【不動産のプロでも意外に知らない】適正地代の算出方法とは?

筆者は不動産実務とコンサルティング、不動産関連記事の寄稿などを主な業務としていますが、コンサルの約2割は同業者からのものです。

同業者からの相談は、物件調査の手が足りないので手助けして貰えないかといった至極分かりやすい物もあれば、知見がないのでどのように対応したら良いかなど様々です。

コンサルティングを依頼された際には時間単位で計算したフィーを請求します。

同業者からの相談であってもこれは同様です。

今日び知識についてはインターネットで調査できますし、優秀なサポート役ともなりうるChatGPTを始めとしる生成AIも活況ですから、不動産のプロである同業の方がわざわざ有償で筆者に相談するメリットはないと思ってしまいます。

ですが、なかなかそうではないようです。

オープンデータには誤った情報もかなり含まれていますから、それらを利用するには基礎的な知識が不可欠です。

そのような情報を収集し、正誤判定しながら顧客に提案するには手間でしょうし、手掛けたことがない分野にたいする不安もあるのでしょう、ですから引き合いがあるようです。

例えば『地代』の適正額について、なんてのもよくある相談の一つです。

これは管理会社や賃貸を専門にしている業者からの相談ですが、おそらくは賃貸オーナーから「所有する土地を借したいのだけれど、相場は幾ら?」などと相談されたのでしょう。

ご存じかと思いますが、『地代』と簡単に口にしても、その算出方法も一つではありません。何より適当な金額で契約すれば、すぐに増減請求について揉めかねません。

なんせ借地契約について旧法では非堅固建築物で20年・堅固で30年以上とされており、更新についても同期間、当事者が合意すればそれ以上の期間を定めることもできます。

新法では一律30年以上(更新は一回目20年、それ以降は10年)、事業用については10年以上50年未満とされるなど、いずれにしても長期にわたる契約だからです。

最終的には当時者合意によって締結されますが、そもそも地権者と借地権者双方が適正な価格を理解できていないケースが多いでしょうから、その説明や地代の『額』についての助言が私たちに求められるのも道理です。

地代の適正価格について理解を深めておくことは、借地契約を手掛けるうえで重要です。

どうしたら良いのか分からずに当事者は相談を持ちかけてくるのですから、その際に根拠も提示せず「〇〇円ぐらいだと思います」なんて回答すれば即座に信用を失うでしょう。

不動産のプロを自認する以上は論理的な計算方法に基づき、目安となる金額を提示できるよう備えておきたいものです。

そこで今回は、地代の算出方法について解説したいと思います。

覚えておきたい地代計算の基本

冒頭で述べたように『地代』の算出方法は一つ限りではありません。

一般的に利用されている方法だけでも、下記に紹介する4種類があります。

ただし下記で紹介する算出方法のどれか一つを採用し、直ちに適正な地代が算出できるといった便利なものではありません。

少なくても全ての計算を行ってバランスを勘案し、同時に市場性や近隣事例と比較検討して適正な『地代』として提案する金額を算出する必要があるからです。

ですあからこれから解説する基本的な計算は、全て理解しておくことが肝要です。

それを踏まえたうえで解説を続けます。

1.土地価格による地代計算

更地価格(流通価格)に全国的な地代の平均料率を乗じて算出するもっとも簡易的な方法です。

取引事例比較法などにより算出した更地価格に、下記料率を乗じ地代を算出します。

  • 住宅用地  更地価格✕2~4%=地代/年額
  • 商業地   更地価格✕4~6%=地代/年額
  • 工業等   更地価格✕2~5%=地代/年額

料率は地域特性などを考慮していない一般的なものですから、エリアによって調整は必要です。

2.固定資産税による地代計算

固定資産税と都市計画税、つまり固定資産税評価額に1.7%を乗じた額に、倍率を乗じて算出する方法で計算式は以下のようになります。

この場合、住宅地などにおいて適用される各種特例が反映された固定資産税額を基に計算すると齟齬が生じますので、あくまでも通常の固定資産税額で計算します。

固定資産評価額✕1.7%✕倍率=地代/年額

倍率の目安は以下のようになります。

  • 住宅用地 3.5~4.3倍
  • 商業地  3.8~7.5倍
  • 工業等  2.5~4倍

倍率については各種検証機関などから公開されている地代平均値を基にして紹介していますが、諸条件により変動します。

3.路線価による地代計算

路線価を基に計算する場合は、路線価に土地面積を乗じ、そこに係数1.25を乗じて市場流通価格を算出します。

この場合に係数として1.25を乗じる理由は、路線価が流通価格のおよそ7~8割程度に設定されているからです。

余談になりますが人によって係数は1.2が妥当、もしくは1.3だと議論されますが、筆者は現在のところ1.25が適切だと考え採用しています。

また路線価から実勢価格を求める計算式としては、「路線価÷0.8✕1.1✕面積」なんてものもありますが、前述した計算方法も含めあくまで実勢価格の目安を算出する方法に過ぎません。

それほど神経質になる必要はないでしょう。

計算結果に『土地価格による地代計算』で解説した料率を乗じた金額が地代になります。

計算式は以下のようになります。

路線価✕面積✕1.25✕2~6%(地域性等考慮)=地代/年額

4.想定利回りからの地代計算

想定利回りを基にした計算式は以下のようになります。

更地価格×期待利回+必要諸経費=地代/年額

この場合に設定する期待利回りについても諸説ありますが、およそ2~3%が目安とるでしょう。

また必要諸経費としては固定資産税のほか、特別に支出を必要とする維持経費などがあればそれを計上します。

権利金は必要?

家,模型,コイン

「借地契約において権利金は絶対に必要ですか?」とよく質問されますが、結論から言えば絶対に必要というわけではありません。

権利金の授受は儀礼として残る慣習、言い換えれば礼金に過ぎないからです。

同様に保証金についての相談も受けますが、こちらも儀礼的な側面はあるものの、権利金のように返還されないものではありません。

契約が解除されれば返還される性質のものですし、契約期間中において地代の不払いなどが生じた場合、それにより補填する意味合いを持ちます。

そのようなリスクヘッジのため、権利金は良いとして保証金を高額にしたいと言われる地権者もいるのですが、これはお勧めしません。確かに万が一の備えは大切ですが、あくまでも預り金です。

契約期間が長期にわたる借地契約の場合、相続が発生し預り金の存在が有耶無耶になってしまうことが多々あります。

だからと言って契約が解除された時にその返還を免れる訳ではありませんから、高額な保証金を要求するのは謹しむ方が無難でしょう。

結局は合意できるかどうか

今回紹介した地代の算出方法以外にも、土地価格✕(1-借地権割合)✕6%なんて計算方法もあります。

各種計算に用いる倍率や料率についても様々な意見があります。

筆者が適正地代について意見する場合、解説した基本的な4種類の方法を用いてそれぞれ金額を算出し、その全体から勘案し「平均値の〇〇円、これが適正金額です。ただし最低値〇〇円~最高値〇〇円までの間であれば許容できる範囲内といえるでしょう」と回答するのです。

これとておそらくはこれくらいの範囲が妥当と意見を述べているに過ぎません。

近隣に借地の事例が豊富にあれば話は別ですが、そのような状況は一時ブームとなった定期借地権付き分譲団地など以外では見受けられません。

近隣事例がない状態で提案することがほとんどなのですから、一般的な計算方法に基づき算出された金額を提案するほかないのです。

その金額に基づき最終的な地代を決定するのは、あくまで当事者です。

私たちにできるのは、方外な金額にならないようあくまで「目安」を提供することです。

まとめ

今回は適正な地代について相談された場合に、その根拠も含め具体的に提案できるよう基本的な計算方法について解説しました。

練習のために適当な土地を選定し、今回解説した4種類の計算を正しく行えば、それほど乖離した金額にはならないことを確認できるでしょう(無論、そうでなければ問題もある訳ですが……)

方式の異なる計算を用いても結果が近似していることにより、適正な『地代』として提案した金額についての説得力が増すのです。

借地権設定者(地権者)はより高く、借地権者はより安い『地代』を望みます。相反する利益が根底にあるのですから、落とし所を見つけなければならない。そこで私たち不動産のプロに相談が寄せられているのです。

そのような相談者に対する適正地代の提案は、納得できるだけの根拠が提示されていなければならない。

そこで4種類の方式で計算を行い、それらを総合的に検証した結果としての金額を提案する。それでこそ当事者も「なるほど、それならば」と納得できるというものです。

今回解説した内容を見返せばお分かりになるとおり、各種係数や料率などは趨勢にあわせ微調整が必要とされますから、今回解説した数値が必ずしも正しいとい訳ではありません。

ですが基本さえ理解しておけば、利害関係者の意図を汲みとりつつ適切に微調整できるようになることでしょう。

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