【不動産のプロなら覚えておきたい】改正消費者法のポイントについて

消費者契約法は消費者と事業者が契約をするとき、両者の間に存在する情報量や質、交渉力の格差が存在することに鑑み、消費者の利益を守るためとして平成13年4月1日から施行された法律です。

これまで平成28年、30年、令和4年と、取り消しうる不当な勧誘行為の追加や「無効」とされる不当な契約条項の追加など改正が行われてきましたが、昨年(2022年)5月に成立した改正消費者契約法が2023年6月1日から施行されました。

不動産の契約は宅地建物取引業方だけを遵守していれば問題ないと思われている方も多いのですが、すべての契約行為は今回解説する消費者契約法を始め、相互に関係性を有しています。

例えば不動産広告における表示の偽装や誇大表現についてや不当な違約金の定め、解約手数料などを定めた場合には消費者契約法に基づき判断されることになります。

宅地建物取引業法においても契約条件についての具体的な明示義務を定めていますが、消費者契約法においては不当な契約条項については無効と定められており、併せて契約解除・不当な取引の禁止・欠陥物件の責任と修復・不当な金銭請求の防止などについて消費者保護の観点から規定しているのが消費者契約法なのです。

このような理由もあり、私たち不動産業者は消費者契約法について改正があれば当然にその内容について熟知している必要があるのです。

2020年消費者庁調査データ,PIO-NET,相談件数

上記の図「2020年消費者庁調査データ」による、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)登録された相談件数においても、土地・建物・設備・工事・建築・加工のサービス別件数が相応数あるのを確認いただけるでしょう。

このような問題があることを踏まえ、不動産業者は改正消費者契約法のポイントを押さえておくことは必至です。

また当事者からだけでは特定適格消費者団体から是正依頼が行われる可能性もあることから併せて覚えておきたいのが消費者裁判手続特例法です。

今回は確実に覚えて起きたいこれら改正ポイントについて解説いたします。

改正理由は成人年齢の引き下げも背景にある

改正された背景には、成人年齢の引き下げも少なからず影響しているようです。

引き下げは2022年4月1日から実施されていまから、法的には18歳に達すれば親権に服さず自由に契約が行えるのです。

ですが、18歳という年齢は高校を卒業したばかり(あるいは在学中)です。

ネット利用などにより様々な情報に通じてはいますが、圧倒的に実生活における経験に乏しいことは否めません。

また最近の傾向ではありますが、非対面による契約行為が増加していることにより、特に若い年齢の方が安易に契約をしてトラブルに発展しているケースが増加しています。

2021,上位商品,役務等別相談件数

消費者庁によれば最近の消費者生活相談トラブルは「通信サービス」に関するものが増加していると報告されています。

通信サービスが直接的に不動産と関連を持つケースは少なく、通信サービスを介した斡旋、つまりインターネットを利用した契約行為における相談は顧客年齢が若いほど増加しています。

とくに賃貸アパートの契約については20~29歳から寄せられた相談件数が上位にランキングされているのが確認できます。

若者の商品・サービス別上位相談件数,2020年

そのような背景もあり消費者保護の必要性が高まったのが改正原因の一つであると言えるでしょう。

消費者契約法の改正ポイント

冒頭で解説したように、消費者と事業者の知識格差などによる不利益な契約を防止し、それにいより消費者を保護することが消費者契約法の目的です。

今回の改正では、まず契約取消権(第4条3項)が追加されました。

とはいえどのような契約でも取り消しを認めている訳ではありません。

具体的には1.勧誘することを告げずに退去困難な場所へ同行して勧誘行為を行った場合、2.威迫する言動を交え相談の連絡などを妨害した場合、3.契約前に目的物の現状を変更し、その回復を困難にした場合に限定されています。

このうち1の「勧誘することを告げず……」は、代表的なものとしてはキャッチセールスですから、不動産業者との接点は低いでしょう。

また3.の「契約前に目的物の……」も同様です。該当するのは主に2.の威迫する言動を交え相談の連絡を防止する行為です。この場合の「威迫」とは脅迫にならない程度ではあるが、不安を生じさせる言動(行為)と理解して差し支えありません。

例えば事務所などでの商談中、購入にあたって両親や知人に相談したいと要望する顧客にたいし「何を言っているんですか。自分の財産である不動産を購入するのに、両親や知人への相談など必要ないでしょう。そんなことをしている間に物件が売れてしないますよ」なんてトークをすれば該当する可能性が高いでしょう。

また飛び込み営業などにより顧客の自宅に上がり込み、長時間に渡って居座り物件の売却を迫り、かつ外部との連絡をさせないなんて手法で営業していた買取業者の存在については摘発事例として確認されています。

また賃貸・売買によらず不動産の契約において損害賠償の予定などを定める場合には、契約不適合責任も含め通知期間や代金減額請求権の有無などを明確にしなければなりません。

不動産においては宅地建物取引業法で損害賠償額の予定と違約金の2つを定めることができるとされており、損害賠償の予定については民法第420条第1項で、また違約金については同条第3項を援用し別個に定めることができると解されています。

これは契約の自由原則を援用しているためですが、合算した金額によっても物件代金の10分の2を超える定めをしてはならないとされています。

改正消費者契約法においては第9条2項において、消費者に対し算定根拠の概要説明の努力義務が新設されましたから、物件代金の10分の2を超えない金額を損害賠償額の予定や違約金として定めた場合においても、その算定根拠について努力義務とされてはいますが、その根拠について説明することとされています。

その他にも1.契約解除時において権利行使に必要な情報提供(消費者契約法第3条1項4号など)のほか、勧誘時において消費者の知識・経験・年齢・心身状態などを総合的に勘案した情報提供(同法第3条1項2号)などが努力義務として新設されています。

これらは現行で努力義務ではありますが、義務化を視野に入れ新設されていると考えておいたほうが無難でしょう。さらなる改正で慌てる前に、あらかじめ備えておくのが得策です。

消費者裁判手続特例法とは

消費者契約法関連で併せて覚えておきたいのが「消費者裁判手続特例法」です。

これは内閣総理大臣が認定した「適格消費者団体」が、消費者に代わって事業者に対し訴訟を行うことができる「消費者団体訴訟制度」の一つです。

2023年4月末日現在で認定された団体は全国で23団体とされ、そのうちから新たな認定要件を満たす団体は「特定適格消費者団体」に認定されこちらは全国で4団体とされています。

消費者被害にあった場合、民事訴訟の原則としては被害者が加害者を単独で訴えることとされていますが、情報量の質・量・交渉力の格差のほか訴訟による時間的な拘束・費用・労力が勝訴した場合の補填額では割に合わないことなどを踏まえ、適格消費者団体に特別な権限を付与することにより個人訴訟による不利益を防止しようという考え方によるものです。

消費者団体訴訟制度

消費者団体訴訟制度で扱うのは「差止請求」と「被害回復」の2つとされており、差止め請求においては不実告知・断定的判断の提供・不利益事実の不告知などによる勧誘行為の是正の申し入れを行い、協議が不調に終わった場合には差止請求訴訟を提起できるとしています。

消費者団体訴訟制度,不当な勧誘

消費者団体訴訟制度,不当な勧誘

不動産に関連する不当な勧誘行為は、上記図に記載されているようなものでしょう。

このうち不実告知や断定的判断の提供は当然として、「判断力低下の不当な利用」については国民生活センターなどにも複数の相談が高齢者から寄せられています。

これら省エネを口実とした悪徳リフォーム業者や買取を執拗にせまる買取業者にたいし消費者庁は注意喚起を行っています。

省エネリフォーム,悪徳リフォーム業者,注意喚起

相談は高齢社宅に訪問し長時間粘り契約(売却を含む)を迫るケースがもっとも多く、その際には数度にわたり退去を依頼しても帰らない(不退去法罪)、時に声を荒らげ虚偽の情報を断定的に説明(消費者契約法違反)するほか、第三者への相談電話を妨害しています。

これら一連の行為は消費者契約法に留まらず刑法にも該当する行為です。

このような行為により仮に契約を締結できたとしても、その後において適格消費者団体から是正についての協議が申し立てられ、場合によっては差止請求訴訟が提訴される可能性もあるのです。

まとめ

今回、解説した消費者契約法に限らず、それ以外の法律についても不動産業者は関連する法律として遵守する義務を負います。

宅地建物取引業法を遵守していれば、他の法律に違反することは少ないでしょうが、だからと言って万全ではありません。

民法や建築基準法・都市計画法など宅地建物取引士試験によく出題される法律は当然として、登記法や個人情報保護法、また違反をしないために刑法についての基礎を学ぶ必要があるなど学んでおくべきことは無数に存在します。

顧客が希望する不動産営業マンに求める資質などに関してのアンケート調査などにおいて、人当たりの良さやスピードと同時に「知識や経験が豊富なこと」が挙げられています。

知識格差による弊害を防止するのも不動産業者の責務です。

改正消費者契約法について理解を深め、問題のない取引を心がけるようにしたいものです。

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