不動産業・宅建業の違い

不動産業者を指す言葉に「宅建業者」と表記する場合があります。宅建業とは不動産業の一部であり同一ではありません。

事業内容や法律の規制も異なるのですが、その違いを理解して使いわけている場合もあれば、混同して使われていることもあるようです。

本ページでは宅地建物取引業の概要から制定された経緯・今後の変化まで分かりやすく解説します。

宅建業とは

宅建業とは「宅地建物取引業」の略です。不動産業には次のような種類があります。

開発
売買 直接売買
代理
仲介
交換 直接交換
代理
仲介
貸借 直接賃貸
代理
仲介
管理

表の中で赤字に表記した事業が「宅地建物取引業」に該当します。

なお「開発」をおこなう事業者は一般に「デベロッパー」と呼ばれ、自らの使用のために不動産開発をおこなうか、賃貸目的に開発をする以外は「分譲販売」するので「宅地建物取引業」に該当する場合もあります。

管理」に関しては2020年に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)」が成立し、賃貸管理業者は国土交通大臣による登録制度がスタートすることになりました。賃貸業の一部に該当するサブリース業者がおこなう賃貸業は、この法律の規制を受けることになります。

不動産業として一括りされる各種事業のうち、宅建業は特別法である「宅地建物取引業法」の規制を受け、管理業は「賃貸住宅管理業法」の規制を受けるようになるのです。

その結果、特別法による規制を受けることのない事業は、不動産所有者がおこなう賃貸業だけになります。ただし賃貸業は民法および借地借家法の規制を受けることはいうまでもありません。

このように宅建業とは不動産業の一部をいい、宅地建物取引業法で定める事業をいいます。

宅地建物取引業法の概要

宅地建物取引業法が適用される不動産に関わる事業は、宅地と建物の売買・交換・貸借の取引に関することが対象です。

対象となる「宅地」とは以下のような土地を指します。

1. 用途地域内の土地(農地であっても該当)はすべて対象となり、ただし、用途地域内の公共施設用地(道路・公園・河川・広場・水路)は対象外ですが、建物の敷地になる場合は対象となる
2. 用途地域外の土地(田・畑・池沼・山林・原野)であっても、建物の敷地になる場合は対象となる

つまり都市計画区域外や市街化調整区域、無指定地域などにある山林や農地を建物の敷地として取引しない場合は、宅地建物取引業法の適用外ですが、建物の敷地として取引される土地はすべて「宅地」に該当します。

宅地建物取引業者は免許制になっており、国土交通大臣または都道府県知事の許可を受けなければ宅建業者として認められません。大臣免許か知事免許かの区別は次のようになります。

・複数の都道府県に事務所を設置する場合は大臣免許
・ひとつの都道府県のみに事務所を設置する場合は知事免許

法人か個人かの区別はなく個人事業であっても免許は受けられます。法人の場合には資本金などや会社の規模に制限はありません。

免許にあたり重要なことは国家資格者である「宅地建物取引士」が、従事者の5分の1以上設置していなければならないことと、事務所ごとに専任の宅地建物取引士が1名以上いなければなりません。

さらに営業保証金の供託が義務づけられていますが、国土交通大臣が指定した保証機関の会員となり、弁済業務保証金分担金を保証機関に納めることにより、営業保証金に代えることもできます。

宅地建物取引業法が制定された経緯

不動産業の事業すべてが宅地建物取引業法の適用を受けていない理由は、宅地建物取引業法がどのように制定されたのか、その経緯を知ることによって理解できます。

宅地建物取引業法の制定は1952年のことで、すでに70年近く前になります。このころ日本は太平洋戦争が終わり、7年が経過していましたが、住宅不足が顕著であり住宅を求める人がたくさんいました。

現代のような情報化社会と異なり、当時の人々は住宅の空き情報や宅地の情報を、不動産に詳しい専門業者から入手し取引がおこなわれていました。このような業者のなかには不正確な情報により、トラブルを起こすケースもたくさんあったようで、まっとうな不動産業者の団体が不動産取引の法制化を働きかけたのです。

法制化を求める声は当時の政権与党民自党を動かし、故田中角栄元総理大臣らにより議員立法され制定しました。

制定当時は現在の免許制度ではなく登録制でした。しかも営業保証金制度はまだなく、かなり緩い規制がおこなわれていたのです。そのご宅地建物取引主任者(現在の宅地建物取引士)制度が創設され、業者登録から免許制へと変更されます。

宅地建物取引業法は不法・不当な取引を意図する不良業者の排除が目的であり、健全な業界の発展に寄与するものとなったのです。不動産情報を仲介する業者は小さな規模の業者が多く、規制するには法制化が不可欠だったのでした。

一方、賃貸物件を提供する不動産所有者(家主)は、住宅供給の重要な役割を担っており、賃貸事業者に規制をかけることは住宅不足をさらに促進してしまう恐れがあります。こうして賃貸業は民法および借地借家法の適用を受けるのみで、 “業法” という法規制を受けることなく今日まで継続しているのです。

進む不動産業界の規制

賃貸事業に関する法規制は、2020年に成立した「賃貸住宅管理業法」により、不動産管理業に対しおこなわれるようになります。これまで賃貸管理をおこなう事業者に対する規制はありませんでした。

賃貸管理は不動産業の一種でしたが、宅建業の対象外であり何の法規制もなく、自由に「賃貸管理」を名乗って事業をすることができました。しかしサブリース事業に関するトラブルの増加により、賃貸管理業への法規制が必要となったのです。

賃貸住宅管理業法では、宅建業で制度化されている「宅地建物取引士」のような位置づけで、新たに国家資格として「賃貸不動産経営管理士」が制度化されます。

こうして宅建業法と賃貸住宅管理業法により、不動産業を管轄する法制が2つ整備されるわけです。これに民法の特別法としてある借地借家法、これら3つの法律が民法と連携して不動産業を規制していきます。

不動産業界は事業そのものに対する規制緩和により、都心開発など成長の原動力を得る恩恵を受けましたが、一方これまで以上のコンプライアンス遵守も求められています。

不動産業界の変化

不動産業界は現在、大きな変化に直面しています。

REATに代表される不動産証券化は、賃貸事業がより公共性を帯びる一面も持っており、不動産は「買う」「借りる」に加え「投資する」が一般化するようになるでしょう。このことは不動産が金融商品の一部となることを表しており、宅建業法の範疇を超えた異なった次元に発展することを予感させます。

不動産特定共同事業法は1995年に成立した法律ですが、2013年以来たびたび改正されクラウドファンディングの活用を可能にしました。今後は不動産特定共同事業制度にもとづき、不動産業に関わる人たちも増えてくることでしょう。

不動産業従事者は2018年統計データによると、物品賃貸業を含め約130万人おり、宅建業従事者は2017年データでは約56万人となります。不動産業従事者の半分弱が宅建業従事者であることがわかります。

出典:統計局「産業別就業者数(平成30年)」一般社団法人不動産適正取引推進機構「平成29年度末宅建業者と宅地建物取引士の統計について」

数年後には不動産の金融商品に関わる人たちや、不動産特定共同事業に関わる人たちの割合も増え、不動産業の幅が大きく広がることになるのかもしれません。現在は不動産業のなかに宅建業というジャンルがあるのですが、さらに別のジャンルの名前がついた不動産業が生まれる可能性があるのです。

まとめ

宅建業は不動産業の一部であり、ほかに管理業や賃貸業も不動産業の一部となります。不動産開発をおこなうデベロッパーも不動産業者の一部であり、今後は金融商品化された不動産に関わる事業も、不動産業の一部になっていくのでしょう。

そのなかで宅建業は「不動産流通」という、重要な機能を担うジャンルといえます。公正で安心な不動産取引がおこなわれ、不動産を「買う」「借りる」「投資する」人たちの利益を保護する役割があるのです。

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