各種マスコミ報道などで度々話題になっているOpenAIのChatGPTですが、利用の有・無を別にすればその名称を知らない人はいないのではないでしょうか?
ご存じのようにChatGPTは、高度なAI技術によりまるで人間のように自然な会話を可能にしたAIチャットサービスです。
基本的に無料で利用することができ、しかも生成されるテキスト(文章)が見事であることから大きな話題を集めています。
ChatGPTはジェネレーティブAI(Generative AI)、つまり与えられたデータから新しいデータを生成する人口知能技術が用いられており、与えられた指示を解析してオリジナルテキストを生成できます。
ジェネレーティブAIはテキストだけではなく画像や音声、音楽なども生成することができますが、ChatGPTはテキストの生成に特化しています。
ChatGPTが注目を浴びているのはたんなる「お話」機能を持っているからではありません。
多種言語も含めた複雑な言い回しで与えられたテキスト(質問)にたいし、インターネット上に存在する膨大なオープンソースを利用して自然な会話を行うことができ、しかもその生成・応答の能力が高い。
これだけの機能を有しながらもChatGPT3.5ならば無料で利用できます。
使わない手はないと言えるのがChatGPTなのです。
執筆時点(2023年5月2日)ではChatGPT-4(ChatGPT Plusによる有料プラン)が最新版としてリリースされており、システム自体も成長を続けています。
ChatGPTはあくまでも知識や経験を補完するためのツールです。
実際の知識や経験に追いつくことはできません。
ですが論理的な分野におけるテキスト生成については、なまはんかな人間では太刀打ちできないほど模範的なテキストを生成してくれます。
今回はChatGPTを利用する方法から始め指示テキスト入力時の注意点、不動産業者としてどのような利用方法が考えられるのかを前編、後編に分けて解説。
そして最後にジェネレーティブAIの発展によりもたらされる未来まで含めお話させていただきます。
ChatGPTの始め方
今回の解説はChatGPTを利用している(もしくは利用したことがある)という前提で進めていきますが、コラムをお読みの方には一度も利用したことがないという方もおられるでしょう。
そこで簡単ではありますが利用方法について解説しておきます。
ChatGPTを利用するのに余計な手続きは必要ありません。
下記アドレスから公式サイトを開きアカウント登録をするだけで利用できます。
https://openai.com/blog/chatgpt
初めての利用時にはアカウント登録が必要ですが、上記の「Try CactGPT」をクリックしてログイン画面に移行します。
ログイン画面では、すでにアカウントを持っている場合には「Log in」をクリックしますが、初めての場合は「Sign up」をクリックします。
次に開かれるページで自身のメールアドレスもしくはGoogle・Microsoftアカウントを登録します。
上記が完了すれば、アドレス宛にOpenAIからのメールが届きますので、メール本文の「Verify email address」から登録画面に移行し「名前」、「電話番号」を登録するとその後、6桁の認証コードがショートメールで送られてきます。その認証コードを入力して登録完了です。
あとは下記図の下段に「Send a message」に指示テキスト(質問)を入力すれば応対テキストを自動生成してくれます。
例えば以下のような感じです。
メインページは英語表記になっていますが、指示テキストの入力は「日本語」で構いません。
生成される応答テキストも日本語になります(指示テキストの言語に応答し、同じ言語でテキストが生成されます)
注意点としてはGoogle Chromeなど一部のウェブブラウザにおいて自動翻訳機能をオンにしていると、文章生成が行われずエラーになることが確認されています。
その場合には自動翻訳機能をオフにして利用するようにしましょう。
質問時(指示テキスト入力)の注意点
前述した手順を経て登録が完了すれば、あとは質問などを入力して利用するだけです。
難しく考える必要はとくにないのですが、求めている回答を得るためには指示テキスト入力時にちょっとした「コツ」が必要です。
ただし難しく考える必要はありません。
指示テキスト入力時(質問)のニュアンスがより明確になるよう具体的な質問をするだけです。
例えば「不動産契約時の注意点」と入力してみましょう。
契約書の確認、物件状況の調査、重要事項の確認、支払い方法、解約や返金に関する規定など、無難ともいえる回答が並んでいます。
「専門家に相談する」という回答が目に付き、いったいこの場合の専門家とは誰をさしているのかなどに疑問は残りますが、模範解答だと言えるでしょう。
余談ですが、そのような場合には「専門家とはだれですか?」と重ねて質問してみましょう。
前後の文脈を読み取って、テキストを生成してくれます。
このように最初の問題提起(指示テキスト)からチャット形式で進めていくことにより、より知りたい情報に近づくわけです。
ですが最初の指示テキストに問題がある場合には、求められる回答とは違うニュアンスのテキストが生成され余計な手間が必要になってしまいます。
さきほどの「不動産契約時の注意点」という指示テキストでは、顧客が不動産売買をする場合の注意点なのか、私たち不動産業者が契約を行う場合の注意点なのか、かつ取引態様が賃貸なのか売買なのかが曖昧なため、生成されたテキストも対象不明の回答になっているのです。
そこで「私は新人の不動産営業です。不動産契約時の注意点を教えてください」という質問に変えると、生成されるテキストもガラリと変わります。
目線が不動産業者に変わるからです。
指示テキストを入力する際には、イメージとして「新人に教え諭す上席の感覚で、具体的に指示してあげる」ことを念頭におくと良いでしょう。
またChatGPTには文字数制限にニュアンスの近い「トークン制限」があります。
英語ですと4,000~6,000字生成できると言われていますが、日本語の場合には2,000字を多少超えるくらいがせいぜいで、テキストが途中で途切れてしまうことがよくあります。
このような場合には、知りたい内容を小分けにして質問を繰り返す必要があります。
その際には「履歴」から該当する単語を入力(もしくはコピー&ペースト)することで、AIが前回の文脈からの流れを理解して続くテキストを生成してくれます。
例をあげると、以下のような指示テキストを入力するのです。
「私は新人の不動産営業です。不動産売買契約時の損害賠償に関する規定以降の注意点を教えてください」
するとAIは、それ以前の文脈に続くテキストを生成してくれます。
これを繰り返していけば、どのような長い応答テキストであっても全体を確認することができます。
質問は曖昧にせず、得たい回答を意識して可能な限り具体的な質問をすることが「コツ」だと言えるでしょう。
不動産業者にはどのように利用されているか
前項までで「ChatGPTに始め方」、「指示テキスト入力時の注意点」について解説しましたので、次に不動産業者はどのように利用しているかについて解説します。
その前に、不動産業者がChatGPTをどれだけ使いこなせているかについて考えてみたいと思います。
このコラムを読まれている方は、少なからずChatGPTをすでに利用している、もしくはこれから利用しようと考えている方が大半だと思いますが、興味の無い方はまったくないというのが実情かも知れません。
最近は「不動産DX」という言葉もある程度は定着してきましたが、導入具合で見た場合、先進的な技術を積極的に採用しようという企業とそうではない企業に分類されます。
ChatGPTは自然言語処理技術ですから、不動産業者が回答を得たい指示テキストを入力すれば専門用語や法律用語を交えた回答テキストが生成されます。
その際に基本としての法知識や読解力がなければ生成されたテキストの「真偽」はもちろん、全体の意味が理解できないという状態になってしまいます。
結局のところ、本当に使いこなしているというレベルに達するためには、ある程度の専門知識が必要であると言えるのかもしれません。
これは「不動産DX」の採用企業も同様で、「導入したのに使いこなせる人材がいない」という嘆きの声がよく聞かれるのもそのような理由からでしょう。
余談はさておきChatGPTに「不動産業者はChatGPTをどのように利用していますか?」と質問してみました。
「問い合わせ対応」、「システム導入」、「マーケティング」、「分析・予測」に利用されていると回答されました。
顧客の質問やクレームにたいしChatGPTが自動応答してくれる、オンライン取引において情報の取得や契約書作成を自動でおこなってくれる、あげく不動産を探している人の条件に併せ物件情報を自動で提供してくれる、不動産市場の価格動向分析までできると回答されました。
確かにチャットボットを利用して、物件情報を24時間提供している会社もありますし、契約書の作成もある程度までであればChatGPTに作成させることも可能でしょう。
市場分析も同様です。
海外ではOpenAIと提携して実際にこれらのサービスを提供している会社も存在していますが、日本の不動産業者でOpenAIと提携し独自のサービスを展開している会社の話は、少なくても筆者は聞いたことがありません(OpenAIを活用したサービスを提供している会社は存在します)
日本においては営業マンなどの個人レベルで、顧客からの問い合わせに回答するための文章生成や、調査のためなどに利用しているケースのほうが圧倒的に多いでしょう。
組織として活用はできておらず、あくまでも個人レベルでの利用にとどまっていることから、本来の機能を充分に使いこなせていないというのが現状ではないでしょうか。
不動産業者はChatGPTをどう使いこなせば良いか
前項で不動産業者がChatGPTを「どのように利用しているか」について解説しましたが、結論としては個人レベルでの利用にとどまり、その場合でも本来の機能を引き出せていないことから「使いこなしている」とまでは言えないことがわかりました。
そこで少し視点を変え、「膨大なオープンソースを利用して論理的なテキストを生成できる」というChatGPTの特徴を生かし、不動産業者がどのように使いこなせば良いかについて考えてみましょう。
1. 顧客サポートに利用する
顧客からの問い合わせや質問にたいする返信文章を、ChatGPTに生成してもらいます。
顧客からの質問は多岐に渡ります。例えば「不動産取得税の支払時期」や、住宅ローン控除の手続方法」、「繰り上げ返済の方法」などです。
例として「不動産取得税の支払時期」についてChatGPTに質問してみましょう。
指示テキスト入力時に注意したいのは、オープンデータが多国籍言語を利用しているという点です。
具体的に国や地域を特定する、つまりこの場合には「日本の不動産取得税の支払時期はいつですか?」という指示テキストにする必要があります。
多少の手直しは必要ですが、ほぼこのまま利用することができます。
このようなテキストを一から入力するのは手間がかかりますから、大いに利用したいものです。
2. 情報提供に利用する
特定の市場や地域における物件などの情報をChatGPTに分析させることができます。
ただしオープンデータは2019年9月までの情報までしか対応できていませんので、価格傾向についての分析はできません。
あくまでも地域的な傾向についての分析にとどまります。
3. ブログや広告コピー、ソーシャルメディアなどへの投稿コンテンツを生成させる
私たちのように解説コラムなどを寄稿している人間はご法度ですが、ChatGPTに「不動産購入時に失敗しないための方法を教えてください」などの指示テキストを与えれば、みごとな文章を生成してくれます。
不明な部分などについては、その部分をコピーアンドペーストして再度テキスト生成を指示し、それらのテキストを組み合わせるだけで2,000字程度のブログであれば簡単にできあがります。
また特定の分譲マンション名などを入力し「キャッチコピーを教えてください」と指示すれば、センスがあるかどうかは別として、それなりのコピーを生成してくれます。
文章作成で悩んだ際には大いに利用すべきでしょう。
生成文章は鵜呑みにせず、真偽の確認が大切
自然言語処理技術により生成されたテキストは、そのままでも充分に精度が高いものです。
「補完的」に利用するという前提を理解したうえで使いこなせばこれほど便利なものはありません。
論理的な分析が得意な秘書やアドバイザーが常に側にいるようなものだからです。
ただし前述したように、あくまで「補完」であるという点については注意が必要です。
質問(指示テキスト)の表現に問題がある場合も多いのですが、生成されたテキストを精査すると一見、理路整然とはしていても、よくよくみれば表現や言い回し提供された法条文などに違和感を覚えることがあります。
理由はオープンデータを利用して文章を生成しているので、必ずしも正解であるとは限らないこと。
もうひとつが、最新データに必ずしも対応できていないからです。
とくにおおもとのデータセットに偏りがある、つまり一部の特定事例が過剰に含まれているケースや一部の事例が欠落している場合には誤った情報が含まれる場合が多いのです。
それを理解せず、顧客からのクレームや質問にたいし生成されたテキストを精査もせずにコピーして送付すれば大きな問題に発展する可能性があります。
自分で利用するだけならよいのですが、第三者にChatGPTが生成した文章を提供する場合には必ず精査してからにしましょう。
とはいえ人間でも知識が不足している場合、自動生成される回答よりも精度が低いこともあるでしょうから、なんとも微妙ではありますが……。
先程の回答結果をご覧になればお分かりになるとおり、ちょっとしたプロフェッショナルと同程、場合によってはそれ以上ともいえる模範解答をしてくれます。
例えば「私は不動産業者ですが、立ち退き交渉を円滑に勧める方法を教えてください」と入力してみましょう。
コミュニケーションを大切にする、相手の要望にこたえるなどもっともらしい回答が生成されています。
ですがよくよく考えてみてください。
そもそも不動産業者が直接立ち退き交渉をおこなうことは非弁行為として法律違反に該当する可能性があります(ただちに違法というわけではありません)
もともと立ち退き交渉は弁護士の専従業務です。
不動産業者にできるのは、オーナーなどの要望を伝える、いわばメッセンジャーの役割までです。
生成されたテキストのように引越し先の提案や立ち退き料の交渉など費用負担の相談まで行えば非弁行為とされる可能性が高いでしょう。
このような回答が生成されるのも、ChatGPTがオープンデータを利用しているからです。
ですが最新の論調に対応できないという欠点はあるものの、論理的に分析できるジャンル、たとえば法律・交渉などに関しては現在のバージョンでも充分に利用できますから、生成テキストを精査するというルールさえ遵守すれば、これほど使い勝手の良いものはありません。
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