
不動産業界(賃貸・売買仲介業)における採用活動は、今なお厳しい売り手市場が続いており、従来の方法では成果が出にくくなっています。
本記事では、採用に課題を抱える不動産会社の経営者・採用担当者の皆さまに向けて、
- 不動産業界の採用市場動向
- 業界特有の課題と背景
- 採用成功に向けた実践的なポイント
- 実際の成功事例(A社の取り組み)
を、現場目線でわかりやすく整理しています。
すぐに取り入れられる具体策やチェックポイントも盛り込んでおりますので、ぜひ最後までご覧ください。
不動産業界の採用市場動向(2025年最新)
人材不足が深刻化する不動産業界の現状
不動産業界では慢性的な人材不足が続いており、採用難易度は年々高まっています。
厚生労働省の統計によると、2024年12月時点の不動産業における有効求人倍率は約1.25倍で、求職者1人に対して1.25件の求人が存在する計算です(※1)。これは全業種平均とほぼ同水準で、依然として売り手市場であることがわかります。
さらに、同月の正社員求人件数は前年比を大きく上回っており、不動産業界全体で採用競争が激化している状況です。
(※1 参考:マイナビキャリアリサーチLab 業界研究レポート 不動産業界(2025年2月))
https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2025/02/2025-2-fudosan.pdf
不動産業界における主な採用課題
不動産業界には、採用活動において他業種とは異なる特有の課題があります。ここでは代表的な3つをご紹介します。
1. 人手不足と採用競争の激化
新規出店や取引増加に伴う人員ニーズの高まりに対して、求職者数が追いつかず、採用活動が長期化・高コスト化するケースが増えています。
特に中小規模の事業者では、待遇や知名度で大手に後れを取りやすく、採用力の差が成果に直結しています。
2. 若手人材の確保難
「ノルマが厳しそう」「休みが少ない」といった業界イメージにより、20代〜30代の若手層から敬遠されがちです。
IT業界やベンチャー企業など、より柔軟な労働環境を求める傾向もあり、不動産業界が若手から「選ばれにくい」状況となっています。
3. 業界・職種に対する誤解や先入観
不動産業界は専門性が高く、宅建資格や業界知識が必要というイメージが強いことから、「自分には難しそう」と感じてしまう求職者も少なくありません。
実際には未経験から育成する企業も多いにもかかわらず、発信力不足によりミスマッチが生じているケースも見受けられます。
不動産業界で採用を成功させた事例とポイント
このような課題に対して、どのようにアプローチすれば採用を成功に導けるのか。
実際に成果を上げたA社の取り組み事例をもとに、その具体的なポイントをご紹介します。
採用を成功させたA社の紹介
A社について
事業規模(売上規模):50億~100億
従業員数:50名~100名
事業内容:不動産買取再販事業、不動産売買仲介事業、その他
採用ポジション:不動産仕入営業
A社の現状と目指す姿
これまでA社は、事業ポートフォリオの再構築、既存事業プロセスの見直し、人材育成、テックツールの導入など、常に現状に疑問を持ち、自ら変化を続けてきました。
売上高を3期連続で20%成長させているA社は、更なる飛躍を目指しており、次期の目標は売上高120億円(前期比50%成長)を掲げていました。
目指す到達点が高くなる中で、「人」というリソース、すなわち「採用」が最重要課題となってきます。
この課題を解決するため、株式会社Freedomdutyへ採用コンサルティングのご依頼をいただきました。
A社の課題
A社の課題は大きく分けて5つでした。
- 事業規模拡大により採用スピード、採用数上昇
- リファーラル採用へ依存している体質を改善
- 独自の強み(魅力)が不明確
- 成功事例がない中での新ポジション(レイヤー)の採用(獲得)
★採用(人事)プロフェッショナル不在
採用のポイント ≪Freedom dutyの取り組み≫
実行した点(採用のポイント)は下記です。
- 採用ゴール設定
- 採用者(ターゲット)要件定義
- 競合他社分析(採用手法等)
- 採用手段(媒体)選定&採用条件決定
- 採用進捗管理&定期MTG
- 採用ピッチ資料作成
- 採用(募集)開始
- 採用フロー構築&面接時注意点
- 採用面接サポート
各ポイントに分けてご紹介します。
①採用ゴール設定
採用時に最も重要なのは、初手である「採用ゴールの設定」です。
ゴールが定まっていないと、採用活動の成功・失敗を評価することが難しくなります。そのため、最低限、採用業務に関わる全メンバーで以下の項目を共有したうえでスタートします。
- 入社期日
- 採用数
- 採用予算(単価:〇万円まで)
- 採用ポジション(任せたい仕事を明確にする)
②採用者(ターゲット)要件定義
次に、採用対象となる人材(ターゲット)の要件定義をしっかりと言語化することが重要です。
この要件定義を行うことで、最適な採用手段(媒体)を選定することができます。
- スキル/経験(職種、業種、年数、マネジメント、資格)
- 人物(年齢、性別、居住地、年収、学歴、直近転職歴)
※要件定義の方法については、下記の資料をダウンロードのうえご確認ください。
不動産会社の採用お役立ち資料集
なお、今回募集するポジションにおいて、すでに社内で活躍している社員がいる場合は、その方の「スキル」や「人物像」を言語化することで、ミスマッチの防止につながります。
③競合他社分析(採用手法等)
ベンチマーク企業に関しては、以下の項目について実態を把握します。
- 採用手段(利用している媒体)
- 採用ポジション(募集条件)
- リクルートページ(自社サイト・採用媒体を含むすべて)
ベンチマーク企業が該当ポジションの採用を行っていない場合は、同ポジションを採用中の同業他社(同エリア・同規模)に対象を広げ、上記情報を揃えます。
結論として、候補者視点で見て明確に優れている「条件」がない場合、採用は非常に困難です。
採用に投資をしても効果が見込めないため、まずは明確な強みをつくることを優先すべきです。
不動産業界は市況全体が右肩上がりで推移しているため、他社動向を注視しなくても一定の採用成果を上げている企業も存在します。その結果、他社分析を十分に行っていない企業が多いのが実情です。
そこにこそ勝機があります。
一般的な分析フレームワークを活用する以前に、まずは上記の基本情報を徹底的に調査・把握することが重要です。
④採用手段(媒体)選定&採用条件決定
上記のプロセスを通じて採用開始に必要な基盤が整った段階で、設定したターゲットを最短かつ最小のコスト(時間・金銭)で獲得できる「手段」を選定します。
※各採用媒体の特性(メリット・デメリット)やコスト感については、下記の資料をダウンロードのうえご確認ください。
不動産会社の採用お役立ち資料集
なお、採用リスクを回避するために「複数の媒体を同時に運用すべき」といった情報がネット上には多く見受けられますが、これは時間とコストの無駄になるケースが大半です。
現実的には、まず採用条件の見直しを優先的に検討することが有効です。
⑤採用フロー構築(定義付)
採用スタート前に下記は明らかにする必要があります。
- 面接回数
- 面接担当者役割
- 面接後フォロー(担当・方法・タイミング)
- 内定出し方法(来社、オンライン、TEL、mail)
- 内定承認後フォロー
⑥採用ピッチ資料作成
母集団の形成には成功し、面接の実施までは進むものの、選考辞退や内定辞退が続くケースがあります。
このような場合、主な要因は以下の3つに分類されます。
- 面接担当者に魅力が感じられない
- 面接担当者が会社やメンバーの魅力を十分に伝えられていない
- そもそも会社に魅力がない
採用担当者として改善可能なのは、1および2のケースです。
会社の魅力を的確に伝えるためには、「採用ピッチ資料」の作成が有効です。
この資料を活用することで、候補者に対して一貫性のある魅力訴求が可能になります。
また、資料を整備しておくことで、採用組織を拡大した際にも、面接対応者全員が一定レベルの訴求を行える体制が整い、選考の進捗率も大きく向上します。
※採用ピッチ資料の参考例については、下記の資料をダウンロードのうえご確認ください。
不動産会社の採用お役立ち資料集
⑦採用(募集)開始
①〜⑥が整ったら採用の開始です。
⑧採用進捗管理&定期MTG
こちらの記事をお読みいただいている方の多くは、「営業」からキャリアをスタートされた方ではないかと想像しています。
営業と同様に、採用においても目標に対して「どこがビハインドしているのか」「なぜビハインドしているのか」を定点観測することは不可欠です。
情報をしっかりと整理・蓄積していくことで、それ自体が会社の重要なアセットになることは間違いありません。
採用にもKPI(KGI)が存在し、記録すべき指標はあらかじめ定まっています。
※採用進捗管理シートについては、下記の資料をダウンロードのうえご確認ください。
不動産会社の採用お役立ち資料集
⑨採用面接サポート
採用担当者は会社の「顔」として候補者と向き合う存在です。
採用活動には最低限守るべきルールがありますが、現場の営業担当者が面接を担当する場合、この基本ルールが実施されていないケースが多いのが実情です。詳細については資料にある「面接時の注意事項」をご確認ください。
※面接時の注意事項については、下記の資料をダウンロードのうえご確認ください。
A社の成果
上記で紹介した①〜⑨を意識しながら採用を行うことで、A社は採用課題を大きく改善しました。
採用単価の大幅な改善
支援前には1名あたり約100万円かかっていた採用単価を、支援後には50万円まで削減することに成功しました。
ターゲット年齢層の応募率が大幅に向上
A社の採用ターゲットは20代〜30代でしたが、支援前は全応募者のうちターゲット層が占める割合は30%に留まっていました。支援後は、70%まで改善しています。
内定後の承諾率を大幅に改善
支援前は内定後の承諾率が50%と低調でしたが、支援後には80%まで改善し、採用の歩留まりが大きく向上しました。
まとめ
不動産業界では人材の確保がますます難しくなっており、採用活動は従来の延長では成果が出にくい時代に入っています。
しかしながら、採用における「戦略設計」と「現場での実行精度」を見直すことで、採用の質・効率ともに大きく改善できることは、A社の事例からも明らかです。
本記事でご紹介したように、採用を成功させるためには複数のポイントを戦略的かつ丁寧に積み上げていくことが求められます。
自社の採用を本質的に改善したいとお考えの企業様は、ぜひ今回の内容を参考に、自社にフィットする取り組みから着手してみてください。
【特別無料配布!】採用成功に役立つ資料をダウンロード
本記事内でご紹介した各種資料を、以下よりダウンロードいただけます。
- ターゲット要件定義シート
- 採用媒体別 特性・コスト一覧表
- 採用ピッチ資料フォーマット
- 採用進捗管理シート
- 面接時の注意事項リスト
これらの資料は、すべて無料でご利用いただけます。
採用体制の強化・仕組み化にぜひご活用ください。
各種資料ダウンロードはこちら(まとめてダウンロードいただけます。)
不動産会社の採用お役立ち資料集