次査定
ここまで調査を行ったうえで、査定物件の「独自の特徴」を加味し、二次査定を実施する。
日当たりだったり、遮音性だったり、管理状況だったりなど、なかなか「可視化されていない」部分を加味して一次査定の金額を増減させる。
また場合によっては免責期間の希望や、初期費用などの条件も併せて盛り込んでおく。
以上のような対応によりかなり精度の高い査定ができる筈だ。
是非試してみてほしい。
しかしながら、実際のところ精度の高い査定を実施すれば、確実に物件を受託できるというわけではない。
結局のところ案件を獲得するためには、最終的な大家への提案力と関係性が重要になってくる。
大家との関係性を良好にしなければ、なかなか査定も提案しづらいだろう。
こうした現実的な側面も忘れてはならない。
とはいえ、大家とのしっかりとした関係性を築き、説得力のある賃料提案を行うことで、お互いの関係性もより強固になる。
是非、改めて自社の査定方法を見直してみてほしい。