住宅新築やリフォーム工事をメインとする工務店、営業担当は社長一人の場合もあれば、数名のスタッフが営業を担当するケースもあります。
集客方法はWeb、折込、情報誌などいろいろな媒体を使っていますが、成約確率が高いのは「紹介」です。
紹介受注の多い工務店はお客様の評価が高いことの証し、営業戦略として力を入れたいものです。
ここでは紹介受注を増加させるために行ないたい、業務のワンストップ体制や長期的な視点に立ったお客様フォローについてお伝えします。
紹介してくれる理由としてくれない理由の違い
引渡しを終えたお客様あるいは工事中のお客様から、住宅を建てようとしている知人などを紹介してもらうには、どのような方法があるのでしょうか。
まず大事なことは引渡しを終えたお客様には、紹介してもらえる方と紹介してもらえない方がいることです。
紹介してくれない方には次のような理由があります。
・紹介した知人からクレームが来たら困る
・紹介をする理由が見つからない
・引渡しを受けて満足はしているが知人を紹介することは避けたい
マイホームづくりが満足のできない形で終わった場合は、100%紹介してもらえることは望めませんが、満足できた場合であっても知人を紹介するには相当な覚悟がいるのです。
住宅の工事は1千万円以上の高額な費用がかかり、一生に何回も建てられるものではありません。
紹介をして万が一なにかトラブルが生じると、発注した知人は後悔するでしょうし、紹介した方も後悔することになります。
反対に紹介してくれるお客様は、よほどの満足感があり紹介してもクレームになることはなく、必ず喜んでもらえるといった自信があると言えるのです。
お願いすると紹介をもらえるか?
ハウスメーカーは紹介受注に力を入れています。
何故なら紹介受注は競合が少なく、受注できる可能性が非常に高いからです。
営業会議などでは受注成績の悪い営業マンは「紹介をお願いしているか?」と、上司から叱責を受けることもあります。
しかし紹介はお願いしても貰えるものではありません。
理由は前述したように紹介してくれるお客様は、実は非常に少ないのです。
工事に満足したお客様であっても紹介することは敬遠するものです。
引渡し後もたびたび顔を出してくれる担当者、簡単な不具合ならその場で直してくれ、面倒見がよく会話も気さくでよい人間関係がつづいています。
しかしこのような担当者であっても「紹介してください」と、ストレートにお願いされるとお客様は戸惑うことでしょう。
お客様が知人を紹介してくれるのは、自分と同様の満足感を味わってほしいと思うからであって、紹介を要求する担当者を応援しようという感情から紹介することは少ないものです。
「紹介してください」は逆効果と考えたほうがよいでしょう。
現場見学会などのイベントがチャンス
「紹介してください」とストレートではなく、お客様が知人を紹介するのに抵抗感の少ないのが、現場見学会などのイベントです。
現場見学会は文字通り工事途中の現場を公開するのですが、施主でもない他人が工事現場に入り込んで隅々を見学できる機会はあまり多くありません。
具体的な新築計画の有無にかかわらず、興味を持つ人は多いものです。
2~3年後に具体化する人もいればもっと先になる人もいるかもしれません。
訪れる人もあまり警戒感なく見学に来ることが多く、住宅展示場とは少し雰囲気が変わるものです。
引渡したお客様や工事途中のお客様に「現場見学会があるのでお知り合いの方に声をかけていただけませんか?」とお願いしても、あまり負担に感じることはなく、後々のクレームまで心配することは少ないでしょう。
工務店が紹介受注を進めやすい理由
業態のあまり大きくない少人数の工務店では、ハウスメーカーのように営業・設計・工事・事務・アフターなど、業務を分離して行うことは少ないと思います。
設計は建築士の専門業務になりますが、営業~工事~アフターまで一人の担当者が行う「ワンストップ体制」を採用しやすいでしょう。
理想的には設計も行える建築士が、年間に数名のお客様を担当することが望ましいですが、建築士が一人の工務店では設計は専門業務として別にするしかないかもしれません。
一人の担当者が最初の打合せから工事の完了そしてアフターまで、一貫してお客様に寄り添ってくれる安心感は、分業体制のハウスメーカーにはないものです。
担当者にとってもすべてが自分の責任になるので、なにかミスがあっても「○○担当の○○が間違っていまして・・・」などの言い訳は通用しません。
そのため仕事に向かう姿勢が真剣になり、向上心も高まります。
ワンストップ体制がうまくいくと、お客様をフォローする範囲を広げる動きも生まれます。
たとえば新築住宅用の土地探しなど、これまでは不動産会社に依頼していたところを、自社で宅建業務をこなすようになる事例もあります。
宅建業務は引渡し後の転売など、お客様の新たなニーズにも対応でき、業態を拡大することにもつながります。
紹介受注を増やす戦略
工務店が紹介受注を増やそうと考えるなら、どのような戦略を立てるべきでしょうか?
紹介受注は一朝一夕で可能になるほど簡単ではありません。
前述したように現場見学会を活用した方法は、あくまでもスポット的な戦術であり、営業戦略としては長スパンで臨む必要があります。
冒頭で述べたように、引渡しを受け満足したお客様であっても、知人を紹介することについてはできるだけ避けたいものです。
その理由はクレーム発生が心配だからです。
たとえ工事期間中になんのトラブルもなく、スムーズに住宅づくりが上手くいったとしても、知人を紹介して絶対大丈夫といえる保証はありません。
そのため進んで紹介をしようとは思わないものです。
引渡しを終えたお客様の信頼を得るには、引渡し後の行動が重要です。
住宅は工事が完成したときが “完成” ではありません。
新しい住まいで新しい生活がはじまり、子どもがいる世帯では子どもの成長に住まいが合っているのか?
施主家族も年齢を重ね新築したころと比べると、いろいろな面で変化していきます。
住まいはそのような変化に合わせて成長するものです。
メンテナンスも必要ですし家族の変化に合わせたリフォームも必要でしょう。
つまり引渡しの時点から本当の意味の “住まいづくり” がはじまると考えなければなりません。
そして担当者はそのお手伝いを引渡し後、10年、20年とおこなっていくのです。
その過程でお客様は「この人なら知人に紹介しても大丈夫!」と、心から思ってもらえるものなのです。
まとめ
住宅に関わる仕事とくに注文住宅は、施主家族と一生のつき合いになることもあります。
紹介をいただけるお客様は、会社にとっても担当者にとっても貴重な財産です。
ハウスメーカーの営業マンには紹介だけで好成績をつづける事例もあり、工務店であればなおさら良好な人間関係を形成することが可能です。
建設業界でも進むDXにより仕事の効率化は格段によくなります。
生まれる時間を利用して既存客のフォローに力を入れ、盤石な受注力アップを目指しませんか。