お客様から物件を紹介してほしい、探してほしいと依頼されたとき、客付け業務はスタートします。
「家がほしいのですが? 」などと来店する場合もあれば、オープンハウスに来場され見学しながら「ほかにも物件ありませんか? 」と尋ねるお客様もいます。
お客様のほうからやってくる、見込み客獲得絶好のチャンスです。しかしせっかくの機会に初期対応を間違うとあっけなく他社に獲られてしまうこともあります。
不動産仲介の仕事は不動産取引が成立してはじめて「仲介手数料」をいただける成功報酬型のビジネス。名簿にたくさんのお客様名が記載されていても内容には濃淡があり、営業実績に結びつくかどうかはまったくわかりません。
物件を探すお客様は必死です。いろいろな機会をみつけて、たくさんの不動産会社に物件探しを依頼するもの。そのなかで最初から「ほかの会社には頼まない」というお客様もいます。
そのようなお客様は “最初の対応”で決まることが多いものです。
不動産客付け仲介の初期対応時にヒアリングするべき項目
お客様に物件を紹介するときにもっとも大切なことは「ピントが合ってる! 」ことです。
お客様から希望条件を聞いたとしても、いい表せないことや漠然としたイメージながら実は大切な条件というものを持っている場合があります。
例え希望に合致した物件を紹介しても「どこか違うな~」と感じられ、そのうち他社がピントの合ってる物件を紹介し、そちらで決まってしまうこともあったりします。
初期対応でお客様から聞き取りする項目がありますが、すべて目的があってヒアリングします。この章はそれらの聞き取り項目に関する重要なポイントの解説です。
ヒアリングする項目は大きく3つ。
2. ローン審査に関わる情報
3. 物件を選択する条件
これらについてこまかな項目を記載したのが下表です。
お客様情報 | 氏名 |
ふりがな | |
現住所 | |
年齢 | |
電話やメールアドレス | |
ローン審査 | 勤務先 |
勤続年数 | |
年収 | |
希望金融機関 | |
物件選択条件 | 購入動機 |
家族構成 | |
家族の通勤・通学先 | |
予算(自己資金・借入希望額・返済計画) | |
物件種類 | |
立地条件 | |
規模 | |
入居時期 | |
その他の条件 |
特に注意したいポイントをピックアップします。
特に注意したいポイント
【お客様氏名のふりがな】
読みづらい氏名のかたがいます。お名前の読み違いは失礼なこと、必ずふりがなも記載するようにしましょう。
【連絡先のメールアドレス】
ほとんどのかたがIT機器を使いこなす今日です。EメールやLINEなどのツールでコミュニケーションをとるほうが記録が残るので、いい間違いや解釈の違いを防ぐことができ伝達ミスも無くせます。
【勤務先や年収】
勤務先や年収については初対面の場合、聞きづらいものがあります。しかし住宅ローンの利用に関して “審査が通る見通し” をある程度把握しておくことは大切です。
初回では無理としても具体的に物件紹介をするときなど、住宅ローンを話題にしながら聞き出すのがスムーズです。
【購入動機】
物件紹介のピントが外れる原因は「購入動機」を深堀していないときにありがちです。
お子さんのいるご夫婦が物件探しをされており、希望する条件が「平屋の小さな戸建」という事例がありました。家族構成と希望条件に違和感があります。
このお客様は他社の物件に決定されたのですが、離婚予定でありご主人ひとりが住まわれる物件を探していたとのことでした。そのことを最初から知っていれば、物件選びは大きく変わっていたでしょう。
【家族構成や通学先】
お子さんがいる場合、通学先を聞いておくことは大切です。住み替えは学校区の変更や通学便に影響があり、物件選択の重要ポイント。
【物件選択条件全般】
できるだけ多くの条件を表面化させることが大切です。
すべての条件を満たす物件はありません。いくつか候補になる物件から “捨ててもよい条件” を順に落としていって物件を絞り込むという作業が実際にはおこなわれます。
隠れた条件があると決断ができないものです。条件をできるだけ並べることによって、優先順位を決めることができるのです。
客付け仲介の初期対応時に気を付けること
お客様は物件を紹介してほしいことだけが目的ではありません。不動産取引への漠然とした不安や、大きな金額のローンを抱えることになる不安もあります。
そしてなにより、物件そのものを正確に評価できる知識を持っているお客様はほとんどいません。そのため説明する担当者にはさまざまな質問や相談をしてくるでしょう。
それらに充分応えられるような知識と経験が必要なことはもちろんですが、 “知ったかぶり” をしないことも大切です。
知らないことや判断できないことは「調べてからご連絡します」と答えるとよいのですが、適当な答えやあいまいな説明をする担当者もいます。
経験が浅く知識の乏しい営業マンほど、いい加減なデマカセを平気で口にする現場を何度もみてきました。わからないこと知らないことは「知らない」と正直にいえることが、優秀な営業マンになる近道です。
初期対応でお客様の信頼を得ることは非常に大切。以下に信頼を得られるポイントをまとめましたので、ぜひ実践してください。
お客様を好きになる | 「好意」はほんのわずかな言葉やしぐさにでるもの、するとお客様も好意を持ってくれる |
話し上手より聞き上手 | 自分の話は半分以下にしお客様にできるだけ多く話してもらう |
質問は尋問でなく会話で | 自然な会話のなかからお客様から聞きたいことを引き出す |
希望よりも不満を聞き出す | どんな物件がほしいかを聞くよりも現在の生活で不満なことを聞き出す |
客付け仲介の初期対応時にお客様ランクを見極める
住宅の購入を考えているお客様は、不動産会社の営業マンから説明を聞いたり質問や相談をしながら、住宅情報誌・インターネットなど、さまざまな媒体からも情報を得て知識が豊富になっていきます。
各社がおこなうオープンハウスにたびたび行かれ目の肥えたお客様、最近になって住宅に興味を持つようになり、初めて不動産会社の店舗を訪れたというかたもいらっしゃいます。
初期対応時にお会いしたお客様が、どの程度の情報を集められ勉強されたのかにより、お知らせする情報が物足りない場合もあれば時期尚早ということもあるでしょう。
お客様は情報量が増えるにしたがい「選択眼」や「判断力」が高まり、やがて「決断力」が持てるようになると、ご自身の判断で物件購入を決断するようになります。
つまり……お客様は時間とともに成長するのですが、次のようにイメージするとわかりやすいかもしれません。
「ステージⅠ情報収集段階」のお客様に「この物件はめったにありません、すぐ買いましょう! 」などと、積極的にプッシュしても困惑するだけです。
逆に「ステージⅢ選別決断段階」に来ているかたに「参考までにこんな物件もありますよ! 」と、興味のない物件の紹介は雑音以外のなにものでもありません。
お話ししているお客様がどのステージにあるのかを見極め、ステージにふさわしい情報提供をするようにしなければなりません。
まとめ
不動産販売の営業マンは年間たくさんのお客様とお話しすることになります。一人ひとりのお客様の顔と名前を記憶することはむずかしいものです。
しかしお客様情報を「顧客カード」とか「お客様カルテ」などに整理しておくと、たくさんのお客様でも顔を思い出すことができるもの。
重要な営業ツールともなる「顧客カード」は、お客様と初めてお会いした初期対応時に作ります。
作ったカードは営業グループ内の情報共有に役立ちますし、成約に至るまでの経緯を記録しておくと、顧客フォローのノウハウ蓄積にも役立つのです。
接客後には必ずカードに要点を記録するようにします。その習慣がやがて営業マンとしての能力や資質を高めてくれるでしょう。