【14条地図や公図の取得が不要になる?】登記所備付地図電子データの無償公開と実際の使い勝手

2023年1月23日(月)の正午から全国の登記所備付地図の電子データが、G空間情報センターを通じ無償で一般公開され話題を集めています。

データ利活用についての注意事項以外とくに利用条件はありませんが、公開当初は不要であったユーザー登録が必須となったぐらいでしょうか。

様々なマスコミを通じ話題になったせいもあるのでしょうが、公開当初はアクセスが集中しサーバーのパンク状態が続いていました。

これまで地図証明書・図面証明書として法務局で直接取得するか、登記情報サービスで取得するしかなかった登記所備付地図データが無償で一般公開されたのですからアクセスが集中するのも当然だと言えるでしょう。

不動産を調査する場合、法14条地図や公図などを取得して当該調査物件の位置関係などを確認するのは調査の基本ですが、そのために公図や地図を取得すれば都度、費用を支払なければなりませんでした。

経費を考えれば不必要な取得はできる限り避けようという意識が働くものですが、無償となればその必要もありません。

アクセス件数についてはいずれ沈静化していくでしょうし、サーバー側も対応していくでしょうからしばらくの間は様子を見守るしかないのでしょう。

今回は一般的にそれほど広まっているとは言えない「G空間情報センターとは何か?」についての解説から始め、具体的な地図データの利用方法や注意点、現状で本当に使えるのかといった点について解説したいと思います。

G空間情報センターってそもそも何?公開された背景は

G空間情報センターとは、様々な主体が様々な目的で整備している地理空間情報(これがG空間情報のことです)を有効に活用し、流通促進を図ることにより社会課題を解決するための後方支援とすることを目的に運営されているデータ流通支援プラットフォームです。

この目的のため地理空間情報のほかにも関連情報などもワンストップで検索入手できるサービスとなっていることから、これまでも研究開発やデータキュレーション、イノベーション創出に向けて活動する事業者などに利用されてきました。

運営母体は一般社団法人 社会基盤情報流通推進協議会です。

このG空間情報に、新しく登記所備付地図データが加えられたのです。

G空間情報センター,一般公開

登記所備付地図データがG空間情報に加えられた理由は様々ですが、ご存じのように登記識別情報だけでは具体的な所在や位置関係を把握することができません。

私たち不動産業者も調査のためにはその両方の情報を取得して精査する必要がありました。

必要経費だと割り切ってはいても、山間部や過疎地域のほか、都心部においても密集地域など国土調査が遅れている地域において地番や所在確認するためには近隣を含めた複数枚の公図などを取得し突合せなければならない場合も多く、法務局で1通450円、登記情報サービスを利用しても362円の経費も馬鹿にならないものでした。

そのような経費負担も含めた使い勝手の悪さから一般の利用率は低く、また学術分野において利用の妨げになっていたことは間違いないでしょう。

そのような問題を払拭するためG空間情報センターを介して無償で一般公開され、また取得したデータについても利用規約に抵触しない限りにおいては加工(データは加工可能な形式で提供されています)が可能になったのですから画期的な試みであると言えるでしょう。

具体的な利用方法について

ここではアクセスが集中しているためにまだ利用できていない方や、このコラムを読んで始めて登記所備付地図データが無償で一般公開されたことを知った方に向け、ダウンロードまでの基本的な手順について解説したいと思います。

まずG空間情報センターは下記URLから開くことができます。

HOME

G空間情報センター

公開初日はログイン不要でも利用できるとされていましたが、アクセスが集中してサイトにつながらない、ダウンロードできないなどの状態が続いたからでしょうか同日の19:20分には新規ユーザー登録しなければ利用できない方式に変更されました。

とはいえ難しくはありません。

G空間情報センターのトップページの右上にある新規ユーザー登録をクリックして必要事項を入力するだけの作業です。

G空間情報センター,新規登録

新規登録ではユーザー名や氏名ほのか、所属組織や組織種別などの入力が求められますが、これは個人名での登録でも構いませんし所属組織についても深く考える必要はありません。

無事、新規ユーザー登録が完了したらログインします。

ログイン以降、地図データを探す方法として最も簡単なのはトップページから登記所備付地図データ特設ページを開くことでしょう。

G空間情報センター,ダウンロード特設サイト

下記URLに表示したURLからも法務省登記所備付地図データ特設ページを開くことができます。

法務省登記所備付地図データ

G空間情報センター,法務省登記所備付地図データ

表示された都道府県別の登記所備付地図データから、クリックしてページを進めていけば簡単に目的とするデータまで辿り着くことができます。

G空間情報センター,法務省登記所備付地図データ,検索

また、登記所備付地図データ以外のデータも参考までに見てみたいという場合には、ログインしてデータセットを選択します。

G空間情報センター,データセット

そうすればG空間情報センターで有償・無償で公開されているデータの一覧が最終更新順でずらりと並んでいるのが確認できるでしょう。

G空間情報センター,法務省登記所備付地図データ

調査したいデータセットについては、データセット検索にキーワードを入力すれば即座に該当するデータを呼び出してくれます。

G空間情報センター,法務省登記所備付地図データ,検索

データセット検索を利用して登記所備付地図データだけを検索したい場合には、入力する検索キーワードを北海道や東京都などの大きな分類指定ではなく、札幌中央区登記や世田谷区登記などエリアを特定できる情報に続き「登記」と入力する必要があり、そうしなければ不要なデータセットまで検索されてしまいますので注意が必要です。

このようにして調査したい地域を指定してクリックしていけば、必要とする登記所備付地図データまで行き着くことが出来るでしょう。

G空間情報センター,札幌市中央区,法務省登記所備付地図データ

地図データはプレビューすることはできずダウンロードしてから開く必要があります。

Zipマークのある詳細をクリックして、ダウンロードを選択します。

すると利用規約が開かれ、右上に「利用規約を承諾する」のボタンがあるのでクリックするとダウンロードが開始されます。

G空間情報センター,法務省登記所備付地図データ,ダウンロード

ダウンロードされたデータは、ブラウザの規定のダウンロードフォルダに保存されます。

このダウンロードしたフォルダを開くと、圧縮された地図データを確認することができます。

G空間情報センター,法務省登記所備付地図データ,圧縮ファイル

これを解凍して利用します。

ダウンロードはできたけど地図が開けない‼

ダウンロードまでは順調にできたけれど、ダウンロードしたフルダを開いても「何やらよく分からない文字データが開くだけで地図がでてこない!」と悩まれる方が多いでしょう。

これは提供されている地図データの形式が地図XMLデータという、私たち不動産業者も含めた一般の方が普段利用していない形式で提供されているからです。

G空間情報センター,法務省登記所備付地図データ,基本データ型

法務省特設ページ内に設けられた利用案内でも「ダウンロードしてご利用ください」で終わっており、注意事項として「地図XMLデータを地図として開くにはソフトウェアが必要です」と書かれているだけで、具体的にどのようなソフトウェアが必要なのかなどの説明については一切行われていません。

法務局の登記情報サービスで普段から利用しているように、14条地図や公図をダンロードした際にPdfデータとしてすぐに利用できると思っていた方は肩透かしを食らった気分になるでしょう。

地図XML形式のデータを、比較的利用しやすいGeoJSON形式に変換するコンバータが、デジタル庁よりオープンソフトウェアとしてGitHUb上に公開されていますが、これまた相応の知識がなければ使いこなせません。

これは登記所備付地図データを一般公開した主たる目的が、国土地理院地図などと同様、農業や運送などのプラットフォームとして利用規約の範囲内でデータを利活用することが理由です。

私たち不動産業者が「これで公図や14条地図の取得経費が浮く」と、喜んで登録しデータをダウンロードしても、そこから頭を抱えてしまいます。

XMLデータを日頃から活用している方は一部の研究者や測量士、ソフト開発などパソコンスキルに長けている方が中心でしょうから、それほど豊富な知識を持たない私たちはお手上げです。

筆者はフリーソフトの地図XMLビューアーを利用して悪戦苦闘しながらも何とか活用できていますが、この方法もかなり手間が必要な方法ですので解説は控えさせていただきます。

地図XMLビューアー

筆者も、私たちが通常利用する目的で簡易的に利用できる方法を模索しており、情報収集も含め様々な方と情報交換を行っている再中ですので、そのようなソフトや利用方法については分かり次第、コラムで紹介したいと考えています。

もっとも研究者など一部の方しか利用できない状況については法務省も充分に把握しているでしょうから、簡易的に地図が表示できるビューアーなどの公開を待つのが得策かもしれません。

一般公開の地図データは証明用には使えない‼

今回公開された登記所備付地図データは、あくまでも加工されるなどを前提として利活用されることが目的ですから、法務局で取得する法14条地図や公図などのように証明機能を有してはいません。

販売資料として利用する場合には問題はないのでしょうが、融資を申し込む際の添付資料としては金融機関も認めてくれません。

あくまでも登記所が交付する地図証明・図面証明として、法務局により地図などの内容を証明した書面が求められますので覚えておきましょう。

まとめ

今回は不動産業者に限らず、一般からも注目されている登記所備付地図データの無償公開開始に関して、具体的なダウンロードまでの方法と現状の使い勝手について解説いたしました。

今回の地図データ公開以前から、国土地理院においても利活用を目的として測量基準点や補正情報など様々な地図データが無料で提供されていますが、こちらも登記所備付地図データと同様に改変して利活用するには専門知識が多く必要とされ「ちょっと開いて利用する」ことは難しいものとなっています。

今後は高度な利活用目的ではなく、閲覧だけをしたいという方向けに提供方法も変更されていく可能性はあると思いますが、当面は地図XMLのデータを有効活用する方法も含め閲覧のしかたなどを学んでいくしかないのでしょう。

ですがこのように、高度なレベルの情報が無償で提供される時代です。

不動産業界はアナログ思考が根強く、他業種と比較してDX導入が遅れていると言われてきましたが、近年だけをみてもIT重説や不動産電子契約の解禁、Zoonなどを利用しての打ち合わせやオンライン内見などの増加については説明不要なほどです。

不動産業者がそれぞれ必要なレベルまでDXに取り組み、また社内人材においてもDX化に必要な知識や情報、ノウハウなどを学んでいく必要があります。

そのためには積極的に外部の不動産テック企業などと連携し、脱アナログを目指していくしかないのでしょう。

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