電子契約により増加する家賃債務保証会社の利用

入居申し込みから契約までのプロセスすべてが非対面で可能になり、入居審査における面談がまったくされずに賃貸借契約が増加するケースも今後考えられます。

面談があったこれまでの対面契約では「なりすまし」や「無断転貸」を防止する一定の効果がありました、しかし非対面の場合には不適正な賃貸借契約の発生が懸念されます。

家賃の滞納や物件内でのトラブルが増加する可能性があり、そのリスクヘッジとして家賃債務保証の利用促進がより一層すすむと考えられます。

ここでは電子契約の本格運用と家賃債務保証会社の利用について考察します。

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電子契約にあるリスク

電子契約は本人確認を「電子署名」によりおこなうため、人が人を確認するわけではありません。

電磁的記録プロセスが正しいものと推定することにより成立しています。

つまり人間の五感により「本人と確認」するわけではないので、なりすましの危険性は書面による契約以上にあります。

なりすましとは異なりますが、他人が居住するために賃貸借契約を締結し、契約者以外の入居者が占有者となっている「無断転貸」も大きなリスクです。

実際に入居する人の申込では審査が通らないため、知人などが代わりに審査をとおして契約するケースです。

家賃が順調に支払われている間は発覚しませんが、滞納がつづくなどにより判明するケースがあります。

また面談する機会がない場合、入居後のトラブルリスクを予見することがむずかしく、賃貸人および管理会社はリスクヘッジを一層強化する必要もあると言えるでしょう。

オーナーにとっての最大のリスクは家賃滞納であり、契約自体が不適正なものであっても家賃の確保が可能な家賃債務保証は、リスクヘッジとして有効な方法と言えるのです。

完全とは言えない入居審査

入居申込にあたって一般的に審査する項目は次のようなものです。

・職業および勤務先
・収入
・家族構成
・緊急連絡先あるいは連帯保証人

家賃債務保証会社の保証委託を使う場合は、これらに加えて「過去の信用情報データ」などを審査することもあります。

賃貸人あるいは管理会社が審査する場合これまでは面談も加わり、入居者の人柄や性格といった属人的な要素も審査項目になることがありました。

なぜなら入居後の生活態度や家賃滞納などのトラブルは、入居者の人間性に起因するケースも多く無視できない要素だったのです。

しかし非対面による入居申込から電子契約といったプロセスが一般化すると、属人的な審査がまったくされず入居後のトラブルリスクが増加すると予想されます。

家賃保証会社の審査においても書類だけの審査であり、入居者の人間性などはまったく審査に反映することなく契約手続きはすすんでしまいます。

家賃債務保証会社の利用率

2018年に「日本賃貸住宅管理協会」がおこなった調査では、家賃債務保証会社の利用率は74.5%となっていました。

内訳は以下のとおりです。

1. 家賃債務保証会社のみ 49.8%
2. 連帯保証人+家賃債務保証会社 19.6%
3. 連帯保証人のみ 13.9%
4. 家賃債務保証会社が別途連帯保証人を付加 5.1%

「連帯保証人のみ」を除いた割合は74.5%となり、利用率の高さがわかります。

出典:R.E.port「家賃債務保証会社の利用率、約75%/日管協」

この調査からすでに3年が経過し利用率はもっと高くなっていることが予想されます。

非対面による入居申込~契約までのプロセスそして電子契約の完全運用と、管理会社や仲介会社が入居予定者と直接面談する機会が激減することにより、どのような影響がでるのか今後賃貸管理のうえで注目すべき事項と言えるでしょう。

家賃債務保証会社の利用が100%に

賃貸借契約における申込書に記載された事項の事実確認は、実際にはむずかしく適切な審査がおこなわれているか疑問があるのは、賃貸事業において審査業務を担当する管理会社担当者の本音と言えます。

属性もよくまったく不安のない入居者以外は、家賃債務保証を利用したいと考えるのが当然のことと言えるでしょう。

前述したように家賃債務保証の利用率の高さが理解できます。

電子契約については顧客の75%が利用したいと考えているアンケート結果もあり、完全運用となった場合は、管理会社や仲介会社が電子化に移行する割合は相当高くなります。

電子化の増加は保証委託の利用動機を生みだし、利用率は100%に近づくことが十分予想されるでしょう。

家賃債務保証委託契約と賃貸借契約解除

なりすまし契約あるいは無断転貸により本来の契約者以外が居住する場合、家賃が約定どおり支払われている間は「借地借家法」の主旨からも契約解除はむずかしいと考えられます。

保証委託契約により保証会社が立替え払いをしているケースでは、賃貸人の損害はなく契約者が滞納していたとしても解除権は認められません。

契約解除の請求をできるのは「求償債権」にもとづく保証会社になります。

なりすまし契約や無断転貸であっても、保証委託契約により賃貸人の収入は確保できるので、本人確認などの契約上の瑕疵は直接的な賃貸人の不利益とはなりません。

賃貸人にとってのもっとも大きなリスクは家賃収入です。

家賃滞納による契約解除や明け渡し請求について家賃債務保証会社の委託契約がない場合は、賃貸人が自ら対応しなければなりません。

しかしながら保証委託がある場合は、弁護士費用を含めて保証委託契約に含まれ賃貸人の負担がありません。

このような理由からも、賃貸借契約は家賃債務保証によるリスクヘッジが必要になっていくものと思います。

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  • そもそも電子契約ってどんなもの?
  • 電子契約は法的効力が認められる?
  • 電子契約の全面解禁とは?

まとめ

日本初の賃貸借契約に係わる保証業開始は1995年とされています。

以来四半世紀が経過しその間には保証会社の倒産といった混乱もありながら、賃貸業界に「家賃保証会社」の意義と役割が社会的に認知されてきました。

家賃滞納という大きなリスクを軽減する方法として成長してきましたが、電子契約の普及にともない家賃債務保証会社の役割はより一層大きなものになっていくと思われます。

また「滞納者データベース」の運用が求められる一方、住宅確保要配慮者に対するセーフティネット構築といった課題もあり、賃貸事業を取り巻く社会的条件はより複雑にかつ高度になっていくでしょう。

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