土地取引における課題はさまざまで、容易に解決できることも、そうではないこともたくさんあると思います。
その中で、土壌汚染は、土地の売買価格に直接影響する重要な課題です。
より深刻な土壌汚染は、解決不可能となるケースも見られます。
土地取引の終盤で土壌汚染問題が表面化した場合は、大きなトラブルに発展し、契約が白紙になることも少なくありません。
土地取引において、土壌汚染のリスクや課題は、事前に把握した方が賢明です。
ところで、土壌汚染問題は専門性が高く、難しい話題であるがゆえ、多くの人が誤解しています。
「土壌汚染の可能性がない土地は、基本的に土壌汚染リスクはない」
心配すべきは、メッキ工場やクリーニング店など、有害物質を使用している施設です。
先祖代々所有していた住宅や畑、市街地化した後の駐車場など、土壌汚染を懸念する施設が一時期もない場合は、土壌汚染リスクはないと考えてよいでしょう。
大事なのは、現在は駐車場でも、過去が工場であれば、土壌汚染リスクがあることになります。
それでは、土壌汚染リスクを知る方法はあるのでしょうか?
土壌汚染リスクを知る方法として、地歴調査(フェイズ1)があります。
そこで本稿は、土地取引における土壌汚染トラブル回避方法の一つとして、地歴調査をご説明します。
地歴調査(フェイズ1)の内容
地歴調査は、過去に遡って土地利用を調べ、土壌汚染が懸念される施設の有無を調べます。
基本的に机上の調査で、化学分析は行いません。
下記の4項目が代表的な調査で、これらの情報を総合的に考察し、土壌汚染リスクを評価します。
① 土地利用者の調査
住宅地図、地形図、航空写真を利用して、過去の土地利用を調査します。
過去に遡っても、何ら変化のない土地もあれば、今では想像できないほど激変した土地もあります。
その土地の経緯を知ることで、土壌汚染が懸念される施設がないかを調べます。
② 土地所有者の調査
法務局から土地謄本(閉鎖登記簿、土地台帳)を入手し、過去に遡って土地所有者を調べます。
所有者の変遷を知るだけではなく、住宅地図刊行以前の情報を知る重要な資料です。
古い土地では、明治期から情報あり。
③ 現地調査
現在の土地の状態を知ることは重要です。
土地利用者の調査で、土壌汚染が懸念される施設の存在が明らかになった場合でも、その土地の管理状態によっては土壌汚染リスクが高まる場合もあります(許可なく土地や建物に立ち入ることはありません)。
跡地も適切な管理が必要です。
④ ヒアリング(聴き取り)
土壌汚染が懸念される施設が明らかになった場合でも、その施設の実態まではわかりません。
例えば、金属加工業の会社が土地を所有・利用していても、そこが工場、事務所、倉庫、駐車場、社員寮など、土地利用の状況により土壌汚染リスクが異なります。
また、クリーニング店であっても、有害物質を使用・不使用によって、土壌汚染のリスクが異なります。
既に法人が解散し、行方を追えない場合もありますが、ヒアリング対象者がいる場合は、詳しく情報を入手します。
※緑字:工場でも、有害物質の不使用がヒアリングで確認できれば、土壌汚染リスクなし
土壌汚染が懸念される業種(一例)
一概に工場といっても、さまざまな業種があります。
下表が主な業種とその土壌汚染リスクの一例です。
まとめ
土地取引におけるトラブルを回避するため、その土地の特性に応じた事前の調査が必要です。
元来より住宅や駐車場の土地売買において、土壌汚染調査を行うとしたら、地歴調査で充分です。
一方、現時点で土壌汚染が懸念される工場の場合は、地歴調査では不足で、土壌汚染調査(フェイズ2)が必要になります。
土壌汚染リスクを正しく知るためには、その土地にふさわしい調査を選択することが重要です。