専任媒介獲得のための簡易インスペクション実例

今回のテーマは「簡易インスペクションの実例」です。
簡易インスペクションができると、どのようにお客様対応が変わるのか、具体的に事例をお伝えします。

あっ、いきなり簡易インスペクションといってもわかりづらいですね。

簡易インスペクションというのは、訪問査定の時に営業担当者が行うインスペクションのことです。建築士によるインスペクション(建物状況調査)を行う前段階の予備調査のイメージです。

前回のコラムでは、簡易インスペクションについて説明しました。まだご覧になっていない方は一度目を通していただくと理解しやすいと思います。

■訪問査定を行う理由は「建物を見るため?」

査定の問い合わせがあったときに「正確な査定額を出すためには建物の状態を見ないといけないのです」と言って、訪問査定のアポイントをとっていませんか。

そして、訪問査定に伺ったとき「室内の状態をちょっと拝見してもよろしいですか」と建物の室内を案内してもらい、5分程度で確認。

「建物はとてもよい状態ですね」とお客様にお世辞を言って建物のチェックは終了。
もしあなたがこのような訪問査定をしているなら注意してください。

お客様は「訪問査定では建物の状態を見ると言っていたのに、建物なんてほとんど見ていないじゃないか。建物の状態を見ないと正確な査定額が出せないというのは嘘だったのか…」と思っているかもしれません。

しかしながら、上記のようなクレームを口に出すお客様は少ないです。お客様はそれなりの人生経験を積んだ大人ですから、査定に来た初対面の担当者に面と向かって「具体的に建物のどこをチェックしたのですか?」と突っ込んで聞くお客様はほとんどいないのです。

多くの不動産会社は建物の状態を把握せずに査定額を提示しています。それなのに「建物価格は約1,000万円です」と曖昧に答えてしまう。

ひどい場合、「不動産価格は土地と建物の総額で決まるので建物の価格はあまり関係ないです」と言って話を打ち切る。(だったら建物を見なくてもいいのでは?と思われてしまう)

このようなやり方で訪問査定をして、どうやって他社と差別化すればよいのでしょうか。査定価格、会社の知名度、担当者との相性をアピールしますか。他の会社と同じような訪問査定をして、専任媒介の取得確率を上げるというのは難しいと思います。

■簡易インスペクションをした場合としない場合の違い

では、簡易インスペクションを活用して訪問査定をしたらどうなるでしょうか。結論から言うと、お客様から選ばれる確率が変わります。なぜなら、建物の状態をほとんどチェックしない一般的な不動産会社と比べて信頼が得られやすくなるからです。なぜか?具体的に事例を見てみましょう。

■ひび割れに対する回答の仕方

一戸建ての訪問査定の際に、まず建物の外周をチェックします。そこで基礎の部分にひび割れを発見しました。所有者のお客様は営業担当者の隣にいると想像してみてください。

お客様から「このひび割れ、大丈夫でしょうか?」と質問を受けたとします。

簡易インスペクションの知識がないA君の回答

「中古はこんなもんですよ。」
「この築年数ならこのくらいは一般的ですね。」
「大丈夫です、問題ないですね」

上記のような回答を聞いてお客様は安心するでしょうか。

お客様が本当に知りたいのは、「中古はこんなもの」「築年数として一般的」「大丈夫、問題ない」という営業担当者の主観でなく、「なぜ大丈夫なのか、その根拠」です。

安易な「大丈夫」という言葉は、建物の不具合が後々見つかったときにトラブルの元になる恐れもあるでしょう。

簡易インスペクションの知識があるB君の回答

専任媒介,インスペクション

クラックスケールで計測した後に

「ひび割れが0.5mm未満なので問題はありませんね。
この0.5mmという基準は既存住宅売買瑕疵保険の基準です。
このひび割れの状態でも、保険に加入できる状態なので問題ないと判断できます。」

このような回答を聞いたお客様は本当に安心できると思います。

なぜなら、根拠が明確だからです。

その上、確認できた範囲においては瑕疵保険の基準を満たしていることがわかるので、必要に応じてプロによるインスペクション(建物状況調査)を行い、瑕疵保険の活用を検討することもできます。

もし簡易インスペクションを行っていなければ、瑕疵保険を使えない建物の状態なのに有料のインスペクションを行う可能性もあります。費用を負担するのが、売主なのか、買主なのか、不動産会社なのか、いずれにせよお金をムダにしなくて済みます。

■傾きを気にされる方への回答の仕方

もう一つ事例をご紹介します。

今度は建物の室内です。お客様が「床にビー玉を置くと自然に転がってしまうんです。以前テレビでビー玉が転がるのは欠陥住宅だと見たのですが大丈夫でしょうか?」と質問を受けました。

さあ、どのように答えますか。

簡易インスペクションの知識がないA君の回答

 

「中古なので多少ビー玉は転がります。」
「この築年数だとビー玉が多少転がるのは一般的ですね。」

どうでしょうか。

ひび割れの時の回答と同じ問題点がありますね。「中古なので…」「この築年数なら一般的」というのは、根拠のない意味のない回答です。

簡易インスペクションの知識があるB君の回答

レーザーレベルで計測した後に
「傾きが6/1000未満なので問題はありませんね。
この6/1000という基準は既存住宅売買瑕疵保険の基準です。
多少傾いていますが、許容範囲内で、今の状態でも
保険に加入できる状態なので問題ないと判断できます。」

このような説明を聞いたら、お客様は納得できます。なぜ問題がないのかという基準となる数字を元に、現在の傾きを伝えることが大切なのです。

信頼される担当者になる

専任媒介契約をとるためには、競合会社よりも信頼を勝ち取る必要があります。

お客様がどこの会社を選ぶのか、一番の判断基準は「担当が信頼できるか」です。

どんなに知名度のある会社であっても、担当者が信頼されなければ専任媒介をとることはできません。反対に、どんなに知名度のない会社であっても、担当が信頼されれば「あなたに売却を任せたい」と言ってもらえます。

インスペクションの説明が義務づけられた今では、もはや単なるインスペクション紹介だけでは差別化になりません。

実際に簡易インスペクションを実践している会社では、大手を含めて複数社の競合会社がひしめく激戦区でも、圧倒的な専任媒介取得率を叩き出しているところもあります。

信頼は「農場の法則」と同じ。

農場の法則というのは、ビジネス書籍のベストセラーの「7つの習慣」にある言葉です。

自分を成長させる、人間関係をよくしたいと考えるなら、農場作業のように、きちんと種を蒔き、水や肥料を日々与えなければなりません。

簡易インスペクションは、農作業でいうところの水や肥料を与えて信頼を育てるようなものです。

簡易インスペクションというすごい肥料を与えれば、すぐに成果が出る、専任媒介がとれる、といった水戸黄門の印籠ではありません。

ただし、簡易インスペクションを身につけることでお客様から信頼を得られれば、おのずと専任媒介をとれるようになっていきます。私のクライアントが効果を実証しています。

お客様の信頼を得るポイント

単なるインスペクション紹介だけでは差別化にならない
お客様に選ばれる担当者になるため簡易インスペクションを身につけよう

2018年4月からインスペクションの説明義務化になってから、以前に比べてインスペクションの認知度は高まっています。

とくに中古住宅の売買においては、「建物の状態がわからないから不安」で購入することを敬遠しているお客様が多かったのですが、インスペクションを活用することで不安を払拭して中古住宅の購入を検討する人も増えています。

おそらく今後も中古住宅の取引はどんどん増えていくでしょう。中古住宅の取引が増えるほど、簡易インスペクションの活用の幅は広がっていくと思います。

ぜひ簡易インスペクションを活用してみてください。

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