【不動産会社】事業再構築補助金の活用方法を解説

2021年4月15日より申請がスタートした「事業再構築補助金」は、経済産業省が進める事業予算1兆1,485億円の施策です。

電子申請で行うため3月26日に専用サイト「事業再構築補助金公式サイトhttps://jigyou-saikouchiku.jp/」が開設され、問合せや申し込みが殺到していると言います。

年内4回の公簿を予定しており、第1回目は4月30日と締め切りが間もなくと迫るなか、事業再構築補助金の内容や申請方法について要点をお知らせします。

不動産会社にとっても活用できる補助金なのか、どのようにすると補助金を受けられるのか、本記事を読むと理解できる内容になっています。

事業再構築補助金の概要

事業再構築補助金は今般の新型コロナウイルス感染症の長期化により、経営環境が悪化した中小企業等を対象としたもので、事業再構築を目指して新規分野への進出や業態転換・事業転換・業種転換、および事業再編・規模拡大を図る事業者への支援制度です。

補助対象業者は中小企業に該当する不動産業の場合は、資本金が3億円以下または常勤従業員が300人以下の事業者となります。(中堅企業は資本金が10億円未満または常勤従業員が2,000人以下)

補助金額は中小企業の場合100万円~6,000万円(通常枠)、補助率2/3ですが、このほか以下のような特別枠の補助メニューもあります。(中堅企業の通常枠は100万円~8,000万円、補助率は1/2ただし4,000万円超は1/3)

類型 摘要 中小企業 中堅企業
卒業枠 補助金額 6,000万円超~1億円
補助率 2/3
グローバルV字回復枠 補助金額 8,000万円超~1億円
補助率 1/2
緊急事態宣言特別枠 補助金額 100万円~1,500万円
補助率 3/4 2/3

補助対象として認められるのは以下の経費になります。

・建物費
・機械装置・システム構築費(リース料を含む)
・技術導入費
・専門家経費
・運搬費
・クラウドサービス利用料
・外注費
・知的財産権等関連経費
・広告宣伝・販売促進費
・研修費

詳しくは「令和二年度第三次補正事業再構築補助金公募要領(第1回)https://jigyou-saikouchiku.jp/pdf/koubo001.pdf」をご覧ください。

適用要件

事業再構築補助金を受けるには要件を満たす必要があります。事業類型(通常枠・卒業枠・グローバルV字回復枠・緊急事態宣言特別枠)により異なりますが、ここではもっとも一般的な「通常枠」の適用要件を解説します。

要件としては次の4つとなります。

1. 事業再構築要件
2. 売上高減少要件
3. 認定支援機関要件
4. 付加価値額要件

事業再構築要件

事業再構築には以下の5つの類型があり、それぞれの条件に該当することが必要です。

・新分野展開
・事業転換
・業種転換
・業態転換
・事業再編

新分野展開

主たる業種または主たる事業を変更しないで、新たな製品の製造や商品・サービスを提供する事業をスタートさせて新市場に進出する事業であり、次の条件にすべて該当することが必要です。

・事業者にとって、製品や商品・サービスが新規なものである
・事業者にとって、進出する市場が新たなものである
・事業計画期間終了後に新規の製品や商品・サービスの売上高が総売上高の1/10以上になる見込みがある

事業転換

主たる業種を変更することなく、主たる事業の変更をする場合が該当します。

次の条件に該当することが必要です。

・事業者にとって、製品や商品・サービスが新規なものである(新分野展開と同じ)
・事業者にとって、進出する市場が新たなものである(新分野展開と同じ)
・事業計画期間終了後に新規の製品や商品・サービスを含む事業が、売上高構成比でもっとも高い事業になると見込まれる

業種転換

主たる業種を変更する場合が該当し、次の条件に該当しなければなりません。

・事業者にとって、製品や商品・サービスが新規なものである(新分野展開と同じ)
・事業者にとって、進出する市場が新たなものである(新分野展開と同じ)
・事業計画期間終了後に新規の製品や商品・サービスを含む業種が、売上高構成比でもっとも高い業種になると見込まれる

業態転換

製品や商品・サービスの製造方法や提供方法が新しい方法に変更される場合であり、次の条件に該当する必要があります。

・事業者にとって、製造方法や提供方法に新規性がある
・製造方法が変わる場合は、製造する製品が新しいものである
・商品・サービスの提供方法が変わる場合は、商品・サービスが新規性のあるもので、既存の設備は撤去、既存の店舗は縮小などを伴うこと
・事業計画期間終了後に新たな製品や商品・サービスの売上高が総売上高の1/10以上になる見込みがある

事業再編

事業をおこなう組織が、合併・会社分割・株式交換・株式移転・事業譲渡などにより、事業形態が新しくなり、新分野展開・事業転換・業種転換・業態転換のいずれかに該当することが要件です。

売上高減少要件

売上高減少要件とは、申請前の直近6か月間のうち任意の3か月の合計売上高が、2019年または2020年1月~3月(この期間を「コロナ以前」と称します)の期間内で、任意の3か月の売上高と比較して10%以上減少していることを言います。

ここで任意の3か月とは “3か月間” ではなく “3つの月” であることに注意してください。

また売上減少の原因が新型コロナウイルス感染症の影響によらない場合は対象外となります。

認定支援機関要件

申請に提出する事業計画は「認定経営革新等支援機関」と共に策定しなければなりません。

また補助金額が3,000万円を超える場合は、認定経営革新等支援機関ならびに金融機関とも策定していることが必要です。

ただし金融機関が認定経営革新等支援機関であれば、金融機関のみとの策定で問題ありません。

事業計画には「認定経営革新等支援機関による確認書」または「金融機関による確認書」の提出が必要です。

認定経営革新等支援機関は全国の認定経営革新等支援機関一覧
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/nintei/kikan.htmで確認できます。

付加価値額要件

付加価値額が上昇することが要件となっており、補助事業終了後3~5年で付加価値額が年率平均で3.0%以上増加するか、従業員1人当たりの付加価値額が年率平均で3.0%以上増加する事業計画であることが求められます。

付加価値額とは営業利益+人件費+減価償却費の合計金額を言います。

3.0%の増加を計算する基準は、補助事業終了年度の付加価値額です。

補助対象経費

補助金額は前述の事業に必要な経費に対して、補助率にしたがい決定されます。そのため補助対象事業に投資する経費に限定されます。

経費項目ごとの対象経費は次のように定められています。

・建物の建設・改修費用(補助事業に使用する事務所・生産設備・加工施設・販売施設・検査施設・共同作業場・倉庫・その他事業計画に不可欠な建物)*建物の単なる購入や賃貸は対象外
・建物の撤去費用
・賃貸物件の原状回復に要する費用
・機械装置、工具・器具の購入と製作または借用費用
・専用ソフトウェア・情報システムなどの購入と構築または借用費用
・機械装置などと専用ソフトウェアなどを一体でおこなう、改良や修繕、据付や運搬の費用
・知的財産権などの導入に必要な費用
・事業のために依頼する専門家への費用
・運搬料、宅配・郵送料など
・クラウドサービスの利用に関わる費用
・事業のために必要な加工や設計・検査などの外注費
・新製品・サービスの事業化に必要な特許権などの知的財産権などの取得のために支払う弁理士の手続き代行費用など
・事業に関係する広告の作成やメディア掲載、展示会出展などの費用
・事業に必要な教育訓練や講座受講などの費用

*卒業枠・グローバルV字回復枠では、海外旅費も対象となります。

なお補助対象経費全般において、補助対象にならない経費も以下のように細かく定められています。

引用:事業再構築補助金「令和二年度第三次補正事業再構築補助金公募要領(第1回)」

申請方法

事業再構築補助金申請においては重要なポイントがあります。

申請には「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。

しかしGビズIDプライムアカウント取得には、現在たいへん時間がかかっており、事業再構築補助金申請にあたっては「暫定GビズIDプライムアカウント」での申請を可能にしています。

したがって申請の前に次の2つのアカウント取得の手続きを行ってください。

1. 暫定GビズIDプライムアカウント
2. 正式な「GビズIDプライムアカウント」

GビズIDプライムアカウント取得の手続きは https://gbiz-id.go.jp/ で行ないます。

申請の流れ

暫定GビズIDプライムアカウントを取得した後、電子申請のページにログインします。

電子申請ページ ⇒ https://jigyou-saikouchiku-shinsei.jp/

ログイン後は電子申請システムの指示にしたがって必要事項を入力していきます。

1. 申請者プロフォール
・ 申請者の概要
・ 事業を実施する場所
・ 事業内容
・ これまでの実績
・ 経費と資金調達内容
・ 加点項目
・ 必要添付書類の添付(電子ファイル)
2. 入力内容のチェック
入力内容は自動的にチェックされます。
入力型式に誤りがあれば、そのつどコメントが表示されます。
3. 申請ボタンを押す
入力内容にエラーがなくなると、すべての項目に「作成済」が表示されるので、最終的に入力内容を確認して「申請」ボタンを押します。

申請後は内容の変更はできませんので注意してください。

不明な点があれば「電子申請操作マニュアル」
https://jigyou-saikouchiku.jp/pdf/denshishinsei-manual.pdf で確認してください。

*GビズIDプライムアカウントの取得申請についても書かれています。

事業計画書の作成

事業再構築補助金申請にはPDF形式のファイルにした「事業計画書」を提出します。

事業計画書の内容は大きな項目で4つあります。これらの内容をA4サイズで15ページ以内にまとめるようにとされています。

1. 補助事業の具体的な取組

・ 現在の事業の状況を具体的に記載し、事業再構築の必要性と再構築の具体的な内容について記載します
・ 投資する内容について専門家の助言や研修の予定についても、詳細なスケジュールを記載することが望ましいです
・ 必要に応じて図表や写真なども表示するとよいでしょう
・ 事業再構築の種類(新分野展開・事業転換・業種転換・業態転換・事業再編)に応じて、事業再構築指針https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/shishin_tebiki.pdfにもとづいて記載しなければなりません
・ とくに補助事業により差別化や競争力の強化がどのように実現できるか、その実施体制・方法を具体的に記載します
・ 既存事業の縮小や廃止などがある場合は、従業員の解雇後に行う再就職支援についての配慮についても記載しなければなりません

2. 将来の展望

事業再構築により将来想定できる、価格や性能面の優位性や収益性について、課題やリスクを明らかにしその解決方法を記載します。

将来を想定するにあたっては経済産業省が公表した、統計分析ツール「グラレスタ」
https://mirasapo-plus.go.jp/hint/14583/ を活用することを勧めています。

* 「グラレスタ」の解説動画 https://www.youtube.com/watch?v=eOJtZc2jTcEも参照してください。

また事業再構築による成果について、目標時期・売上規模・量産化時の製品価格なども記載します。

図表や写真の活用も積極的にすることが望ましいです。

3. 本事業で取得する主な資産

事業再構築により取得する主な資産の名称・分類・取得価格を記載します。

ただし単価が50万円以上の建物や機械装置・システムなどです。

4. 収益計画

収益計画については以下のポイントに注意しなければなりません。

・ 事業再構築の実施体制やスケジュールそして資金調達計画を具体的に記載
・ 収益計画に記載する「付加価値額」の算出根拠を明確に記載
・ 収益計画に記載した「数値」は、補助事業終了後も毎年度、事業化状況報告などで伸び率の達成状況を事務局が確認しますので、根拠のある数値である必要があります。

不動産会社に可能な事業

事業再構築補助金制度を不動産会社が活用しようとする場合、中小企業庁が公表している「事業再構築指針https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/shishin.pdf」に則ったものでなければなりません。

また本記事においても「事業再構築補助金の概要」や「適用要件」に述べた条件等に該当する必要があり、ハードルは高いと考えられます。

経済産業省が公表している同制度のパンフレット類にも、不動産業に関わる事業事例の記載はありません。

唯一掲載されているのが、経済産業省・中小企業庁作成の「事業再構築指針の手引き(1.1版)https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/shishin_tebiki.pdf」にある以下の事例です。

引用:経済産業省・中小企業庁作成の「事業再構築指針の手引き(1.1版)

この事例は「新分野展開」に該当するケースであり、不動産会社がこれまでの事業とは別に、新分野に進出する事業であれば適用される可能性は高いと言えるでしょう。

同様のケースでは過去に、建設業者が水耕栽培による農業に進出した例や、介護事業に進出した事例もあります。

したがって現在不動産会社であっても、まったく別の新規分野に進出するケースは、適用要件とくに「新規事業の売上高が総売上高の1/10以上になる見込み」がある事業計画であれば可能性は高いと言えます。

「新分野展開」以外の類型で可能性が高いのは、業種転換も新分野の展開に近く可能性はありますが、新しい業種が「売上高構成比でもっとも高い業種」となるかが必要でハードルは高いでしょう。

「業態転換」は可能性が少しありそうです。

これまで対面営業が不動産業界の常識でしたが、コロナ禍により非対面に転換してきています。

デジタル化・オンライン化に出遅れていた不動産会社は、この機会に一気にDXを図り業態を転換することが可能です。

対面営業が前提であった店舗を閉鎖し、オンラインのみでの営業活動により、IT重説・IT契約と大転換をするには相当の投資も必要です。

ICTに不慣れな社員にデジタル端末の操作や、アプリケーションを自在に使いこなすスキルを身につけさせるには、教育投資も必要になるでしょう。

さまざまなクラウドサービスを活用するにも、これまで不要であった初期費用やシステム利用料が発生します。

業態転換により「新しいサービスによる売上高が総売上高の1/10以上になる見込みがある」などの要件を満たせることができると、補助金が適用される可能性は高いと思われます。

まとめ

事業再構築補助金制度は新型コロナウイルス感染症の拡大により影響を受けた産業に対し、ビジネスモデルの変更により、経営状態の改善を支援しようというのが狙いと考えられます。

対面・接触などの制限によりビジネスそのものが困難になっている業界、たとえば飲食業や観光業そして間接的な影響を受ける製造業を営む事業者には、大きな影響を受けているケースがあります。

不動産業界に対する影響は比較的少ないため、制度そのものが不動産業に適用しやすい内容にはなっていないことは否めません。

しかしながら業態変化や新規分野への進出など、補助要件に該当する事業もあります。

現在募集されているのは第1回であり、申請締め切りは4月30日までですが、今年度は合計4回募集する予定になっています。

この機会に是非活用を検討されるようおすすめします。

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