今回は、(株)スペースリーが行った「不動産会社のSNS利用実態」に関する調査などを参考に、媒介獲得のためのSNS活用のポイントについて考えてみたいと思います。
日本国内のSNS利用者は8,000万人を突破
まず初めにSNSの利用状況について確認しておきましょう。
株式会社ICT総研が行った「2022年度SNS利用動向に関する調査」によれば、SNSの利用者数は2022年末で8,270万人に達し、普及率は83.2%となっています。
SNSの利用目的では、「仕事や趣味などの情報収集」が最多の 44%、「知人同士の近況報告」が 37.1%、「SNS を通じて、人とつながっていたい」が 23.6%と続いています。
従来は近況報告などのコミュニケーションツールだったSNSですが、昨今では情報収集といった実用的な目的で利用する人が増えているようです。
不動産関連では、InstagramやYouTubeなどで住まい探しをする方が増えており、SNSで住空間やインテリア、周辺環境などを確認して、住み替え後の暮らしをイメージするという方も多いようです。
住み替えの時期や目的が固まっている顕在層はもとより、「良い物件があれば住み替えたい」といった潜在層への訴求において、SNSは欠かせないツールと言えるでしょう。
不動産会社におけるSNSの活用状況
33%が「今後SNSからの集客を強化したい」と回答
次に、不動産各社におけるSNSの活用状況について確認していきたいと思います。
以下のグラフ①は、(株)スペースリーが行った「不動産会社のSNS利用実態」において、現在最も集客ができている方法を、グラフ②は今後注力していきたい集客方法をそれぞれ調査したものです。
現在最も集客ができているのは、「ポータルサイト」が最多で52.5%となり、「自社サイト」(26.5%)が続く結果となりました。一方で、今後さらに注力していきたい集客方法は、「自社サイト」が最多で58.0%、「ポータルサイト」(48.0%)、「SNS」(33.0%)が続いています。
<グラフ①>最も集客ができている方法
引用元:(株)スペースリー「不動産会社のSNS利用実態」
<グラフ②>今後より力を入れていく集客方法
引用元:(株)スペースリー「不動産会社のSNS利用実態」
SNSの活用目的「自社サイトの集客」73%
では、不動産会社がなぜSNSを活用したいと考えているかについて考察していきましょう。
以下のグラフ③では、SNSの活用目的について調査した結果をまとめています。
<グラフ③>SNSの活用目的
引用元:(株)スペースリー「不動産会社のSNS利用実態」
最も多いSNSの活用目的は、「自社サイトの集客」で73.0%を占める結果となりました。
次いで「ブランディング」(38.3%)、「直接のやりとりをするための集客」(15.7%)となっています。
なお、SNS広告の月々の費用について聞いたグラフ④を確認すると、半数がSNS広告に費用を「かけていない」と回答しています。
より効率よく自社サイトへの誘導を増やす手段としてSNSを活用したいと考えていることが分かる結果と言えるでしょう。
<グラフ④>SNS広告の毎月費用
引用元:(株)スペースリー「不動産会社のSNS利用実態」
SNSの運用課題とその解決方法
次に、実際にSNSを運用している不動産会社が抱えている運用課題とその課題解決についてどのようにアプローチしているかについて見ていきましょう。
以下のグラフ⑤はInstagramの運用課題について聞いたものです。
<グラフ⑤>Instagramの運用課題
引用元:(株)スペースリー「不動産会社のSNS利用実態」
SNSでの集客に注力する不動産会社は増加傾向にありますが、その一方で、SNSへの「投稿コンテンツの品質」(42.4%)、「フォロワーが集まらない」(32.2%)、「動画当の投稿コンテンツ制作の手間」(27.1%)といった課題を抱えている不動産会社が多いようです。
SNSでの不動産会社間の競争が激化し、「コンテンツ制作の手間」をかけて「コンテンツの質」を高めないと「フォロワーが集まらない」という状況にあると言えそうです。
以下のグラフ⑥は、(株)サービシンクが不動産業者に対して行った「2022年の総括と2023年の展望調査」から、SNSも含めた「デジタルマーケティングにさらに注力していく」と回答した不動産会社に対し、その具体的な方向性について聞いたものです。
<グラフ⑥>
引用元:(株)サービシンク「2022年の総括と2023年の展望調査」
最も多い回答は、「マーケティング人材の強化・体制拡大する」が47.3%、「予算を増やす」が44.6%、「外注を増やす」が28.4%となりました。
デジタルマーケティングの重要性を理解しつつも、人手不足が続く不動産業界において人材育成・体制拡大が難しいケースが多く、外注を検討する不動産会社が一定数いることが分かる調査結果となっています。
SNS運用の外注化のメリット/デメリット
SNSの運用を専門業者に外注した場合、SNSアカウントの開設、投稿するコンテンツの企画・作成(ハッシュタグの設定含む)、コメントの返信、アクセス分析などを代行し、定例ミーティングなどを通じて、運用状況を適切にレポーティングするなどのサービスを提供することが一般的です。
その一方で、外注した場合のデメリットは費用がかかることに加えて、社内にSNS運用のノウハウが蓄積されないことにあります。
プロへの外注によって、効率的なSNS運営やフォロワーの獲得など、短期的な成果が見込めるでしょう。
しかし、SNSの利用者数は今後も高いレベルで推移することが予測されています。
中長期的に費用かさむことで疲弊してしまうだけでなく、ノウハウが蓄積していかないことで止めるに止められないといったリスクも考えられます。
外注を利用する場合であってもすべてを外注任せにするのではなく、社内にノウハウが蓄積されるような仕組づくりも含めた能動的な動き方をすることで、競合他社との差を詰めていくことできるはずです。
SNS活用のポイント「SNSの適切な選定」
SNSと一口にいってもInstagram、Twitter、Facebookなどに加え、昨今は動画系メディアのYouTubeやTiktokなどの異なる特徴を持ったSNSが群雄割拠している状態です。
住宅系SNSのPinterstやroomclipなど、住み替え・家づくり検討層の利用率が高いSNSなどもあり、目的やターゲットを絞り込んだ上で、適材適所にSNSを選定・活用していきましょう。
ここでは、SNSの代表格InstagramとTwitterの活用について考えてみます。
①Instagram
Instagramは視覚的なプロモーションに適したSNSです。
「映える」写真や動画による住まい・住環境の訴求などが注目を集めやすく、デザイン性の高い物件はInstagramでの訴求に最適です。
実際にInstagramで検索してみると分かりますが、♯物件情報、♯デザイナーズ物件などのハッシュタグを付して、物件画像を投稿している不動産仲介会社は少なくありません。
また、Instagramの「ストーリーズ」を活用した動画での訴求は、提供できる情報量が画像よりも多いため、より幅広く関心を持ってもらいやすくなるでしょう。
「ストーリーズ」は、撮影した写真や動画をすぐにアップすることができる機能で、スタンプやフィルターなどの加工も手軽に行うことができます。
投稿された動画は24時間で消えることも特徴の一つです。
例えば、画力の強い物件の画像は通常の投稿とし、画力よりも利便性やコストパフォーマンスに優れた物件はストーリーズで訴求するなどの使い分けも一つの使い方かもしれません。
②Twitter
Twitterは、140字以内の短文を投稿するSNSで、日本国内では約5,000万人が利用していると言われています。
文字だけでなく画像や動画も投稿することができます。
Twitterの一番の特徴は拡散力の高さにあります。
投稿が「リツイート」「いいね」されることで、幅広く拡散され、貴社を知らないユーザーに対しても情報を訴求することが可能となります。
Twitterは情報収集で使われることが多いSNSのため、ニュース系の投稿は拡散効果が高いと言われています。
ユーザーの疑問や課題を解決するような内容を意識することで、興味を持ってもらい「リツイート」「いいね!」が付く可能性を高めることができます。
物件などの直接的な訴求はもとより、不動産のプロとして、市況や生活者の住まい探しトレンド、貴社商圏の紹介など、貴社および貴社の営業担当者のブランディングにつながるような情報発信は有効だと言えるでしょう。
まとめ
今回の調査結果から、SNSがコミュニケーションツールとしてだけでなく、情報収集ツールとして幅広く利用されており、その高いニーズを取り込むべく、注力する不動産会社が多いことが分かりました。
言い換えれば、消費者の利用頻度が高いSNS上で不動産会社間の競争が激化しているとも言えるでしょう。
発信する情報・コンテンツ、ユーザーとのコミュニケーションにおいて、いかに差異化していくかがポイントとなりそうです。
上で取り上げた、株式会社ICT総研の「2022年度SNS利用動向に関する調査」調査によれば、SNSの利用者は今後も増加を続け、2024年末には8,400万人に迫ると予想しています。
用途や目的に合わせたSNSの活用が今後さらに広がっていくことから、SNSにおける住み替え検討層へのアプローチの重要性は今後ますます高まっていきそうです。
そのためにも、内製化であれ外注であれ、SNS運用体制の整備は欠かせないものとなりそうです。
外注するにしても、SNS運用の目的・ターゲットを明確にし、数あるSNSの中から最も効果的と思われるSNSを選定することなどは自社内で行うなど、上手く外注を使いこなしつつ、自社内にノウハウが蓄積できるような仕組み作りがポイントになるでしょう。
■株式会社スペースリー「SNSの活用調査」概要
実施期間:2022年10月26日(木)~11月15日(水)
回答数 :200名
調査対象:不動産関連事業者
実施方法:インターネットによる調査
■株式会社サービシンク「2022年の総括と2023年の展望調査」概要
調査方法:IDEATECHが提供するリサーチPR「リサピー®︎」の企画によるインターネット調査
調査期間:2022年11月10日〜同年11月11日
有効回答:不動産業のWeb・デジタルマーケティング担当者、経営者107名