中古住宅とホームインスペクション

21世紀になり日本の住宅は品質を重視する価値観へと変わりました。中古住宅においても同様の考え方が生まれ、古いものであっても品質・性能面を正確に把握し、透明性の高い中古市場の形成を図る試みがされるようになりました。

その基本構想は2010年にまとめられたものですが、2018年に至り法制化されました、しかし問題点もありそうです。

ここではスタートして間もない “インスペクション制度” について、生い立ちとしくみについて見ていきます。

インスペクションが宅建業法に導入される

2018年(平成30年)4月1日より宅地建物取引業法が改正され、インスペクション(建物状況調査)についての説明などを義務化しました。

宅建業法の改正点は、第34条の2第1項4号、第35条第1項6号の2、第37条第1項2号の2、の3ヶ所でありその概要は以下のようなものです。

1. インスペクションのあっせんについて媒介契約書に記載する
2. 媒介依頼者がインスペクションを検査事業者に依頼した場合、その結果の説明を重要事項説明書に記載し説明する
3. 売買契約書に売主買主が調査結果について確認したことを記載する

以上の3点が義務づけられ、売主または買主がインスペクション制度の存在を知る機会をつくり、インスペクション済の住宅が多く流通するよう改善を図ろうとしたのです。

インスペクションの普及

インスペクションが住宅ストックの品質を高め、流通活性化に寄与することに着目されたのは、2010年(平成22年)に政府がまとめた「中古住宅・リフォームトータルプラン」からです。

すでに一部の建築士事務所などでは「ホームインスペクション」と称する、住宅調査業務をおこなっていました。

中古住宅の取引においては、買主が契約前に購入検討中の物件について、詳細を把握できる資料は宅建業者が作成する簡単な販売資料です。

販売資料には次のような項目について記載されています。

1. 所在地
2. 面積
3. 物件の種類
4. 交通便
5. 付帯設備
6. 法的制限
7. 築年

しかし物件の品質や性能面のデータがあるわけでなく、劣化具合について建築の素人にはむずかしく、案内をする営業担当者の話を真に受けて商談が進んでしまうという状況でした。

ホームインスペクション」は建築のプロである建築士が、物件の現況を細く調査点検し不具合の状態や劣化状態を判断し、調査依頼者に客観的な評価を伝える目的でおこなわれます。

売主は売却予定の物件の状態を知ることができ、買主は購入するかどうかの結論をだす、判断材料になるわけです。

宅建業者の団体である全国宅地建物取引協会連合会は、2012年より2017年まで「土地・住宅に関する消費者アンケート調査」をおこない、そのなかでインスペクションに関する意識調査をおこなっています。

中古住宅,ホームインスペクション

出典:公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会「土地・住宅に関する消費者ウェブアンケート調査」

2012年にはすでにある程度の認知度があったことは伺えますが、国の政策的な取り組みによる認知度・利用率の向上を図りたい意向が、宅建業法の改正に至ったと思われます。

尚グラフ中の調査項目の意味は以下のとおりです。

・認知度:インスペクションとは何かについて「知っている」と答えた人の割合
・利用割合:知っていると答えた人の中で実際にインスペクションを利用した人の割合
・利用意向:知っていると答えた人の中で今後の機会にインスペクションを利用したいと答えた人の割合

インスペクション利用のしくみ

宅建業法で定めるインスペクションは「既存住宅状況調査技術者講習制度」にもとづき、登録された技術者しか業務ができない制度になっています。

そのため、インスペクションを利用しようとする売主や買主は、自ら登録技術者を探すか宅建業法で定めるように、媒介業者からのあっせんを受けてインスペクションを依頼することになります。

売主や買主が自ら登録技術者を探すには、日本建築士事務所協会連合会のWebサイトの、既存住宅状況調査技術者検索ページで探すことになりますが、あまり親切な作りとは言えず、自ら探すことは困難な状況です。

媒介業者からのあっせんについても、たまたま業者が登録技術者を知っていればあっせんできますが、知らなければあっせんのしようがなく、「あっせん無」と媒介契約書に記載すれば済むことであり、制度設計的にはインスペクションが広まる環境にはなっていないといえるのです。

インスペクションが利用されるようになるか、実施割合の調査報告が一般財団法人土地総合研究所から発表されています。

この調査は改正宅建業法が施行された平成30年、9月21日から10月26日までと1ヶ月余りの短い期間ですが、インスペクション制度が宅建業界でどのように受け取られたのかを把握するには十分な調査結果でした。

まず着目すべきは1,022社の調査対象に対して有効回答数208社という少なさです。そして売買の取扱い120件のうちあっせん実施は51件でした。あっせんした割合は42.5%であり、インスペクション意識調査の「利用意向」割合に近似する数値となっています。

この結果から想像できるのでは、売買取引の現場においてインスペクションの説明は、積極的にされていないと考えられるのです。

日本にホームインスペクションは定着するか

宅建業法は1952年(昭和27年)に制定されたわけですが、公正な不動産取引を実現することが大きな目的でした。

そのため宅建業者の登録制・取引主任者の資格制度を中心として、不動産取引に係る事業者の規制をおこなってきました。

しかしながら一つとして同じもののない不動産取引において、買主が購入しようとする物件の品質や性能などを、正確に把握し評価することは困難です。

住宅ストックを有効に活用するためには、既存住宅の客観的判断・評価するしくみが必要です。住宅性能表示制度はその方法のひとつですが、より対象を広げ短期間で評価できるしくみとして導入したのがインスペクションでした。

アメリカやイギリスではインスペクションを利用して、中古住宅を購入するケースは約8割に達するといいます。

中古住宅,ホームインスペクション

引用:国土交通省「中古住宅流通促進 中古住宅流通促進・活用に関する研究会(参考資料)」

米英で普及しているのは、日本のような瑕疵担保責任を売主が負うという、法制度がないため購入にあたっては “自己責任” となる事情があるようです。

瑕疵担保責任は契約不適合責任と2020年4月の改正民法により変わり、売主と買主および仲介不動産会社が負う法的責任が変化しました。今後はより一層、取引される対象不動産の客観的な評価が、必要とされる時代が訪れようとしています。

参考サイト

国土交通省「改正宅地建物取引業法の施行について」
公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会「土地・住宅に関する消費者ウェブアンケート調査」

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