【土地価格にも影響する】私道に公共管を布設できる条件や方法について

道路幅員や接面道路の方位、間口などは査定や販売価格にも影響を与える土地の要因です。

ご存じのように接面道路が私道の場合、持ち分や通行掘削同意、再建築時の制限などの問題も懸念されることから相続税評価の考え方に準じ、流通価格の30%減を目安に奥行補正なども勘案し評価しますので、総じて価格が低くなります。

同時にライフラインとして必要な上下水道管等が私設管だと、改築や修繕又は維持行為などを全て地権者が負担しなければならないこともあり、目安金額からさらに減額して評価する必要があるでしょう。

私道を複数の所有者で共有している場合、上下水道等の布設管の維持管理が目的であっても掘削等については地権者全員の承諾が必要とされ、お互いの関係が良好であればまだ良いのですが、そうではない場合には同意を得るのも困難ですし、中には所有者が所在不明の場合もありますから厄介です。

このように売買するにも建築するにも問題が生じやすい私道に接する不動産ですが、同じ私道であっても公共の上下水道管が布設されている場合と、私設管の場合が存在しています。

価格にも影響を与えますから、公共管が良いのは言うまでもありません。

ところで私道に布設された私設管を公共管に変更することは可能なのでしょうか?

また申請条件等についてご存じでしょうか?

今回はこのような素朴な疑問について解説します。

公共管と私設管

道路に埋設されている一般的な公共管と言えば上・下水管やガス管ですが、それら配管の布設状況については自治体の管轄部署(ガス管については供給しているガス会社)で行うのはご存じのとおりです。

それぞれ水道台帳や下水道台帳、ガス管布設図等を取得して確認します。

公共管が布設されているのであれば、これらの図面を見ればひと目で分かります。

例えば下水道の場合、下記のような公共下水道台帳を確認すれば、配管経や「ます」の設置状況と同時に道路上に線が引かれていることにより公設管(私設管は空白になります)であるということが確認できます。

公共下水道台帳

私設管と公共管の違いは、単純に言えば布設された管の所有者が誰かと言うことです。

公共管であれば維持管理も含め自治体の責任となりますから、配管が古くなって交換する場合などにおいても私道所有者の負担はほとんどありませんが、私設管の場合には全額負担しなければなりません。

排水設備,公共下水道

もっとも公共管が布設されていても、例えば下水の場合には宅地内にある「公共汚水ます」までが公共管で、そこから住宅まで引き込む管は私設管です。

当然、維持管理は所有者が行いますが、これは当然だと理解できるでしょう。

このような理由から、考えるまでもなく公設管が有利です。

公共管の布設は申請できるが……

私道所有者全員の承諾が得られ、最低限の幅員などの諸条件を満たしていれば上下水道管やガス管などの布設はいずれも可能です。

ただし問題なのが、私道所有者全員の承諾です。

分譲マンションにおける共有部分の復旧議決のように、区分所有者総数の4分の3で実施できるとされればまだ良いのですが、令和3年1月に実施された国土交通省下水道部の実態調査によれば、全国の約7割の下水道管理者は「私道の土地所有者全員の同意を条件」として行政手続きを行っているからです。

予断ですが筆者がつい最近手掛けたコンサル案件で「私道に面する土地で建て替えるにおいてオールガスにしたいのだけれど、現在、道路にガス管は布設されておらずバルクタンクを敷地内に設置する必要がある。できれば新たにガス配管を布設したいのだが、4名の地権者のうち1人だけが『うちはLPガスを利用しており、それで不便はないから』と同意を拒んでいる。私道に面する地権者全員のメリットにもなるのだから何とかならないか」という相談がありました。

このケースでは反対している所有者が使用しているガス給湯器は年代物で、交換時期がとうに過ぎており燃焼効率も悪い代物であったことから、LPガスと都市ガスによるランニングコストの違いを丹念に説明し、ガス会社の協力も得て格安で高効率ガス給湯器の交換工事を行うと条件提示することで同意を取り付けることが出来ました。

このケースでは私道地権者全員の所在が明確であったことから交渉手間だけで済んだのですが、所在不明の場合には容易ではありません。

それ以外にも高額なハンコ代を要求されるなどのケースもあります。

所有不明地の解消や、公益的見地から維持管理の簡素化に向け民事基本法制が見直されていますが、ほとんどの自治体は公共管の布設条件として所有者全員の承諾書はもとより、実印による押印と印鑑登録証明書の添付を義務付けています。

このように頑な行政手続きは、デジタル社会の実現に向け行政手続きもオンライン化しようという動きと逆行していると、批判する意見も多いのですが、現在までのところ変更される見通しはありません。

つまり公共管の埋設が可能かどうかは、所有者全員の承諾が得られるかがポイントです。

私道所有者全員の承諾書が得られる場合には、各自治体の定めによる「埋設管設置要項等」の基準に適合していれば、上下水道など公設管の布設を行ってくれます(全ての自治体ではありませんので確認が必要です)

ただしどの自治体においても布設工事の観点から私道の幅員が2m以上必要とされるほか、私道に面する土地の沿道権利者が複数存在していること(概ね3軒以上が目安)が最低の条件とされています。

水道メータの個数が3個以上ある私道

埋設管設置要項等は共通している箇所も多いのですが、各自治体への確認は必要です。

具体的な手続きの流れ

私達が申請方法等を私道所有者に説明し、実際に公共管が布設されれば土地評価も上がるのですから、申請の流れや基本条件を理解しておくことは必要でしょう。

自治体の違いや申請するのが水道なのか下水管なのかにより必要書類や手続きの流れに違いはありますが、基本的には下記のような順番です。

1.調査依頼(私道への公共管布設、調査依頼を所有者のうち代表するものが申請)
2.回答(調査を行った結果、施工可能かどうかを自治体から回答)
3. 公共管設置願書(必要とされる同意書や区画図等の添付書類を併せて申請)
4.承諾書(自治体からの承諾)
5.設置決定書(自治体から施工予定等の通知)

また申請書等の入手や手続方法については、各自治体の管轄部署に問い合わせが必要ですが、自治体の公式ホームページでダウンロードできる場合もありますので、一度調べて見ると良いでしょう。

その他、布設工事の後に必要な私道舗装助成の申し出や施設引き継ぎ申請書などが必要とされる場合もありますが、それらは諸条件によりことなりますので解説を省略します。

まとめ

私道に接する土地については、今回、解説した公共管の布設もそうですが様々な問題が生じることも多く、可能であればあまり手掛けたくはないというのが本音かも知れません。

ですが全国的な規模としては正確に把握できないほど私道は存在しており、同時にそれに接する土地も存在しているのですから「面倒なので手掛けません!」というのは難しいでしょう。

不動産のプロである私達は顧客に対し「扱えません」と言うわけにもいかず、少なからず関与が必要とされます。

そうであれば私道に接する土地のメリットやデメリット、そして将来的に価値を増すことができるような対策や提案方法を学ぶことにより、自身の営業スキルも格段に上昇するのではないでしょうか。

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