新居を借りる、もしくは購入を検討する場合「子供が生まれた」ことがキッカケであることは多いかと思います。
ですが、幸せなはずの自宅で幼児重大事故の半数以上が発生していることはご存じですか?
毎年のようにマンション高層階ベランダ等からの転落事故や居宅内での事故が発生していることから、関連省庁は「注意喚起」や事故発生状況等の情報を公開しています。
そのような活動により認知度も多少、上がったのでしょう。
事故の発生件数は徐々に減少してはいます。
ですが充分であるとは言えません。
毎年のように、けして少ないとは言えない件数の事故が発生しているからです。
私達、不動産業者は賃貸の斡旋や新築・中古の販売を通じ、コーディネートやリフォーム等の相談を受けることも多いのですが、その際に少し助言するだけで、悲惨な事故の発生が少しでも軽減することができるでしょう。
自分が担当した顧客に幸せに暮らして欲しいというのは私達に共通の願いです。
事故防止のため安全配慮に関しアドバイスを行うことにより、重大事故を未然に防止するキッカケとなるばかりか、そのような有益な情報の提示は信頼関係の構築に繋がるでしょう。
今回は重大事故の発生件数等のデータを紹介するとともに、居室内での事故防止に役立つ工夫について解説したいと思います。
事故の発生原因は
インターネットで「子供・事故・調査」などと検索すれば、上位に消費者庁・厚生労働省・国民生活センター・警察庁などの集計データや注意喚起が確認できるでしょう。
その中で、今回は令和4年3月23日に消費者庁消費者安全課によりまとめられた「子供の不慮の事故の発生傾向」の公開データを中心に解説します。
ちなみにこの資料には、厚生労働省「人口動態調査」によりまとめられたデータが広く採用しています。
まず0歳~14歳までの死因順位から紹介します。
死因順位を年齢別に4段階で分けたのが上記の表ですが、このうち「不慮の事故」の発生現場は全て自宅です。
先天性の健康障害等、各種疾患を原因として不運にも亡くなった件数は0~14歳まで全ての年齢において上位に入っていますが、不慮の事故については防止できる可能性があったのですから悔やまれます。
不慮の事故等死傷者数は上記のグラフ通りですが、平成22年の356件を頂点に年々減少を続け令和2年は160件まで減少しています。
次に調査期間内における年齢別詳細(原因)を順位付けしたのが下記の表です。
0~3歳まではベッド内や胃内容物の誤えん等による「窒息」を原因としていることが分かります。
また3歳以上になると身体も成長し活発になりますから、建物や建造物からの「転落」が目立つようになり、またプールや自然水等による「溺水」も目立つようになります。
子供の年齢が上がるにつれ自宅内の事故発生件数は減少していくものの、溺水については家庭内の浴槽で発生していることが確認できます。
0歳時に多い窒息の事故は自宅ベッドのマットに頭が挟まるなどベッド内での事故が多く、次いでミルク等胃内容物・食物による窒息、玩具などの物体を「誤えん」ことが原因として高くなっています。
溺水については自宅入浴中の事故や、海・川・プールなどにおいて、親が目を離したことにより事故が発生しています。
転落事故の多くはマンション・戸建て等のベランダにおいて、椅子などを足場として転落するケースが数多く確認されています。
このような事故の発生原因を理解したうえで、それを防止するために必要な措置について考えてみましょう。
幼児期の事故を防止するためには何が必要か
一般的に幼児期とは、離乳が終了する1歳前後から就学前の5~6歳頃の時期を指し、それ以前を乳児期と呼びます。
年齢別の事故発生場所を見ると乳児期・幼児期を含めた4歳以下の80%以上は家庭内であることが確認できます。
乳幼児におけるベッド内での窒息に関しては、隙間に頭が挟まらないよう余計な隙間が生まれないよう工夫するほか、寝ていても変化がないかを常に気にしながら見守るしかありません。
最近ではアレクサ対応の監視カメラ等が安価に販売されていますから、ベビーベッドの内部が映り込むよう位置を調整し、家事の合間でも確認できるようにするのは効果的です。
またベビーベッド等と壁に隙間が生じないよう配慮するとともに、敷布団やマットレスは固めのもの、掛け布団は軽いものを使用するのが良いとされています。
ハイハイやつかまり立ちが始まれば誤飲防止のため口に入れる恐れのある物は床面から1m以上の高さに置くことを徹底し、階段等においては転落防止の柵を設置する、またベランダには踏み台になるような物は一切おかないなどの配慮が必要です。
またブラインドやカーテンの紐などによる窒息も数多く確認されていますので、子供の手の届かない位置に紐をまとめるほか、足場になるような物は配置しないことを心がける必要があります。
大人と一緒に入浴しているはずなのに数多く発生している入浴中の事故ですが、洗髪時などに子供を浴槽内に入れていることが原因となっています。
大人が浴槽から出た時には子供も出す習慣をつけ、浮き輪などを利用しているからといって過信しないことが大切でしょう。
またある程度、大きくなったからと浴槽を単独で利用させることは控えるべきでしょう。
いずれにしても乳児期・幼児期ともに家庭内で事故が起きていることは明確であり、事故の原因も絞られているのですから、気をつけなければならない部分もある程度、予測できるはずです。
浴槽には残し湯をしないことを心がけるとともに、ベランダや浴室などに出入りできないよう補助錠やストッパー鍵をつける工夫が効果的です。
サッシ枠等に穴を開けず設置できる物が安価で販売されていますので、目的にあった商品を選択し設置すれば良いでしょう。
以上のように、子供の家庭内事故の傾向や防止方法を理解することにより、乳幼児や幼児期の子供がいる家庭に賃貸住宅を斡旋する、もしくは分譲マンションや戸建てを紹介する際に提案できる内容について深みや奥行きが生まれ、それだけ顧客から信頼を得る機会が得られるでしょう。
筆者も時折、営業トレーニングの依頼を受けロールプレイングを実施しますが、なるほど設置されている設備や、間取りによる家具レイアウトなんかは流暢に説明できるのですが、内心で「そんなものは見れば分かる!」と思ってしまいます。
不動産のプロであれば顧客が気づかない、もしくは見落としている点について具体的な事例を交えながら分かりやすく説明できる必要があるでしょう。
コンサルティング営業は、どのような種類の営業にも必要とされるスキルではありますが、個人の住宅等を扱う不動産営業はそれに加えて「共感力」が重要であるとされています。
子供がいる営業マンの場合「ウチの子も幼稚園で……」と、内見時などにおいて自身のプライベートを開陳するだけで、とたんに共感力が得られ話もスムーズになった経験は皆さんもお持ちでしょう。
経験則も交えながら、安全に暮らすためのポイント等について話をできることは結果的に信頼関係の構築に繋がり、実績にも反映されていくのではないでしょうか。
まとめ
今回は、一定期までにおける子供の事故は、その大半が家庭内で起きていることについて解説するとともに、その防止法等について解説しました。
冒頭で書いたように、住宅を賃貸もしくは購入する理由は子供が生まれた(生まれる)ことにより家族が増え、必要に応じ探している方も多いでしょう。
つまりは「家族のため」です。
その家族の憩いの場となるべき自宅が、実は事故発生現場になってしまえば何ともやりきれない気持ちになります。
今回、コラムの中で利用したイラスト等は消費者庁で公開している「子供を事故から守る!事故防止ハンドブック」から転用している物も多いのですが、このハンドブックは下記URLから確認することができます。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_002/
ハンドブックは英語版や中国語版でもダウンロードすることができますので、必要に応じて印刷し、顧客に提供すれば喜ばれることでしょう。