賃貸管理業に従事するスタッフが納得できる評価指標とは何か?

賃貸管理会社様とお話をする際に、よく話題にあがるのが、従業員の評価制度だ。

多くの管理会社の幹部のかたが、この評価方法や評価指標で悩んでいる印象だ。

実際、不動産業界のなかでもこの賃貸管理業における評価指標の策定は個人的にも難しいと感じる。

仲介業では売上額や件数が評価指標になり、そして開発業では売上額や受託金額などが評価指標になるが、割とそれぞれ明確に評価設定をしやすい。

しかし賃貸管理業は少しこれらとは性質が異なる。管理受託数や売上額のみを評価の指標としてしまうと、既存で管理している物件の管理維持やリーシング活動に影響が出てしまうし、逆に売上増加の観点を評価から外してしまうと、どうしても既存物件の維持管理に集中してしまいがちになる。

多くの管理会社ではこのあたりのバランスを取りながら、それぞれの評価指標を組み合わせている会社が多い。

たとえば、全体のうち、既存の物件に対する評価指標は、6割程度。残りの4割程度は、新規開拓や売上獲得をベースとする評価指標にする。

さらに分業が進んでいる管理会社では、この割合もメンバーの業務によって配分を変更させているケースが多い。いずれにしてもかなり細かい設定が必要になるのは、間違いないことだ。

今回はこのように多くのかたが悩んでいる賃貸管理事業の評価指標を紹介したい。

これから管理業務を行う不動産会社のかたや、現在明確な評価指標のない管理会社のかたは是非参考にしてほしい。

評価策定をするうえでの前提とは?

賃貸管理業務での評価策定を作る際には、SMARTの原則を活用することが効果的だ。

S(Specific): 具体的であること
M(Measurable): 測定可能であること
A(Achievable): 実現可能であること
R(Relevant): 業務に関連していること
T(Time-bound): 期限が設定されていること

上記のように客観的な視点と現実的な視点での評価指標を作らなければ、どうしても上司の主観的な評価になりがちになってきてしまう。

これは賃貸管理業務だけではなく、他の業務の評価策定でも応用できるので参考にしてほしい。それでは各評価項目を紹介していきたい。

1.入居者管理指標

まずなにより入居者の満足度を高めることは、賃貸管理業の重要な役割になる。

しかし、この満足度を計測するのはなかなか難しい。

たとえばとある会社では、定期的に入居者アンケートを実施している。

このアンケートのスコアをベースに、評価指標を策定している会社もある。

たとえば「1年間の入居者満足度アンケートのスコアを〇〇%以上に引き上げる」のように設定しているケースがそうだ。また入居者のクレームに対する改善案の実施を評価指標に置いている管理会社も存在している。

「6ヶ月以内に入居者のクレーム件数を20%削減するための改善策を実施する。」このようなこともひとつの事例だ。

2.空室率の改善

空室率を低く保つことは、物件の収益性向上に直結する非常に重要なポイントだ。

「次年度の空室率を現在の10%から7%以下に減少させる。」
「新規契約件数を四半期作対比で〇〇件増やす。」

こうした空室率や稼働率をベースとした評価指標は、多くの大手の管理会社で導入されている印象だ。

3.収益管理・コスト削減

物件の稼働率を向上させることとと同時に、コスト管理も管理会社にとっては、重要な要素だろう。

たとえば、いくつかの管理会社では、管理している物件の運営コストを1年で〇〇%削減する目標や、一定期間までに管理業務全体の収益率を〇〇%向上させるという目標などを設定している。

なかなか業務を数値化をし、リアルタイムでこうした数値を現場レベルまで落とし込むのは大変な部分があるが、実際こうした数値をベースに賃貸管理業務を行っている管理会社は、どの会社もやはり収益性が高い。

4.修繕、メンテナンス

管理している物件の価値を維持するためには、適切な修繕とメンテナンスが必要になるが、いくつかの管理会社では以下のような目標指標を設定している。

「定期メンテナンスを予定通りに完了させ、緊急修理の発生件数を〇〇%減少させる。」
「物件の老朽化部分を1年間で〇〇件以上修繕し、資産価値を向上させる。」

このように売上サイドだけではなく、維持管理のための目標を設定することで、常に自社の管理物件の管理状況や物件の状態に目を配ることができるようになる。

5.新規獲得管理戸数、受託売上

冒頭で紹介したように、管理会社は、オーナーから受託している既存の物件の管理業務と同時に、それを増加させるための新規獲得の活動も行っていかなければいけない。

そのためには、獲得管理戸数や受託売上などをしっかり評価項目に入れる必要があるだろう。

勿論、この獲得目標を達成するための「オーナー提案数」、「商談数」、「査定獲得件数」などもKPIとして設定している管理会社も多い。

6.資格取得

最後に、まだ宅建や賃貸経営管理士など管理業務に必要な資格取得ができていないスタッフには、こうしたら資格関係の取得を評価指標に入れても良いかもしれない。

実際に取得率が高い管理会社は未取得のスタッフに対してこうした評価指標のなかに資格取得を盛り込んでいるケースが多い。

賃貸管理業務はその業務単体で見ると、なかなかスタッフのモチベーションを上げることは難易度が難しい。

しかし、しっかりと評価体制を構築し、スタッフに周知して実装していけば社内の空気も良く変化することもある。是非、参考にしてみてほしい。

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