【不動産業者なら覚えておきたい】市街化調整区域の基本

売却相談があるのは嬉しいのですが、当該地が市街化調整区域だととたんにテンションが下がりませんか?

一般的に市街化調整区域は土地の坪単価が安く、そこから「余計な手間が必要なのに実入りが少ない」といった意識が働くのではないでしょうか。

確かに数年後に市街化に編入されることが確定しているなどの特殊な例を除き、市街化調整区域の土地価格は「安い」

坪単価の低さを規模(総体面積)で補えない場合、契約しても媒介報酬に期待することができません。

そのためでしょうか、市街化調整区域の媒介依頼を受けてもレインズに登録して自社のホームページに掲載する程度がせいぜいで、新聞の折込広告等に掲載するなど、積極的に販売活動を行うことは少ないでしょう。

そのように本腰をいれにくいといった背景もあり、市街化調整区域について基本的なことは知っていても実際の取引に必要とされる市街化調整区域における開発許可や用途変更等の申請方法や、市街化調整区域ならではの活用方法等についてスペシャリストと言える不動産業者は全国的にみても少数だと言えるでしょう。

ですが考えて見てください。

仲介業者の数が毎年のように増加している昨今、都心部にある販売の楽な物件ばかり扱いたくてもそう簡単にはいきません。

証券業界に「人の行く裏に道あり花の山」なんて格言もありますが、これは株式の世界において利益を得るためには、人と同じ行動をせず、あえて厳しい道をゆくことを推奨する意味で、苦難を乗り越えればそこに輝かしい世界が広がっていることを示唆しています。

この格言は私達、不動産業者にも当てはまるのではないでしょうか?

同業他社が積極的に手を出さない物件だからこそ、業績を伸ばすヒントが隠れているかも知れません。

それ依然、市街化調整区域を毛嫌いして必要な知識や各種許可申請方法等を学ばないことは不動産のプロとして「恥ずべきこと」だと言えるでしょう。

そこで今回以降テーマを分け、数回に渡り市街化調整区域の基本から許可申請方法等の実務面までを詳細に解説してきたいと思います。

今回はその第一回目として市街化調整区域の基本について学びましょう。

市街化調整区域とは

解説するまでもないと思いますが市街化調整区域とは「市街化を抑制する区域」のことです。

正確に表現すれば「都市計画区域内について、無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るために必要があるときに定める区域区分のうち、市街化を抑制すべき区域として定められた区域」となります。

都市計画の目的は無秩序な市街化を防止することですが、そのために計画的な市街地を形成するルールとして1968(昭和43)年に新都市計画法が成立しました。現在では1992(平成4)年に新都市計画法が改正され、各市区町村が規定した都市計画区域マスタープランにより、人口や産業の拡大等を踏まえた計画が策定され、実情に併せ定期的に見直されながら実施されています。

都市計画マスタープランは、正式には「都市(もしくは市町村)計画の整備、開発及び保全の方針」といいます。

人や物の動きに基づく土地利用の傾向、それによる公共設備の整備等まで含め将来的に市区町村をどのように発展させていきたいかを定めた指針として、下記の内容が定められています。

1. 都市計画の目標
2. 区域区分(市街化区域と市街化調整区域の区分)の決定、及び当該区分を決める時の方針
3. 土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する主要な都市計画の決定方針

各市区町村における都市計画マスタープランはホームページ等で一般公開されていますから、事業エリアの計画については一度、確認しておくと良いでしょう。

都市計画マスタープランにより市街化区域や市街化調整区域は定められているのですが、不動産初心者が市街化調整区域と混同しやすいのが非線引き区域(無指定とも呼ぶ)です。

市街化調整区域はあくまでも都市計画区域内で定められる区域区分の一つですが、非線引き区域は都市計画区域内外であるかを問わず区域区分が指定されていない区域です。

ですからまずは都市計画区域と区域外の2種類に大別され、都市計画区域内については市街化区域と市街化調整区域そして区域区分のされていない区域の3種類に分けられるのです。

重要事項説明において市街化調整区域内であることを説明する場合「都市計画区域内の市街化調整区域に指定されています」という言い回しをするのはそのためです。

都市計画法に基づく制限

非線引き区域(区域区分のされていない区域)や都市計画区域外は、用途指定がされている場合とない場合が混在しています。

政令指定都市等、一定規模の市区町村であれば明確に線引きされていますが山間部の小規模村落等は自然と住環境が混在しており明確な線引きが困難であることや、現在は都市計画区域内に指定する要件を満たしてはいないものの、将来的に市街化への編入が見込まれる場合(都道府県が指定する準都市計画エリア)においては、非線引き区域であっても用途が指定されていることが多いでしょう。

非線引き区域等において建築する場合、建築確認申請は原則として不要ですが、床面積合計が10㎡以上の場合に工事届けは必要です。

その場合、地方自治体の条例により建築物の制限が設けられていることもありますから、建築を計画する場合には自治体への確認は必須です。

市街化調整区域にも同様のことは言えますが、都市計画区域外の多くは市街化を抑制したい区域ですから水道やガスなどの生活インフラ整備が積極的に行われることはありません。

建築をする際には給水管などのライフライン整備に過大な費用が必要となる場合もありますので事前に調査が必要です。

市街化調整区域の制限

原則として市街化調整区域では、都市計画法(第34条)により認められているものを除き建築できません。

また既に建物が存在する場合において、宿泊所や事務所・倉庫等への用途変更についても規制されています。

それではと既築住宅を購入し、建て替えや増改築・リノベーション等を計画しても原則として許可が必要ですから、建築をする場合と同様に一定の条件を満たしていなければ認められない場合があります(申請が不要な範囲内のリフォーム工事を実施して、居住することについては問題ありません)

また地目が宅地ではなく農地の場合、農業委員会又は知事の許可を受けなければ登記を行うこともできません。

そのような土地等は担保評価が著しく低くなるため、一般的な住宅ローンの利用は困難であることも覚えておきましょう。

市街化調整区域の活用方法

前項までに解説したように、市街化調整区域は建築や開発等において著しく制限されてしまいます。

また地目が農地等である場合には売買自体に許可が必要となりますから、冒頭で述べたように「金額が低いのに手間ばかりが必要」であるといった印象が間違いではないことを裏付けています。

それでは地目変更登記等は別として、市街化調整区域を購入した場合の活用方法にはどのような物が考えられるのでしょうか?

一般的には下記のような使用目的であれば、それほど手間をかけず利用できると言えるでしょう。

●資材置き場
●駐車場
●太陽光発電用地
●プライベートキャンプ場
●ドッグラン・オフロードコース等

このような利用をする際にも、建築基準法で定められた「土地に定着する工作物のうち屋根及び柱もしくは壁を有するもの」は建築物とみなされ建築できませんが、それでは屋根と柱だけの「東屋」であれば大丈夫かと言えば、これも認められません。

東屋

住や基礎の有無、建築規模の大小に拘わらずユニットハウス・プレハブ・コンテナ等も制限されますので注意しましょう。

ただしフレームに載せられたままの状態であるトレーラーハウスは、建築物ではなく車両とされますので利用することが可能です。

トレーラーハウス

それ以外だと奥行きが1m以内もしくは高さ1.4m以下のものは建築物に該当しません。

各種許可申請等の手間を省きたい場合には、上記のような利用を目的として購入を検討される方を探すのが近道かも知れません。

まとめ

今回は市街化調整区域の基本だけを分かりやすく解説しました。

市街化調整区域内で原則建築が出来ないことはコラム内で再三、お伝えしましたが農業・林業等の用に供する建築物や、それらの業を営む者の住宅、もしくは周辺居住者等の日常生活に必要な物品販売や修理業等の建築物については、施設ごと敷地面積や建築規模の制限はあるものの許可を得れば建築することができます。

そのような例外規定や、それらに伴う開発申請等の方法については次回以降のコラムで解説していきますが、まずは大まかに市街化調整区域の基本について理解を深めるようにしましょう。

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