不動産の契約を電子契約で出来るケースと出来ないケースの違い

不動産取引の契約が電子契約でも可能になります。

電子契約の検討がはじまってから7年が経過しようやく本格的な運用となります。

ここでは電子契約の検討過程をふり返りながら、年内に本格運用される契約の種類と、少し時間がかかりそうな契約の種類についてお伝えします。

さらに電子契約がむずかしそうに思える、視覚障害者や聴覚障害者などが契約当事者になった場合の対応方法についても考えてみます。

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電子契約で可能な不動産契約

不動産取引においてITを活用した契約方法の本格的な検討は、2014年4月24日に国土交通省が開催した「第1回 ITを活用した重要事項説明等のあり方に係る検討会」からです。

2014年は6回の検討会が開催され12月25日の「最終とりまとめ」のなかで、2017年に社会実験をおこなうこととし「賃貸取引」及び「法人間取引」について実施することとなりました。

個人が当事者となる売買契約は省かれたのですが、それには次のような理由があります。

・売買契約は賃貸借と比べて説明すべき法令が多く、未完成物件はトラブルになることも多い
・売買契約は取引金額が大きく被害回復がむずかしい、さらに売主が宅建業者の場合は買主保護の必要性が高くなる
・法人の取引では契約にあたり取締役会の決議が必要になるなど、社内チェックが行われ手続きが慎重になるためリスクが少ない
・法人の取引で万が一トラブルが発生しても従業員の財産に責任が及ぶことがない

出典:国土交通省「ITを活用した重要事項説明等のあり方に係る検討会 最終とりまとめ(案)」

このようなことから賃貸取引と売買の一部法人取引について、IT重説の社会実験がおこなわれました。

その後、個人が係る売買取引も社会実験がおこなわれ、賃貸借取引と売買取引について2021年4月からIT重説の本格運用がスタートしています。

電子契約を実現するには重要事項説明書と契約書面を電子交付する必要があり、賃貸および売買取引において現在電子交付の社会実験が実施中となっているのです。

また社会実験には媒介契約についても追加され、社会実験後は関係する法令の改正により、以下の3種類の契約が電子契約可能となります。

・売買契約
・賃貸借契約
・媒介契約

現在は電子契約できない不動産契約とその他関連する契約

現在は電子契約ができないとされる不動産契約は次の2つあります。

・定期借家契約
・定期借地契約

どちらも借地借家法にて「契約の更新がない」旨を特約する場合、公正証書による等書面によりしなければならないと規定されています。

表記が「公正証書による等」となっていますが、公正証書である必要はないのですが書面にすることは求められています。

さらに定期借家契約においては契約書以外にも、事前に「契約の更新がない」旨を記載した書面交付が必要であり、電子契約を可能とするには “書面交付” に係る法改正が前提となります。

賃貸借契約ではこのほかに火災保険や保証委託契約の締結が必要になるケースが多く、不動産関係法令の改正だけでは電子契約に対応できないものもあります。

少額短期保険契約

保険業界でも契約の電子化は進んでおり、Webからの申込で契約が完了する商品も多くなっています。

賃貸借契約に付随する少額短期保険も同様に電子化契約が進んでいくと思われますが、保険事業者には事業規模が小さい企業も多く、普及するには時間がかかる可能性もあります。

2020年から金融庁が「金融業界における書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会」を開催し、日本少額短期保険協会を含めた保険業界・銀行関係・証券関係などの金融諸団体がメンバーとなり参加しています。

少額短期保険は賃貸借契約時に契約手続きされることが多く、賃貸借契約プラットフォームを提供する「イタンジ」では、全管協少額短期保険とシステム連携し、賃借申込み時の入居者が入力する情報が保険契約データとして連携できるようにしています。

参考:CNET Japan「イタンジの「申込受付くん」と全管協少額短期保険の「きょうさいくん」がシステム連携」

すべての火災保険契約が電子契約可能となるには、各保険会社の対応を待たなければなりません。

家賃債務保証委託契約

家賃債務保証会社は2021年4月16日時点で79社あります。

大手5社の電子契約対応について見てみます。

電子契約が可能になっているのは以下の3社です。

1. 全保連
2. 日本賃貸保証
3. Casa

ナンバー2の日本セーフティーは、Webからの申込は可能ですが契約は書面をダウンロードしておこなう形式です。

ナンバー5のジェイリースは、一部API連携でおこなっている不動産会社がありますが、基本的にはFAXによる書面契約です。

事業規模の小さい事業者も多く、電子契約が普及するにはこの業界もすこし時間がかかりそうです。

電子契約できないケースの対応

電子契約は不動産会社の店舗・営業所に出かけるのに支障のある障害者にとってより望ましいものですが、視覚障害や聴覚障害をもつ人が電子契約をおこなうにはどのような問題があるのでしょうか。

契約当事者に視覚障害・聴覚障害がある場合、書面契約であっても代理人が契約に立ち会うなどのことはこれまでもありました。

電子契約ではスクリーンリーダーなどの読上げソフトを使うと、視覚障害の場合は契約書の内容を確認することが可能です。

聴覚障害の場合はモニター画面で契約内容を確認できるので問題ないと言えそうです。

しかし重要事項説明に関してはすこし問題があります。

宅建業法では重要事項は「書面を交付して説明」することが求められており、視覚・聴覚どちらも必要になります。

また契約に関しては「電子署名」にマウス操作が必要になるため、視覚障害があるとむずかしい面がありそうです。

視覚や聴覚を補うためには重要事項説明や契約にあたり、書面契約と同様に代理人や代筆人の立場になる人が必要になると考えられます。

書面契約では、本人がいない場合は代理権の確認など、後に契約の有効性が争われる場合を想定し代理権に関する書面確認が必要になりますが、本人同席の場合にする本人以外の記名押印行為は「代理」ではなく「代筆」にあたるとされています。

代筆に関しては

・契約に関して締結する本人の意思を確認
・代筆をする理由がある
・代筆をおこなう者を本人が指定

などの要件がそなわっていると、一般的に代筆でも契約は成立すると考えられています。

では電子契約になった場合のマウス操作を本人ができない場合、電子署名をおこなうのは別の人になってしまいます。

この行為が代理になるのか代筆に該当するものなのか、 “電子署名” という法律上の定義を明確にしてほしいものです。

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  • そもそも電子契約ってどんなもの?
  • 電子契約は法的効力が認められる?
  • 電子契約の全面解禁とは?

まとめ

電子契約はまず賃貸・売買・媒介の3種類が本格的に運用されるようになります。

そのご法改正を経て定期賃貸借契約が可能になるでしょう。

保険業界や家賃債務保証業界でも電子化は進んでいくと考えられ、不動産業界の仕事の仕方は大きくスタイルが変わります。

その一方で視覚障害や聴覚障害をもつような、契約手続きがむずかしい人たちに対するサポートの必要性は残っており、仲介会社の役割はますます重要になっていくでしょう。

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