ホームページやSNSでのコンテンツを活用した不動産集客において、「PV数が少ない」「PV数はあるものの反響が獲得できない」といったご相談をいただくことが増えています。
昨今では、「コンテンツ」を活用したweb集客に力を入れている不動産会社さま・ハウスメーカーさまが増加しており、不動産・住宅関連のコンテンツが量産されています。
そのため、不動産に関する一般的なノウハウを解説するだけのコンテンツでは、差異化が難しくなり、結果的に検索結果一覧の中に埋没してしまうといったことも少なくありません。
そこで今回は、買主/売主の不動産会社選びに関する各種調査結果を取り上げ、「選ばれる1社になる」ためのコンテンツづくりのポイント・アイデアについて考えてみたいと思います。
不動産会社・ハウスメーカーのweb担当の皆さまにおけるコンテンツ作成のアイデアになれば幸いです。
<この記事のポイント>
- 不動産売却時の「不動産会社選びのポイント」「不動産会社の探し方」
- 不動産購入時の「訪問した不動産会社数」と「不動産会社の決め手」
- 不動産会社に求めることを踏まえ、買主/売主に訴求すべきポイント
<こんな方におススメ!>
- webサイトやSNSでの集客に悩む不動産会社・ハウスメーカーの担当者
- 不動産集客におけるコンテンツのアイデアを探している方
【1】選ばれる一社になるためのポイント①「不動産会社の選び方」
以下のデータ①は、住み替えのために国内のマンションを売却したことがある人に「不動産会社を選ぶうえで重視したこと」を調査した結果をグラフで表したものです。
データ①不動産会社を選ぶうえで重視したこと(引用元:アットホーム(株)「マンション売却に関する実態調査」)
最も多かったのは「実績が豊富なこと」で37.0%が回答し、「売却物件があるエリア・周辺環境に詳しいこと」、「経験豊富なスタッフが在籍していること」が続く結果となっています。
以下のデータ②では、「売却を依頼した不動産会社を見つけた経緯」について調査しています。
データ②売却を依頼した不動産会社を見つけた経緯(引用元:アットホーム(株)「マンション売却に関する実態調査」)
最も多かったのは「次に住む物件を購入・借りる際に利用する予定の会社だった」が18.8%で、「一括で物件の査定依頼ができるサービス」「『不動産 売却』などのキーワードでインターネット検索」が続いています。
これらの結果から、不動産購入と売却は同じ仲介会社に依頼したいと考える売主が多く、ポータルサイトや売却一括査定サイト、不動産会社のホームページなどで幅広く情報収集を行い、不動産会社の実績や地域性、営業担当者のノウハウ・スキルなどを参考に不動産会社を選定していることが窺える結果と言えそうです。
【2】選ばれる一社になるためのポイント②「不動産を検討する時に知りたいこと」
次に、売主の住み替え需要を取り込む観点から、購入検討者の住まい探しの動向についても見ていきましょう。
以下のデータ③と④は、不動産ポータルサイト事業者連絡協議会が行った調査「不動産情報サイト利用者意識アンケート調査」の結果を一部抜粋したものです。
データ③は、買主が「訪問した不動産会社数」について調査した結果を表にまとめたものです。
<データ③>訪問した不動産会社数(単位は%)
2019年
(n=186) |
2020年
(n=138) |
2021年
(n=240) |
2022年
(n=96) |
2023年
(n=68) |
|
1社 | 23.1 | 18.8 | 20.4 | 17.7 | 27.9 |
2社 | 27.4 | 23.2 | 26.3 | 26 | 22.1 |
3社 | 20.4 | 22.5 | 22.9 | 27.1 | 23.5 |
4社 | 6.5 | 10.1 | 12.1 | 5.2 | 5.9 |
5社 | 14 | 10.9 | 11.7 | 13.5 | 14.7 |
6社以上 | 8.6 | 14.4 | 6.7 | 10.3 | 5.9 |
平均 | 3.0社 | 3.3社 | 3.0社 | 3.3社 | 2.8社 |
引用元:不動産情報サイト事業者連絡協議会「不動産情報サイト利用者意識アンケート調査」を元に筆者が表を作成
2023年の平均社数は2.8社(赤太字)となり、直近の5年間で最も少ない結果となりました。
訪問者数を「1社」と回答した割合は27.9%(背景色赤)で、2022年の17.9%から増加する一方、「6社以上」と回答した人は5.9%(背景色青)で2022年の10.3%から減少しています。
コロナ禍の2020年~22年よりもさらに絞り込んだ上で不動産会社を訪問していることが窺えます。
データ④では、不動産会社を選ぶ時のポイント・気にする点について調査した結果を表にまとめています。
<データ④>不動産会社を選ぶ時のポイント・気にする点(単位は%)
2021年
(n=240) |
2022年
(n=96) |
2023年
(n=68) |
|
写真の点数が多い | 72.9 | 79.2 | 61.8 |
物件のウィークポイントも書かれている
(鉄塔が近い、大通りに面している等) |
29.2 | 33.3 | 39.7 |
店舗がアクセスしやすい場所にある | 20 | 22.9 | 33.8 |
写真の見栄えがよい | 30.8 | 32.3 | 32.4 |
他にもたくさんの物件を掲載している | 48.8 | 34.4 | 32.4 |
地元で知名度のある会社である | 22.1 | 24 | 32.4 |
部屋の雰囲気が分かる動画が付いている | 29.2 | 24 | 27.9 |
引用元:不動産情報サイト事業者連絡協議会「不動産情報サイト利用者意識アンケート調査」を元に筆者が表を作成
不動産会社を選ぶ時のポイントは、「写真の点数が多い」ことが3年連続で最も多くなっています。
しかし、写真の点数や物件数(「他にもたくさんの物件を掲載している」)といった情報の「量」に関する回答(背景色赤)は直近3年間で下落する傾向にあります。
その一方で、「店舗がアクセスしやすい場所にある」「物件のウィークポイントも書かれてている」「地元で知名度のある会社である」などの回答率(背景色青)は直近3年間で上昇する傾向にあります。
これらを踏まえると、訪問する不動産会社を絞り込む中で、情報の「量」はもちろんのこと、それ以上に「質」にこだわっている消費者が増加する傾向にあることが分かります。
顧客一人ひとりが知りたいと思っている価値の高い情報を理解し、発信することの重要性がより高まっていることが分かる調査結果と言えそうです。
【3】まとめ「反響・媒介獲得のためのコンテンツづくりのポイント」とは?
ここまでのポイントを以下にまとめます。
- 住み替えにおいて、不動産購入と売却は同じ仲介会社に依頼したいと考える売主が多く、「実績」を決め手に不動産会社を選定するケースが多い。
- 不動産購入にあたって訪問する不動産会社数は減少傾向にあり、2023年の平均訪問社数は、2020年~22年のコロナ禍よりも少なくなった。
- 訪問する不動産会社の決め手として、物件および物件に関連する情報の「量」よりも「質」を重視する割合が増加する傾向にある。
<訴求のポイント>
不動産売買を検討するのにあたって、消費者は膨大な量の情報に触れる必要がありますが、理解することが難しい情報、真偽が曖昧な情報などが氾濫しているため、それらが買主/売主にとって本当に必要な情報かどうかを見極めることが難しくなっています。
そのため、実際に不動産会社を訪問する際のポイント・決め手として、「質」の高い情報を提供してくれるかどうかを挙げる消費者が増加していると考えられます。
では、こういったニーズを取り込むために、消費者にどのような情報を発信していけば良いのでしょうか?
以下のデータ⑤は、マンション売却時に「不動産会社に教えてもらって良かったこと」について調査した結果をグラフに表したものです。
データ⑤不動産会社に教えてもらって良かったこと(引用元:アットホーム(株)「マンション売却に関する実態調査」)
「売却にかかる諸費用」が53.8%で最も多く、「売却の進捗状況」「査定額の根拠」などが続く結果となっています。
実際に不動産売却関連のキーワードで検索すると、「仲介手数料」「譲渡所得税」「登記費用」といった不動産売買における諸費用関連のコンテンツが多数ヒットします。
ここでポイントになるのは、これらを文字通り説明するだけではなく、住み替え検討層の目線で、個別事例なども交えながらより実践的で納得感のある解説記事として展開していくことが重要になります。
例えば、購入/売却の成約者インタビューなどは、個別の事例を元に、成約者の客観的な意見を幅広く訴求することができるため、不動産検討層の課題やお悩みに応えやすいコンテンツと言えるでしょう。
また、より深く成約者と向き合うことで、自社の強みや課題などを浮彫りにすることもできるかもしれません。
昨今では、ChatGPTなどの生成AIによる情報発信・情報発信が進展し、消費者も事業者も膨大な量の情報に気軽に素早く触れることができるようになりました。
そのため、消費者への訴求で重要になるのは、一人ひとりの不動産検討層にとって有益かつパーソナライズされた情報を細やかに発信できることと言えるでしょう。
■アットホーム(株)「マンション売却に関する実態調査」概要
調査対象:2018年7月以降、住替えのために国内のマンションを売却したことがある30~69歳の男女409名
調査方法:インターネットによるアンケート調査
調査期間:2023年8月22日(火)~8月23日(水)
※小数第2位を四捨五入しているため、合計100%にならない場合があります。
■不動産ポータルサイト事業者連絡協議会「不動産情報サイト利用者意識アンケート調査」概要
(1)調査方法
不動産情報サイト事業者連絡協議会サイト、会員サイト、不動産情報サイト上で行ったオープン型調査
(2)調査期間
2023 年 3 月 16 日~6 月 19 日の 91 日間
(3)有効回答数
974 人(過去 1 年のうちにインターネットで自身が住む住まいを賃貸または購入するために不動産物件情報を調べた(調べている)人)