うまくいけば9,000万円もの大型契約を地場工務店が取れたかも・・・
今日のコラムでは、つい最近入手したこんな情報を皆さんにお伝えしましょう。
某住宅会社(B社)の依頼でお客さん(Yさん)の取材を行ったのですが、そのお客さんが B社と契約した建築請負金額はなんと9,000万円 でした。
通常の3棟分から4棟等分になりますので、会社としてはもちろんですが、担当営業マンも気合が入りまくった案件でした。
お客さんに取材をしていろいろ聞いたのですが、驚いたことに当初は競合先であった地元の小規模工務店に建築を依頼する気でいたことがわかったのです。
Yさんがまず初めに語ったこと
ズームによる取材で小一時間ほどお話を伺ったのですが、私が色々とお聞きする前にYさんが契約に至った経緯をまくしたてるように話してくれました。
「今回は結局B社にお願いすることになったんですけども 、実は直前まで地元の小さな工務店でやろうと思っていたんですよ・・・」
このような感じで話は始まりました。
取材を私に依頼したB社の意図は、どうしてB社に建物を依頼してくれたかを探ることにあったのですが、話をよくよく聞いてみると、B社がよかったのはもちろんですが、地元工務店の問題が多々あったのです。
大手に頼む気は全くなかったYさん
意外かもしれませんが高額住宅を建てる方の中には大手ハウスメーカーを敬遠する方が結構いるのです。
東京都世田谷区在住で、同区内に土地を購入して豪邸を建てた方にお会いしたことがあるのですが、その方はこんなこと言っていました。
「積水ハウスとか三井ホームとかは嫌なんだよね。だってああいう会社は住宅のデパートじゃない。高い商品もあるけどすごく安いのもあるでしょう。そういうところで家を建てるのが面白くないわけだよ。高級住宅なら高級住宅だけを年間数棟だけ扱ってるような設計事務所とか工務店がいいと考えているんだ」
これは家を建てる前だったのですが、事実この方は地元の工務店に1億を楽に超えるような住宅を発注して、大満足の家づくりをしました。
この工務店を私は知っているのですが、八王子に建っている演歌歌手の北島三郎邸の大工工事一式を請け負った工務店なのです。
社長とも面識がありますが、派手なことをせず地道に良い住宅を作ることで定評がある工務店です。
Yさんも同じ発想を持っていました。
大手ハウスメーカーは面白くないということです。
「積水ハウスも面白くないね」
積水ハウス出身の私としては、この話に聞き耳をたてたのですが、お客さんの考えは極めてシンプルで明快でした。
積水ハウスの最高級住宅シリーズは「IS STAGE(イズステージ)」になりますが、見る人が見れば一見してこのシリーズだということがすぐにわかるのです。
もちろん、今でも私は 一瞬にして判別がつきます。
遠目からでも屋根の形や外壁がチラリと見えると「あれってイズステージじゃないかな?」と気になり近寄るとまず間違いなく当たっています。
Yさんの家を選択する基準は唯一無二。
これが大きな判断材料になっているので、積水ハウスや三井ホームなどの大手メーカーを最初は考えてなかったとのことでした。
以前から気に入っていた 地元のF工務店
ネットでチェックをして気になっていたが・・・
このような考えを持つYさんだったので、一発目に足を運んだ住宅会社はネットで以前からチェックしていた地元のF工務店でした。
しかし、他社を見ることもなく、プランの要望を伝えて図面を提出され、見積もりも出たところでだんだん疑問を持ち始めたのです。
プレゼンテーションの質が低い
Yさんはこれが引っかかったようです。
Yさんは10年前に服飾関連の会社を独立し、今では従業員をたくさん抱えるデザイン事務所の経営者です。
デザインを生業にしているわけですから、その手のものに投げかける目線は当然シビアになるでしょう。
そんなYさんの目にはF工務店が出したプレゼンテーションがあまりにも時代錯誤でレベルの低いものに感じたようです。
間取り云々ではありません。
見た目のインパクトや色使いなどを含め、Yさん曰く「モノクロの世界なんですよ」とのこと。
派手な色使いが良いとは言いませんが、やはりプレゼンテーションには華やかさが必要なのです。
この辺りはハウスメーカーが圧倒的な得意分野としているのですが、 F工務店はここに対する認識が欠如していたのでしょう。
私はこのプレゼンテーションを見たわけではないので何とも言えないのですが、Yさんの落胆ぶりはかなりのものだったようです。
アフターサービスが曖昧
これも今日工務店に共通する弱の一つでしょうね。
これはYさんの几帳面な性格が影響したと思いますが、Yさんに言わせると、アフターサービスの話をこちらが聞くまで向こうが切り出してこなかった事が癪に障ったようです。
結局ある大手ハウスメーカーB社にしたのですが、その時の折衝時にはタブレットを使って、徹底したアフターサービスの内容をこちらから要求することもなく営業が話してくれたそうです。
大手ハウスメーカーと対等に渡り合うアフターサービスを小規模工務店が提供するのは難しいのは分かりますが、F工務店はこのあたりの認識がおそらく弱かったのだと私は推測しています。
デザイン性に対する不安
デザイン会社を経営するぐらいですから、家のインテリアについてはかなりうるさいことが想定できます。
しかし、事前のチェック段階でF工務店のインテリアはホームページ上でなんとなく把握していたことでしょう。
おしゃれな工務店だと認識した上で相談を持ちかけたわけなのに、 実際に商談ペースになった時に、なぜかデザイン性に対して大きな不安をいだいたとのこと。
「ホームページを見ると確かにおしゃれな感じの建物がたくさん載っていたのであまり不安はなかったのですが、私が自分の希望するデザインの話をすると、結構社長が否定してくるんですよね」
原因はこれでした。
工務店の社長がお客さんの希望するデザインを否定しにかかることはあまり聞いたことがないのですが、どうやらF工務店の社長はデザインに対して一家言を持っていたようで、Fさんの希望に対して強い態度ではないものの否定する言葉を並べたようです。
これはかなりの決定打になったようで、自分が理想とするデザイン性を実現できないような会社では話にならないとのことで商談を打ち切ったようです。
結果的には大手ハウスメーカーに
ただ、大手ハウスメーカーはデパートみたいでつまらないと言ってのけたYさんです。
そんなYさんが結果として大手ハウスメーカーに決めてしまったのですが、それは営業の対応にありました。
先ほど唯一無二の家をYさんが希望していると書きましたが、ハウスメーカーの営業には、このことを真っ先に伝えたそうです。
そうしたところ営業は、自分のタブレットを出して、個性的な建物だけが並んだ自社の物件の写真を次から次へと見せたそうです。
おそらくYさんのようなお客さんに対応するために彼が準備していた写真集だと思うのですが、この写真集を見せたことがYさんの心を大きく動かしたのでしょう。
「僕は勘違いしていたんだよね」
大手ハウスメーカーつまりプレハブメーカーは画一的で外観が同じだ、と考えていたYさんですが、営業が見せたこのタブレットでのプレゼンテーションで考え方が180°変わったそうです。
先ほど積水ハウスのイズステージの話をしましたが、この営業がイズステージに該当するような高級住宅でありながらも、外観を見ればすぐに商品名が分かってしまうようなものを見せれば、Yさんはきっと断っていた事でしょう。
人と同じものは絶対に嫌だというYさんにうまく合致したわけです。
まとめ
この取材では終始Yさんが堰を切ったように話をしてくれたのですが、F工務店への未練はかなりあったようです。
「いい造りをしてるし、匠の技術を持ってるんだよねえ・・・」
そのあたりに惚れ込んだようなのですが、いかんせん本文に書いたようなところが引っかかって、結果的には全く予期していなかった大手ハウスメーカーに依頼することになったのです。
本記事執筆講師が動画にてわかりやすく解説
工務店営業社員の育て方 「24年にわたって現場で営業育成をしてきたノウハウの一部をご紹介」
積水ハウスと 零細工務店で営業を経験したのち独立した私は、以後24年間に渡って現場で営業指導を行ってきました。
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